学部・大学院

文化資源学専修

専修名の「文化資源学」は21世紀に入ってから本格的に注目されるようになった新しい領域の学問です。一般に文化的な所産というと、国宝や重要文化財に象徴されるような文化遺産をはじめとした遺跡・史跡や著名な芸術作品などがイメージされがちです。実際に類似の専修名を冠した他の大学院では、こうした所産の資料化や保存のあり方を教育・研究の中心としていますが、本専修ではそれよりも遥かに広い範囲の「文化」的な所産に「資源」としての価値を見出し、文化を社会の中で積極的に活用するための理論や実践について検討します。

 

文化資源学専修が研究対象とする「文化資源」は多岐に渡ります。先に挙げた文化遺産等の歴史・芸術的所産はもちろんのこと、これに加えて現在進行形で生み出されていく最新の文化的所産までをも視野に収めます。また絵画や彫刻、建築といった美術史学が対象としてきた範囲、歴史的な街並みなど、地理学や都市計画学が対象としてきた範囲の、いわゆる「モノ」としての文化事象を研究対象とするだけでなく、東西の演劇、戯曲の上演や、アートプロジェクト、ワークショップ、観光ガイド・ツアーなどの「コト」としての文化事象にも着目します。具体的には、アー ト(特に美術・音楽・演劇)とツーリズム(観光・地域創造)に関連する文化資源のあり方を捉え、これを中心に研究していくことになります。さらにそれだけでなく、そうした文化の社会的な活用のための企画や実践についても研究対象とします。

 

本専攻の主たる授業科目の概要は以下の通りです。前期博士課程では、文化構想学専攻の共通科目「文化構想学研究C」によって、本専修の研究領域や研究手法に関する基礎的な知識を講義します。さらに専修の専門科目である「国際文化資源学研究」「芸術文化資源学研究」「観光文化資源学研究」「社会実践文化資源学研究」などの講義・演習科目によって、文化資源のあり方やその活用に関して幅広い知見とそれらを取り扱う手法を指導します。後期博士課程では、「文化資源学特殊研究」「文化資源学論文指導」を中心に、博士論文の執筆に向けた研究活動をサポートします。

 

教員スタッフの専門は、演劇学、表象文化論、美術史学、博物館学、観光学、社会学、芸術療法、アートマネジメントとさまざまです。また所属する院生の背景や研究テーマも多様で、社会人院生も多く在籍してます。これまでの伝統的な学問分野を基礎としつつも、文化資源という共通のキーワードのもと、領域横断的かつ情報交流的な教育研究環境が整っていることが大きな特徴です。

 

スタッフ

小田中章浩 教授 表象文化論、特にフランス演劇・西洋演劇に関する比較演劇史的な研究、演劇的な表現の特色に関する考察を中心に研究を行なっています。「国際文化資源学研究」などの科目を担当します。
菅原真弓 教授  日本美術史、特に近世・近代の浮世絵版画の研究、文化資源論、博物館学を中心に研究を行なっています。大学の教員になる前は、学芸員として美術館に勤めていました。「芸術文化資源学研究」などの科目を担当します。
天野景太 准教授  観光学、特に都市における観光、新しい観光スタイル、メディアと観光行動の関係などを、社会学・文化論的な視点から解読する研究を中心に行なっています。「観光文化資源学研究」などの科目を担当します。
沼田里衣 准教授  臨床音楽学、特に音楽療法や即興音楽の可能性について研究を行なっています。神戸を中心に「おとあそび工房」など、音楽を題材としたワークショップを企画・実践中です。「社会実践文化資源学研究」などの科目を担当します。