https://www.lit.osaka-cu.ac.jp/frn/
研究内容、特色
第二次世界大戦の反省から、平和のためのシステムとして構築されたEU(欧州連合)は、いまや巨大経済圏でもありますが、このEUの中心をになうのが、欧州の二大国ドイツとフランスです。ドイツ語フランス語圏言語文化コースでは、独仏の研究者が協力して「欧州」や「国際文化」に関する科目(ドイツ語フランス語圏言語文化論、ヨーロッパ言語文化特講、インターカルチュラルスタディーズ)を提供し、ひろくEU圏やそれを越えた世界について学ぶことを可能としています。もちろん、履修外国語が独語か仏語によって分かれて所属する領域では、それぞれ独自の専門を究めることができます。
【フランス語圏言語文化領域】
あなたは、「フランス」ときいて、何を思い浮かべますか? エッフェル塔、モナリザ、ジャンヌ・ダルク、ヴィトン、シャネル、ワイン、チーズ、パン、料理、映画、文学、スポーツ……。どれも、ひとびとの憧れをよび、いちどはフランスへ旅してみたいと感じさせるのではないでしょうか? じじつ、花の都のパリは世界でもっとも観光客をあつめる都市のひとつですし、日本からの観光客は大のお得意さんでもあります。そのおかげで、有名な観光地では、日本語の案内が出ていたりもしますが、旅行に行った先の言語であいさつくらいできなければ、「イヤな観光客野郎」と思われることはまちがいありません――じっさい、わたしは、英語が世界中で通じると思いこんで英語しか話そうとしない某大国の観光客の接客を終えたフランスの店員さんに「まったくヤツらときたら」と相づちを求められたことがあります……――。
フランス旅行のため――そんな目的で、とりあえずフランス語を学びはじめたなんてひとはたくさんいますし、それもたいせつなことなのです。ですが、フランス語は、フランス以外でも役に立つ言語なのです。
ヨーロッパにおいて、17世紀までの「国際共通語」はラテン語でした。それが、絶対主義の確立のなかで、いちはやく国家統一・中央集権をなしとげたフランスの威勢と文化発信力の増大とともに、18世紀にはフランス語が欧州国際語となります。その後、20世紀初頭までの200年ほど、フランス語は現在の英語のような地位にあったわけですが、この間は、現代の欧米社会が成立する過程にあたったため、フランス語の影響は少なからぬものがありました。この歴史と植民地政策のなごりのため、現在でも、フランス語は世界各地に話し手がおり、英語と並んで国連の「作業語」に指定されているのです。また、フランス語を公用語とする地域(カナダ、スイス、ベルギーなど)やその他つながりのある地域をあわせた「国際フランス語圏機構」(57ヶ国地域+23オブザーヴァ)も存在し、英語圏の向こうを張ろうとしています。つまり、フランス語はいまなお国際語の地位を失ってはいないといえるでしょう。
フランス語がペラペラになる――すてきな目標ですし、そんなに難しいわけでもありません。若い頃に留学すれば、半年でペラペラになれます。文学部には、フランスのリヨン第3大学、セルジー・ポントワーズ大学との交換留学制度がありますから、ペラペラになりたいひとは、ぜひ長期留学を目指してください。けれども、ことばを学ぶということは、そのことばを用いるひとびとや地域の歴史や文化を学ぶということでもあります。当然、フランス語圏言語文化領域では、そのような面の教育・研究にも力を入れています。
先輩たちは、文学、言語学にとどまらず、歴史、美術、音楽、建築、社会現象など幅広いジャンルをテーマとして卒業していったことがわかるでしょう。つまり、この領域に学ぶということは、「フランス語」という幹にさまざまの枝葉をしげらせた一本の樹木となることなのです。もちろん、幹が太ければ、枝葉も立派なものになることはいうまでもありません。
そうです。この領域は、フランス語力をきたえつつ、フランスを中心とするフランス語圏(西欧、北米、中米、南米、北アフリカ、西アフリカ、オセアニア etc.)、のさまざまのことがらを学ぶことで、フランス語圏のエキスパートを育てる場なのです。もちろん、哲学でフランス哲学をやったり、世界史でフランス史をやったり、社会学でフランス社会学をやったり、表現文化でフランス映画をやったりすることは可能でしょう。ですが、それらのコースでは、フランス語とフランス語圏の知識についてトータルに学ぶことはできません。そして、フランス語圏について――もちろんドイツ語圏についても――学ぶことは、アメリカ中心に偏った「グローバル・スタンダード」を相対化し、あらたに「世界」を考えるための視点/支点を手に入れることになるのです。
そして、そんなふうに「世界」を見られるようになったあなたは、きっとフランス語圏に行きたくてたまらなくなるにちがいありません。一度目は観光で。二度目は勉強で。現地でふれたひとびとや文物は、きっとあなたをもう一度誘惑するでしょう。そして三度目は暮らしに……。
いやまったく、人生、どんなことがあるか、わかったもんじゃありません。そしてまた、人生はなんでもアリなのです。だってあなたは、いま、無限の可能性を手にしているのですから。
コースからのおしらせ
準備中ですスタッフ
福島祥行 教授 | 言語学(コミュニケーション・相互行為分析、文法の研究)、外国語学習(協働学習、ポートフォリオなどの研究)、境界・劇場論(演劇の現場や演劇的空間の研究)が専門ですが、現代フランス社会や、フランス語圏にまつわる諸々、コミュニティ創発についても研究・指導をおこなっています。 |
---|---|
白田由樹 教授 | サラ・ベルナールという19世紀末の舞台女優の研究を中心に、フランスのメディア史、文化研究が専門ですが、19世紀文学や、藝術、ファッション、料理にも関心をもっています。 |
原野葉子 准教授 | ボリス・ヴィアン、コレージュ・ド・パタフィジック、潜在文学工房を中心とした20世紀文学および文化研究が専門ですが、暴力と表象(あるいは戦闘する芸術)について、二度の世界大戦と文学について、さらには空想科学も含めた科学・技術と芸術の関係についても研究を進めています。 |
コース決定にあたっての心構え
よく質問される事柄について、あらかじめお答えしておきましょう。
Q:1回生のフランス語の成績が優秀でないと、専門の授業についてゆけませんか?
A:大丈夫です。2回生になると専門コースの授業があり、共通教育の場以外でも、フランス語に接する時間が増えますので、積極的に授業に参加していれば、いつの間にか語学力が身についてくるようになります――仏語力のみならず、英語力もアップします――。また、交換留学生とも交流できますので、その気になれば、会話力も伸ばせます。
Q:語学検定の資格はありますか?
A:実用フランス語技能検定試験(仏検)があります。1級取得者はプロの通訳なみの実力が必要ですが、3年次には2級合格が可能です。
Q:留学は可能ですか?
A:フランス第2の都市圏にあるリヨン第3大学と、パリ郊外のセルジー・ポントワーズ大学との間に交換留学制度があり、毎年5月に選考をおこなっています。また、業者に手配してもらい、別の大学に留学する学生もいます。また、毎年9月にセルジー・ポントワーズ大学で短期の語学研修をおこなう制度もあり、本領域の学生はほとんど全員参加しています。
卒業後の進出分野
これまで、マスコミ、教職、商社、デパート、銀行、アパレル、料理関係、コスメティック関係、官公庁、IT関連企業、メーカーなど、多方面にわたっています。直接フランス語に関係ある職種は少ないですが、就職先で、フランス語関係の職をまかされたケースも存在します。
メッセージ
卒業生がメッセージを寄せてくれました。ぜひ耳を傾けてください。
「リヨン郊外にある、辻調グループ・フランス校での勤務をへて、現在、私は辻静雄料理教育研究所で、料理の本を作ったり、料理やワインの本を翻訳する仕事に携わっています。芸術や文学に対すると同じ情熱を傾けて、料理を、ワインを語る、それがフランス人です。ワインを愛でる言葉の多彩さには圧倒されるばかりです。大学の教室でおずおずとアベセから始め、なんとかマイペースで続けてきたフランス語、こんなに豊かな言葉の世界との出会いをもたらしてくれたフランス語に感謝しています。」
(辻調理師専門学校・辻静雄料理教育研究所 主任研究員 八木尚子)
「私が学生だったころ、海外旅行や留学が今ほどポピュラーではなく、言葉を学ぶことによって、異国の文化の香りにいくらかでも触れたいという強い欲求があり、そのあとは自分の想像力でまだ見ぬ世界に思いを馳せていたという感じです。その後、仏文でいろいろなフランスの作家のテクストにアプローチする方法も学びましたが、結局、文学というのは人間の研究なので、教室の外でもどれだけ本を読み、どれだけ豊かな経験を生きられるかということなのだと思いました。卒業後、流通業界に就職し、その会社がパリに支店を持っていたので、一年間、派遣していただきました。その後、退職して、ボルドー大学に留学し、今はルイ・ヴィトンのお店に勤務しています。外国暮らしはいろいろと苦労も多いですが、好奇心を捨てない限り、宝の山にいるのと同じだともいえます。学生時代、想像しかできなかったものに、じかに触れられる、自分のものにできる、それについて語り合える…私にとって、学生時代のあの自由な仏文の日々が、今の精神生活の豊かさの基礎をつくってくれたような気がします。 皆さんも好奇心を持ち続けて、いろいろチャレンジしてみてください。そして、真に豊かな人生をおくられますように」
(仏検1級、パリ商工会議所商業フランス語認定証、ボルドー大学フランス語教授法認定証、等取得。ボルドー在住、ブシャール・竹鼻葉子)
まさしく、「これぞ人生」(C’est la vie.[セ・ラ・ヴィ])ではありませんか。