学部・大学院

教育学コース

https://www.lit.osaka-cu.ac.jp/edu/

人は生まれてから死ぬまでの間、いろいろな活動をしますが、それらのうち、教育に関係のないものはほとんどありません。人は、よりよく生きようとするとき、多くを学びます。学校以外でも学びます。「教師」が存在しないところでも学びます。職場にも、地域にも、ボランティア活動にも、家庭での子育てにも、教育の営みがあります。このような人間がつくりだす様々な関係性を「教育」という切り口でとらえ、人間の成長や社会とのかかわりを追究することを、教育学コースは目指しています。単に学校教師になるためだけのコースではありません。

教育学コースでは、人生の全体を視野に入れて、学校数育と学校外教育の両面にわたる思想―制度―実践について、実証的に研究することを大事にします。具体的には、教えることや学ぶことの本質、教育の思想、カリキュラムのあり方やその開発・評価の方法、授業実践のあり方、教育思想・制度・方法・実践・文化の歴史や比較、高等教育、教職と教師教育、教育の情報化、国際教育、インフォーマル・ノンフォーマルな教育などの諸研究です。

大学での教育・研究は、学生と教員の双方の「学問の自由」に立脚しています。何を学ぶか、何を研究するかは、自分自身で自由に決めることが大切です。しかし、これは実は容易なことではありません。誰もが卒業論文のテーマで悩み、執筆に苦闘するわけですが、これは「自由」の結果でもあります。そこで、皆さんが「学問の自由」を行使できるようになるために支えていくのが、大学の役割となります。それでは具体的に、2回生でコースに配属が決まってから4回生で卒業論文を完成させるまで、どのような授業があるのでしょうか。

まず、1回生の必修科目「人間行動学概論Ⅰ・Ⅱ」を修得して2回生でコース配属となりますが、2回生向けの必修科目「人間行動学データ解析法Ⅰ・Ⅱ」において人間行動学という広い視野から考え、教育学の基礎となる方法論や人間という対象へのアプローチの仕方を学びます。

2~3回生には多様な選択必修科目が用意されています。「教育学概論Ⅰ・Ⅱ」「教育方法学Ⅰ・Ⅱ」「比較・国際教育学」「教育学研究法Ⅰ・Ⅱ」「教育学実習」「教育学演習Ⅰ~Ⅳ」です。また、自由選択科目も、「教育行政学」「教育史」「教育メディア論」「教育学特講Ⅰ・Ⅱ」と多様性に富んでいます。

これらの選択必修科目や自由選択科目の特長は、授業を一方的に「受ける」のではなく学生ひとりひとりに異なる興味や問題意識を尊重し、発表や討議、対話等を通して多様なものの見方と出会うことが目指されています。批判的な思考が大学ではとくに重要になりますが、それは自分なりの価値や思想、知識、経験に自ら気づき、それを再構築・脱構築していく力の育成を目指しているからです。

学生生活における探究の集大成が卒業論文です。「卒業論文演習」は4回生で履修しますが、それにつながる科目として「教育学実習」「教育学研究法Ⅰ・Ⅱ」があります。「教育学実習」では、学校教育の実態を、体験を通して観察し知見を広げます。「教育学研究法Ⅰ」では、研究のテーマやトピックの設定、分析・総合の方法、論証の手段、文献・資料の収集に関わる基本的な事柄を学びます。そして「教育学研究法Ⅱ」では、学校現場に実際に出かけ、授業の設計・実施・評価やカリキュラムの開発等に関わる実証的データを収集・分析する方法を学びます。

これらを経て4回生では、いよいよ卒業論文を自ら執筆していくこととなります。「卒業論文演習」が行われ、一人ひとりに窓口教員がつき何でも相談にのってくれますが、卒業論文の方法や結論は与えてくれません。より良い卒業論文にしていくためには、窓口教員以外の教員に相談したり、学生同士で議論の場をつくったりすることがとても重要になります。なお、これまでの卒論題目が、は教育学教室HP(http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/edu/)から閲覧できますので、ぜひのぞいてみてください。

最後に、大学でのフォーマルな教育・研究のみでは行き詰まることもあります。そこで、思い切り楽しむということが、学ぶことと同等に大切です。教室行事には、教室旅行では学部生、大学院生、教員が一緒に楽しんでいます。どんな旅行なのかは、毎年違うのでお楽しみとなりますが、教育学教室HPから歴代の旅行を見ることができます。

コースからのおしらせ

スタッフ

添田晴雄 教授 比較教育文化史、 教育・学習における話すことと聞くことの研究、いじめ問題の国際比較研究。
島田希 准教授 教育方法学、授業研究の方法論に関する研究、探求型学習活動のデザインに関する研究。
辻野けんま 准教授 教育経営学、教育行政・学校経営論

コース決定にあたっての心構え

教育学の対象となるのは「人間」です。人間の行っているさまざまな活動を、何でも見てやろう、何でも経験してみよう、という好奇心で学生生活を送ってください。身の周りのことはつい自分の価値観や経験則だけで判断しがちになりますが、異なる考え方やその背景を知るために外国語を学ぶことが大切になります。英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、中国語、朝鮮語などを身につけ、その文化にぜひ触れていってほしいと願っています。
教育の営みは、いろいろな人間の活動(生産、経済、政治、遊び、幸福追求……)と関係があり、教育学と関係のない学問領域を探す方が難しいくらいです。ただし、何もしないままそれらが自ずと研究の対象になるわけではありません。いろいろなことに関心をもったり、多分野の読書をしたり、仲間と意見をたたかわせたりと、自分の価値観や経験則を超えようと努力するからこそ、人に見過ごされがちな事象が自分にとって研究対象として浮かび上がってくるのです。

卒業後の進出分野

教育学コース生の進路は多種多様です。教科の免許状(国語、社会、地理・歴史、公民、英語)をとって、中等教育(中学校・高等学校)の教職に就く方は複数おられます。また、資格試験を受けたり卒業後に通信教育などで単位を補ったりして小学校の教師になっている人もいます。大学院(教育学専修)に進学してから教員になる人も少なくありません。公務員の道を選ぶ方も複数おられます。中央省庁の職員、法務教官や家庭裁判所調査官等の国家公務員、府県庁職員、市役所職員、社会教育主事補等の地方公務員です。教育学の試験が免除されたり、試験対策が教員採用試験と共通するところが多かったりするので、教育学コース生は公務員試験を多く受験しています。大学院進学を考える学生も毎年おられます。民間企業等への就職の例としては、新聞社、放送局、出版社、書店、塾講師、コンピュータ関連会社、保険会社、銀行、デパート、電器メーカー、食品メーカー、食品サンプルメーカー、文具メーカー、JA、商工会議所、医療福祉関連・・・・・・など、実にバラエティーに富んでいます。

メッセージ

教育学教室の研究室等は文学部棟1階にあります。コース所属の学生は「教育学共同研究室」(146)を利用できます。授業準備や学生同士の歓談の場として、また、学生の活発な交流、情報交換の場として利用してください。また、教育学および隣接領域の事典、統計書、白書等が豊富に揃っています。百科事典や辞典も揃えてあります。教育学関係の新着雑誌もあります。また、「教育学資料室」には、全国の都道府県教育史(出版されているものはほとんど網羅)をはじめ教育史関係の文献があり、この部屋も利用できます。「教育学大学院指導室」は、大学院生が研究するための部屋ですが、学部生がよく相談などに訪れる部屋です。

刊行物

『教育学論集』 『教育学論集』は大阪市立大学文学部教育学教室の学術雑誌として1975〔昭和50〕年に創刊されました。第29号(2003〔平成15〕年)からは「編集規定」を明文化し査読制度を導入しました。また、2011〔平成23年〕年度の大阪市立大学教育学会の発足に伴い、第38号からは、大阪市立大学教育学会『教育学論集』第1号(通号38)として生まれ変わり現在に至っています。