概要

文学研究科・文学部学术宪章

制定:2008年3月20日
最近改正:2020年4月17日

1.前文

 かつて本邦の大学は、高邁深淵なる真理の探究と知的エリートの育成を大学の社会的使命として誇らしげに掲げてきた。だが本学の前身大阪商科大学の創設(1928年3月16日)に際し、当時の大阪市長であった関一は「今や大阪市が市立商科大学を新に開校せんとするに当って、よく考えねばならぬ事は、単に専門学校の延長を以て甘んじてはならぬ事勿論であるが、又国立大学の「コッピー」であってもならぬ。」と述べた上で、「其設立都市の有機組織と其都市の市民生活の内に市立大学が織込まれなければならない。」(「市立商科大学の前途に望む」)との卓見を披瀝している。大阪商科大学とその後身たる大阪市立大学がたどった歩みはまさに関一市長が示した市民に開かれた大学の理想を追求するものであった。この経緯に鑑みるとき、大阪市立大学に奉職しここに修学するわれわれは、学問的真理の探究と有為なる人材の育成に励むとともに、社会に開かれた大学の実現を真摯に追求することを以て建学以来の使命を果たしていきたいと考える。

 わが文学研究科・文学部は人文科学および行動科学の分野においてこれまで学界をリードする研究を遂行し文化の進展に寄与するとともに、多くの優れた人材を世に送り出すことによって学界ならびに社会に大きな貢献を果たしてきたと自負するものである。しかしこの現状に安住することなく、さらに厳しく自己評価につとめると同時に、外部評価等の意見や要請を虚心に受け止め、たゆまぬ自己研鑽に資して行きたいと考える。学問的真理の探究、優れた人材の育成、そして社会に開かれた大学、これら崇高なる理想の実現をみずからに課した証として、ここに「大阪市立大学文学研究科・文学部学術憲章」を定める。

 

2.文学研究科・文学部の理念

  • 人文科学・行動科学の方法や考え方を通して人間、社会、文化、言語の諸事象とそこに内在する普遍性を探究する。
  • 人間、社会、都市、文化をとりまく今日的課題の解決に貢献し得る人文科学・行動科学の構築をめざす。
  • 先端的研究成果をグローバルな視野から情報発信できる国際的競争力を備えた最高水準の教育・研究をめざす。

3.人材育成の目標

【学士課程】

  • 人文科学・行動科学の方法や考え方を通して人間、社会、文化、言語の諸事象について深く考えることのできる人材を育成する。
  • コミュニケーション能力を身につけ、国際的、歴史的視野から問題解決をはかる能力を備えた人材を育成する。
  • 教育機関、文化行政、出版・ジャーナリズム、国際交流、情報サービス産業などの第一線で活躍できる専門性を身につけた人材を育成する。
[各学科]

(哲学歴史学科)

人間の歩みと思索の過程を考究し、人間にたいする洞察力と歴史への理解を基に、未来を展望することのできる力をもった人材を育成する。

(人間行動学科)

人間や社会を理解するための科学的方法を身につけ、人間行動や人間を取りまく事象を様々な視点から考えることのできる人材を育成する。

(言語文化学科)

人間が創り上げてきた言語・文学・文化を深く理解し、自文化、異文化の双方を見通しながら、新たな文化の創造に寄与することのできる人材を育成する。

(文化構想学科)

文化にたいする深い理解をもとに、新たな文化表現の創出や多文化共生的価値の構築を希求しながら、文化を社会的実践活動へと結びつけることができる人材を育成する。

【大学院前期博士課程】

  • 人文科学や行動科学の分野において、先端的知識と方法を身につけ独創的研究をみずから行いうる人材を育成する。
  • 地域の教育に貢献し、都市が抱えるさまざまな問題の解決に応えうる高度専門職業人を育成する。
  • 生涯学習への意欲をもち、人間、社会、文化、言語に対する深い理解を通して、国際社会・地域社会においてさまざまな文化的活動を担うことのできる高度教養人を育成する。

【大学院後期博士課程】

  • 人文科学・行動科学の最先端の研究課題を創造的に探究する高度な研究能力を備えた研究者を育成する。
  • 国内外の教育研究組織や機関と連携し、人文科学・行動科学の国際的、学際的な研究を主導的に推進する研究者を育成する。
[各専攻]

(哲学歴史学専攻)

人間の社会と文化の構造・発展を明らかにし、人間のあり方を歴史と文化のなかに追求することを目的とする。人間文化の基礎を研究する哲学と歴史学を統合した教育研究体制を備えることで、人間の社会とその文化の本質と普遍的価値、さらにその変容を明らかにすることを目指す。専門分野への深い知識に加えて、関連分野にも視野を広げられる研究者、広い知識と教養をもった専門職業人を養成する。

(人間行動学専攻)

人間行動の特性や人間と社会および文化の関係を、とくに社会問題、教育問題や文化摩擦など現代社会が抱える諸問題を視野に入れて、総合的、学際的に捉えることを目的とする。フィールドワークや実験という行動科学の方法論を基礎に、実証的なデータに基づく分析と理解や理論化を重視する。人間行動に関する実証的な研究方法を修得させることによって、現実の社会や人間を客観的に観察する能力を涵養し、研究職のみならず、高度な専門的知識と技術をもった人材を養成する。

(言語文化学専攻)

言語にかかわる文化現象の全領域、すなわち、言語、文学、文化およびその関連領域を、言語を通じて根源的に解明することを目的とする。日本語、中国語、英語、ドイツ語、フランス語を中心とした各言語圏における古今を通じた諸現象を解明するのみならず、言語の隣接分野への応用という観点からも探究を深め、情報技術やグローバリゼーションという21世紀にふさわしい教育研究を推進する。鋭い言語感覚と高度な言語運用能力を備えた研究者や専門職業人など、国際社会において活躍しうる人材を養成 する。

(文化構想学専攻)

さまざまな文化や文化的事象を、社会的実践の場において積極的に活用することで文化のもつ力をさらに高めるとともに、現代社会が抱える諸課題の解決に資する文化を主導的に構想することを目的とする。新たな文化の創出、比較文化的・多文化共生的な認識、文化の応用的・実践的活用のそれぞれにたいする専門的知見を併せ持ちながら、文化や文化的事象をさまざまな課題解決に活用することができる能力を習得させる。研究者、専門職業人のいずれの進路においても、文化の活用を理論と実践の双方で牽引できる人材を養成する。

(アジア都市文化学専攻)

東アジア・東南アジアを対象に、都市文化の現状と特性、その形成過程、さらに今後の可能性について、総合的、比較文化的に考究することを目的とする。伝統文化研究、現代都市文化論、文化人類学、芸術学、ポピュラー文化研究、観光研究など多岐にわたる分野を学ばせることで、アジアの諸問題を複合的にとらえる視点を涵養する。研究者、専門職業人のいずれの進路においても、これからのアジアを牽引することができる人材を育成する。

4.学術研究の目標

  • 人文科学・行動科学の諸分野において最先端の研究を、公正を旨として推進し、新たなる知の創造をめざす。
  • 人文科学・行動科学の知はたえず社会と関わり、社会からの具体的要請に真摯に向き合うことにより進展していくものであるとの認識に立ち、社会に開かれた人文科学・行動科学の確立をめざす。
  • 人文科学・行動科学の諸領域において確乎とした学問的基礎の上に立脚すると同時に、新たに出現する知の状況変化にも柔軟に即応し得る学際的研究をめざす。

5.地域・社会貢献

  • 大学における高度な教育や研究それ自体は長期的観点からみると社会貢献の機能を果たしているが、同時にその成果を直接的に地域・社会に還元する必要性がある旨、学校教育法で謳われている。文学研究科・文学部では、地域・社会貢献を大学の果たすべき第三の使命と位置づけ、推進する。
  • 文学研究科・文学部の教員による地域・社会貢献活動の実績を、教育・研究活動、国際交流活動の実績と並べて教員評価の指標とし、教員の積極的な活動を奨励する。

 

6.アドミッション・ポリシー(入学者受入れの方針)

文学研究科・文学部は、人間、社会、文化、言語に関心を持つ人間性豊かな人材を育成することを目標としている。それに対応して、以下のような人材を求める。

【学士課程】

  • 人間の思考と社会・文化の生成発展について考えてみたい人
  • 人間行動の原理と社会のしくみについて考えてみたい人
  • さまざまな言語や文学・芸術について考えてみたい人
  • さまざまな文化的営みを社会のなかで活かす方法を考えてみたい人
  • 論理的思考を鍛え新しいものの見方を求めようとする人
  • 入学者選抜の基本方針は、一般入試、編入学・学士入学、国際バカロレア入試、帰国生徒入試、私費外国人入試の各々において定める。

【大学院前期博士課程】

  • 人文科学・行動科学の専門領域に関する明確な問題意識と専門的知識を有する人
  • 社会的経験をふまえて人文科学・行動科学の専門領域の研究を志す人
  • 入学者選抜の基本方針は、一般選抜、外国人留学生特別選抜、社会人特別選抜の各々において定める。

【大学院後期博士課程】

  • 人文科学・行動科学の専門領域に関する高度な知識と独創的研究テーマを有する人
  • 研究成果を国内外に発信できる情報発信能力を備えた人
  • 入学者選抜の基本方針は、一般選抜、外国人留学生特別選抜、社会人特別選抜の各々において定める。

 

7.カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)

【学士課程】

  • 人間の思考と社会・文化を根本的、原理的に問う哲学的観点と、それらの本質を時間軸における変化のなかに見出す歴史的観点とを補完的に培う。
  • 人間の行動の諸側面を対象とし、それらを観察・調査・実験・フィールドワークなどの科学的手法に基づき解明する能力を培う。
  • さまざまな言語・文学・芸術を対象とし、それらを実証的、学際的に考察し、社会・文化事象に対する深い理解力、優れた言語運用能力や豊かな国際性を培う。
  • 新たな文化表現の創出、共生的文化の構築、文化資源の活用など、人間の文化的営みを社会のなかで実践的に活用できるような能力を培う。
  • 人文科学・行動科学の基礎となる原典、史料、文献などを調査・読解する能力を鍛え、批判的、創造的に問題に取り組む能力を培う。
  • 以上の目標を達成するため、文学部では次の6点を重視する。
    1. 人文学の基礎から応用まで段階を踏んで学んでいく体系的な講義科目を編成する。
    2. 初年次から最終年次までのすべての年次において、少人数による演習科目を配置する。
    3. 基本的な教養と学際的な視点を身につけるために、全学共通科目を4年間にわたって履修できること。
    4. 国際的な視野を獲得し、活躍する人材を養成するため、英語・新修外国語の修得を重視する。
    5. 専門分野の知識をさらに広く活用する能力を養うため「副専攻」制度を認める。
    6. 卒業論文は獲得した学修成果を最大限に生かしながら取り組むことができるように指導する。

【大学院前期博士課程】

  • 人文科学・行動科学の専門領域に関する高度な専門的知識を培う。
  • 人文科学・行動科学の専門領域において明確な問題意識をもって研究を行える能力を培う。
  • 以上の目標を達成するため、文学研究科では次の4点を重視する。
    1. 高度な知識と総合的な問題解決能力を身につけることを目標に、学生が所属する「研究分野」を考慮に入れた諸科目をバランスよく履修できるように、「専攻共通科目」と「分野専門科目」を配置する。
    2. 修士の学位論文の作成のため、指導教員等による「研究指導」を履修し、教員による助言を2年間にわたって受けるようにする。
    3. 若手研究者として国際的に活躍できる能力を養うため「インターナショナルスクール授業科目」を用意する。
    4. 全学に共通する大学院科目を修得単位として認定する。

【大学院後期博士課程】

  • 人文科学・行動科学の専門領域において深い学識にもとづき独創的な研究を行える能力を培う。
  • 研究成果を国内外に発信できる情報発信能力を培う。
  • 以上の目標を達成するため、文学研究科では次の4点を重視する。
    1. 若手研究者として国際的に活躍できる能力を養うための「インターナショナルスクール授業科目」について積極的な履修を勧め、全学に共通する大学院科目は修得単位として認定する。
    2.  博士の学位論文の作成のため、指導教員等による「論文指導」を3年間にわたって履修し、教員による助言を継続的に受けるよう指導する。
    3. 「論文指導」4単位修得後(通常2年次)の前期セメスター開始時「博士論文作成計画書」を指導教授に提出することを義務づける。
    4. 博士の学位論文については、3名の教員からなる審査委員会による審査を実施する。

 

8.ディプロマ・ポリシー(学位授与の方針)

【学士課程】

  • 上記の人材育成の目標を達成するために設置された教育課程において、所定の単位を修得したうえで卒業論文を提出し、厳正なる審査に合格した者に、学位が授与される。

【大学院前期博士課程】

  • 上記の人材育成の目標を達成するために設置された教育課程において、所定の単位を修得したうえで修士論文を提出し、厳正なる審査に合格した者に、学位が授与される。

【大学院後期博士課程】

  • 上記の人材育成の目標を達成するために設置された教育課程において、所定の単位を修得したうえで博士論文を提出し、厳正なる審査に合格した者に、学位が授与される。

9.倫理綱領

(1)学問の自由

  • 学問の自由の下に、自らの専門的な判断と倫理観を持って真理を探究し、社会への責任を自覚したうえで、その行動基準を自律的に判断する。

(2)職務の公正・誠実な執行

  • すべての人間の基本的人権と尊厳を認めてこれを侵さず、自然環境、資源の保護にも配慮する。
  • 教育・研究・社会貢献及び大学運営に関する責務を公正かつ誠実に遂行し、誇りを持って社会的責任を果たす。
  • 適正な手続きの下で責務を遂行し、不正のない大学の実現のために行動する。

(3)教育責任

  • 十分な準備と熱意を持って教育に臨み、学生の学習意欲を高めるとともに、学生の人格を尊重し、教育に関わる説明責任を果たす。
  • 教育能力の向上を目指して常に自己研鑽に努める。

(4)研究活動の真摯な遂行

  • 学問の客観性を確保し、真摯に研究活動を行う。
  • 他の研究者の学問的成果を尊重する。
  • 研究に際して、研究対象者の人権、生命の尊厳、実験動物の福祉、自然環境を重んじる。
  • 研究費の獲得・執行を適正に行う。

(5)地域・社会貢献

  • 社会との相互交流を図り積極的に協力を行うなかで、公正性を踏まえて、研究業績・教育経験を社会に還元する。

(6)情報の適正な発信及び管理

  • 情報の適正な管理・保管・開示に努める。
  • 個人情報の保護に努める。
  • インターネットの使用に際して、不正利用や情報流出の防止に努める。

(7)環境整備

  • 大学を人間形成の場と位置づけ、自ら関わる事項の説明責任を果たす。
  • 互いに人格を尊重し合い連携するなかで、あらゆる差別、セクシュアル・ハラスメント、アカデミックハラスメント等のない、学習・教育・研究・労働のための安全で健康な環境を整備する。