このたび清文社より大阪市立大学文学研究科叢書第10巻『文化接触のコンテクストとコンフリクト 環境・生活圏・都市』(大場茂明・大黒俊二・草生久嗣 編)が刊行されました。
現在、世界の諸地域では、グローバリゼーションの加速化にともない、トランスナショナルな人口移動が継続して生じています。その結果、地域における人々の生活文化は多彩なモザイクの体をなしており、我が国も含め諸国・諸地域での対応が模索されています。とくに地域間での異文化との接触面を多数擁するEU地域において、多文化共生は長らく理想とされながらも、頻発する確執への未だ解決への回路は見いだされておらず、市民の生活環境に直結する課題は尽きません。
本書には、2015年度に開催された大阪市立大学国際学術シンポジウム「文化接触のコンテクストとコンフリクト EU諸地域における環境・生活圏・都市」の報告にもとづく論文と当日の総括パネルディスカッションの記録が収録されています。
第Ⅰ部およびⅡ部では、「合同生活圏」の合同性を調和的な共存としてではなく、むしろ葛藤と不和によって定義されるものとして考える観点から、困難な共生の可能性をめぐる問いを提起しています。第Ⅲ部では、都市社会そのものがいかにコンテクストの異動と、それにともなうコンフリクトの生起・闘争・交渉とに満ちたものであるのかを、ベルリンを舞台とする三篇の刺激的な論考によって鮮やかに描き出しています。実体概念ではなく発見的概念としての「合同生活圏」からみた世界を探求しています。