大阪市立大学大学院文学研究科日本史研究室

教員について

経歴

kishimoto.JPG磐下 徹(いわした とおる)

1980年7月21日生

大阪市立大学大学院文学研究科 准教授

メールアドレス:

  • 1999年3月 愛知県立一宮高等学校卒業
  • 2003年3月 東京大学文学部歴史文化学科卒業
  • 2010年3月 東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得満期退学
  • 2010年4月 関東学園大学経済学部講師(一般教育担当)
  • 2010年7月 第11回日本歴史学会賞受賞
  • 2013年4月 大阪市立大学大学院文学研究科講師
  • 2015年4月 大阪市立大学文学研究院准教授

研究

主な研究テーマ

郡司制度の研究、古記録の註釈・読解

学会・研究会活動

  • 国際日本文化研究センター共同研究員(「日記の総合的研究」、2010年~2014年)
  • 国文学研究資料館共同研究員(「藤原道長の総合的研究」、運営委員、2011年~2014年)
  • 正倉院文書研究会委員(2014年1月~)
  • 続日本紀研究会編集委員(2014年4月~)
  • 大阪歴史学会編集委員(2014年6月~)

主要業績

  • 共著
    • 『御堂関白記全註釈 寛弘五年』(思文閣出版、2007年12月)
    • 『御堂関白記全註釈 長和五年』(思文閣出版、2009年3月)
    • 『御堂関白記全註釈 御堂御記抄・長徳四年・長保元・二年』(思文閣出版、2010年3月)
    • 『歴史のなかの源氏物語』(「光源氏の元服と穀倉院」、思文閣出版、2011年12月)
    • 『御堂関白記全註釈 寛弘六年 改訂版』(思文閣出版、2012年9月)
    • 『新時代への源氏学6 虚構と歴史のはざまで』(「『源氏物語』の「鄙」」、竹林舎、2014年5月)
    • 『続日本紀と古代社会』(「延暦十七年三月丙申詔試解」、塙書房、2014年12月)
    • 『日記・古記録の世界』(「国司苛政上訴寸考」、思文閣出版、2015年3月)
  • 論文(2006年~)
    • 「宣旨による郡司の任用」(『延喜式研究』22、2006年3月)
    • 「擬郡司帳管見」(『続日本紀研究』366、2007年2月)
    • 「郡司と天皇制」(『史学雑誌』116-12、2007年12月)
    • 「正倉院文書写経機関関連文書編年目録 天平十一年」(『東京大学日本史学研究室紀要』12、2008年3月)
    • 「郡司職分田試論」(『日本歴史』728、2009年1月)
    • 「郡司譜第考」(『ヒストリア』227、2011年8月)
    • 「年官ノート」(『日本研究』44、2011年10月)
    • 「郡司任用制度の一考察」(『関東学園大学紀要Liberal Arts』21〔電子版〕、2013年3月)
    • 「上野国多胡碑にみる「交通」」(『飯田市歴史研究所年報』12、2014年8月)
  • 史料註釈(共著)
    • 「『朝野群載』巻二二校訂と註釈(一)」(『東京大学日本史学研究室紀要』11、2007年3月)
    • 「『朝野群載』巻二二校訂と註釈(二)」(『東京大学日本史学研究室紀要』12、2008年3月)
    • 「『朝野群載』巻二二校訂と註釈(三)」(『東京大学日本史学研究室紀要』13、2009年3月)
    • 「『朝野群載』巻二二校訂と註釈(四)」(『東京大学日本史学研究室紀要』14、2010年3月)
    • 「『朝野群載』巻二二校訂と註釈(七)」(『東京大学日本史学研究室紀要』17、2013年3月)
  • その他
    • 「古記録(刊本)に見える指図集成(稿)」(『画像史料解析による前近代日本の儀式構造の空間構成と時間的遷移に関する研究』(2004年度~2007年度科学研究費補助金基盤研究(A)研究成果報告書、研究代表:加藤友康)、2008年3月)
    • 「記録・典籍に見える指図集成(稿)」(同上)
    • 「2009年の歴史学界 -回顧と展望-」(『史学雑誌』119-5、2010年5月、分担執筆)
    • 「日本古代金石文資料集成」(『古代日本列島における漢字文化受容の地域的特性の研究』(2008年~2010年度科学研究費補助金基盤研究(C)研究成果報告書、研究代表:佐藤信)、2011年3月、分担執筆)
    • 「書評 須原祥二著『古代地方制度形成過程の研究』」(『歴史評論』755、2013年3月)
    • 「古代の酒」(『HUMAN』5、2013年12月)

研究報告(2005年~)

日付 論題 研究会名
2005年7月「宣旨による郡司の任用」 延喜式研究会第20回研究集会
2005年11月「郡司読奏考」 第103回史学会大会日本史部会
2007年12月「郡司職分田と地域社会」 歴史学研究会日本古代史部会12月例会
2009年8月「年官制度の一考察」 古代史サマーセミナー
2010年7月「日記と“指図”」 国際日本文化研究センター共同研究報告
2010年11月「石にきざまれたいにしえの群馬-多胡碑の世界-」 第26回関東学園大学公開講座
2011年2月「太田の古代史-天良七堂遺跡と古代の新田郡-」 太田市立新田荘歴史資料館土曜歴史講座
2011年10月「延暦十七年三月丙申詔試釈」 歴史学研究会日本古代史部会10月例会
2011年11月~『藤原道長事典』項目選定に関する報告 随時、国文学研究資料館共同研究報告
2011年12月「古代史の魅力を語る」 東毛歴史同好会・東毛考古学サークルはにわの会共催市民公開講座
2012年7月「長和五年の藤原道長の「前例」」 国際日本文化研究センター共同研究報告
2013年8月「上野国多胡碑にみえる交通と地域社会」 第11回飯田市地域史研究集会
2014年2月「大化改新と孝徳朝」 シンポジウム難波宮と大化改新
2014年3月「国司苛政上訴の処理手続きについて」 続日本紀研究会例会
2014年5月「郡司層と行基」 大阪市立大学日本史学会第17回大会
2014年11月「行基の足跡」 近鉄文化サロン大阪市立大学共催講座
2015年2月「孝徳朝のめざしたもの」 シンポジウム難波宮と大化改新Ⅱ

社会活動

地方自治体関係の委員

  • 2013年10月~ 和泉市史調査執筆委員

その他

教育

担当講義(2015年度)

【学部】

人間文化基礎論Ⅰb
  • 科目の主題

    「日本史研究の概要を知る」 大学で歴史学を学ぼうと考えている皆さんに、歴史研究の具体的イメージをつかんでもらう。

  • 内容・計画

     近年の研究成果を分かりやすく概説した図書を取り上げ、その輪読・内容に関する討論をおこなう。

  • 受講生へのコメント

     主体的な授業参加を期待します。

日本史講読Ⅰ
  • 科目の主題

     日本古代史の基礎的史料の読解力を身につける。

  • 内容・計画

     『続日本紀』(新日本古典文学大系)をテキストとし、史料の読解力を養成する。

  • 受講生へのコメント

     細かい点もおろそかにしない史料の読み方を体得してほしい。

日本史演習Ⅰ
  • 科目の主題

     日本古代法制史料の講読

  • 内容・計画

     『類聚三代格』を輪読し、その読解・考察について議論をおこなう。

  • 受講生へのコメント

     『類聚三代格』は、古代史研究に必要な読解力を身につけるには好適な史料である。ここで身につけた力は、他の時代の研究にも役立つものなので、意欲的に参加してほしい。

【大学院】

日本史学研究Ⅰ
  • 科目の主題

    古記録の読解

  • 内容・計画

    源俊房の日記『水左記』の記事を輪読し、古記録読解に必要な基本知識・スキルを身につける。また、平安後期の政治制度や社会情勢についての考察を深める。

  • 受講生へのコメント

    幅広い視野を持ちながら参加してほしい。

日本史学研究演習1
  • 科目の主題

    日本古代史の研究発表

  • 内容・計画

    受講者が現在取り組んでいるテーマについての研究発表をおこない、それをもとにした討議によって内容を深めていく。

  • 受講生へのコメント

    幅広い視野と積極的な姿勢をもって臨んでほしい。

日本史を学ぼうと考えている皆さんへ
  • ○歴史研究の根本とは?
    歴史を学ぶ、研究することの根本は、「史料を読解すること」だと思います。
    史料に即していない考察は、歴史学的にあまり意味を持ちません。
    では「史料を読解する」とは、どういうことなのでしょうか?
    それは、単に辞書を使って、古い文献・古文書に書かれている文章の意味を理解する(現代語訳する)ということではありません。
    どういう理由で、あるいはどのような状況のもとで、その史料は作成されたのか(書かれたのか)、また、どうしてその史料が現在まで伝えられることになったのか、その経緯はどのようなものだったのか、などといったことも十分に調べなければ「史料を読解」したことにはなりません。
    つまり「史料を読解する」ということは、そこに直接文字化されていない情報も視野に入れた上で、史料を解釈するということなのです。このような作業を経ることで、様々な事象の有機的結びつきを総体的にとらえた歴史像を描くことができます。
    歴史を学ぶ、研究する際には、目の前に現れていることだけを対象とするのではなく、その背後までも視野に入れて“物事を深く考える”必要があります。
  • ○歴史を学ぶと何の役に立つのか?
    「歴史を学んで何の役に立つのか?」という声をよく耳にします。
    確かに歴史を学んでも、即座に経済的な利益を得たり、技術革新が達成されたりすることはないかもしれません。しかし、「役に立つ」ということは、経済的利益や技術革新だけに限られることでしょうか?そのようなことは決してないと思います。
    歴史を学ぶことによって、とても大切なことを身につけることができると思います。それは“物事を深く考える”習慣です。
    先ほど「史料を読解する」ということを述べましたが、目に見えていることだけではなく、その背後まで深く考察するという歴史学研究の基本的姿勢は、社会の様々な分野で必要とされる能力だと思います。
    このような姿勢をないがしろにした考察・判断は表面的で、一時を取り繕うことはできても、物事を本質的に変えたり、改善させたりすることにはつながらないでしょう。
    歴史を学ぶ中で身につけた“物事を深く考える”というスキルは、本当の意味で社会を豊かにするためには必須の姿勢だと思います。
    また、歴史そのものを知ることが、現在という時代を読み解く上で、非常に重要であるということ忘れてはならないと思います。
    昨今、様々な制度や仕組みが「無駄」であり「不公平」「非効率」であるため、「改革」する必要があるということがさかんに言われています。制度疲労というものは必ず起こりますから、その都度柔軟に対応することは必要不可欠です。
    しかし、ここで過去の経緯(歴史)に思いをいたすことも大切なのではないでしょうか。つまり、なぜ「無駄」で「不公平」な制度・仕組みが出来上がってしまったのか、ということに目を向ける必要があるのではないかと思います。
    現在では「無駄」や「不公平」に見えても、多くの場合、それを生み出した何らかの理由・原因があったはずです。その時点にまで遡り、かつてこの制度・仕組みを必要とした状況は改善・解消されているのか、ということまで考慮してはじめて「無駄」であるか否かの判断ができるのではないでしょうか。
    このように過去の経緯(歴史)をふまえることなく、表面的に「改革」をおこなっても、本質的なことは何も解決されないことになるでしょう。物事を深く考えず、「改革」の号令のもと、ボールの転がった方向へ全員で突進する、下手くそなサッカーのようなことをしても、「効率的」な「改革」はとうてい望めません。
    私たちが直面している問題に向き合い、社会全体を豊かにするためには、現在に至るまでの物事の経緯=歴史をしっかり踏まえなければならないと思います。その意味で、歴史を学ぶということは、とても大きな意味をもっているのではないでしょうか。