文化構想学科とは

文化を学び、現在を問い、社会のこれからを作る人になる。

文化は創造力や感性を育むことで豊かな人間性を涵養するとともに、来たるべき社会の新たな価値を創出し、他者との共感を通した相互理解を促進することで、共生的社会の基礎を形作ります。文化構想学科は、従来の学問分野からはこぼれ落ちてしまいがちな文化的事象をも積極的に考察対象とすることで、現代社会で必要とされる文化への深い理解を養います。また、そうした深い知見に根ざしつつ、多様な文化的事象を社会のなかで積極的に活用することで、現代社会が抱える諸問題の解決に取り組み、21世紀型成熟社会を文化の面から担う人材を育てます。

文化構想学科を構成する3つのコース

表現文化コースCulture and Representation

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表現文化コースでは、現代社会の多様な文化現象を「表現」という切り口から考察します。ここで言う「表現」には、文学、美術、演劇、写真、映画だけでなく、ポピュラー音楽やマンガ、アニメーションやゲーム、ファッションや広告、さらにはオンライン上の多彩な創作活動もまた含まれます。文学部が培ってきた文学・芸術・文化の基礎研究を受け継ぎながら、それらの知見を今日の文化実践に応用し、新しい文化を構想する力を養います。

(表現文化コースは1999年に言語文化学科の1コースとしてスタートしましたが、2019年4月より文化構想学科のコースとなります。詳細はQ&Aをご覧ください。)

授業ピックアップ紹介

表現文化論基礎演習

表現文化コースに進学した2回生全員が最初に受講する少人数の演習授業です。受講生はまず映画、マンガ、写真、演劇といった様々なジャンルの作品について、みずからの考察を文章にまとめます。そして授業では、分析に不可欠な視点や基礎概念を導入しつつ、共同で作品を分析します。多様な表現を柔軟に考察する力を養います。

表現文化論特殊演習

3・4回生が受講するこの授業では、特定のテーマについて、関連する作品や文献を参照しながら、発表とディスカッションを通して考察を深めます。この授業の特色は、専門の異なる二人の教員が共同で授業を行うコー・ティーチングの方法論にあります。多様な視点から問題を把握し、議論を通して新しい答えを見いだす能力を養います。

想定される将来の進路・職種

こんにちの社会では言葉や映像や音響が多様なメディアを通して人々に共有され、それが人々の間のつながりを組織しています。表現文化コースで現代文化の多様な表現を深く理解することを学び、現代社会に不可欠な文化的リテラシーを身につけた卒業生は、一般企業や公官庁はもちろんのこと、文化・メディア関連の職種に進出することが期待されています。また、さらに研究を深めるために大学院に進学することも可能です。

  • 商社、金融、保険、製造、百貨店、旅行業、印刷、IT関連
  • 新聞社、テレビ局、出版、広告、映像制作、芸能事務所、イベント興業会社
  • 国家・地方公務員
  • 大学院進学(研究者、大学教員)など

アジア文化コースAsian Culture

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〈アジア〉をテーマに、地域の特性に応じた文化の活用を考えるコースです。心豊かな暮らしのためにアジアの多彩な文化の利用法を考えるといった身近なことから、人々が真に共生するアジアの未来について構想することまで、コースが対象とする学術的領域は無限に広がっています。キーワードとなるのは、「地域」「共生」「比較」。日本を含めたアジアの文化研究をもとに、既成の枠にとらわれない発想で創造的な教育・研究を行います。

授業ピックアップ紹介

アジア共生文化論

アジアは昔から文化、言語、宗教などにおいて著しく多様性に富む地域でした。さらに近年のグローバルな文化交流によって西洋的な文化も広く浸透し、社会や人々の生活も大きな変容を遂げています。講義では、具体的な事例をもとに、アジアにおける多文化共生の実際と課題、将来への展望などについて考えてみたいと思います。

アジア比較文化論

アジアの都市や日本の境界が舞台となる日本語文学や歴史文献や映画などを読み込んでいきます。さまざまな友人たちと一つの作品を読む時、どのような共感やリアリティが共有できるのか? 各国の文化的・倫理的な差異とは相互理解にどのようなズレをもたらすか?そんなことを議論しながら授業を進めていきましょう。

想定される将来の進路・職種

革新の著しい多文化社会の現代。さまざまな分野において、創造性と深い見識を兼ね備え、臨機応変な対応力と共感力をもつリーダーが求められています。多文化社会のよりよい未来の実現のため、アジア地域に対する広い視野と専門性を身につけ、地域社会から国際社会まで幅広く活躍してください。

  • 商社、金融、保険、製造、百貨店、旅行業、印刷、IT関連
  • JICA職員、国際交流基金スタッフ、NPO法人スタッフなど
  • アジア系企業コンサルタント、ODA受託企業
  • 国家・地方公務員
  • 大学院進学(研究者、大学教員)、小説家、翻訳家、編集者など

文化資源コースCultural Resources

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文化が創出されるプロセスについて深く理解した上で、あらゆる文化に価値を見出し、文化芸術を資源として活用するための理論と実践を学びます。美術や演劇、臨床芸術、そして観光を専門とする教員のもと、アートイベントの企画や観光メディアの制作、音楽ワークショップの開催などの実践的な取り組みを通じて、「文化力」を引き出すためのセンス(感性)とメチエ(技能)を養います。

授業ピックアップ紹介

観光文化論

この講義ではさまざまな文化資源を活用する観光のニュースタイルについて「ガクモン」します。例えば、地域の埋もれた食文化や歴史遺産の活用や、自然保護や健康を意識したツアーの開発、さらにはアニメの聖地巡礼やポケモンGOなどのサブカルチャーやゲームを利用した観光に至るまで、観光文化の「いま」を読み解きます。

視覚文化資源論実習

アートを通じて社会に貢献する、アートを媒介にして誰かと誰か、何かと何かを「繋げていく」プロジェクトを構想し、これを実施する授業です。キュレーター(美術館学芸員)出身教員の指導の下、企画立案から実施まで全てを学生が行います。

想定される将来の進路・職種

文化資源コースの強みは、何といっても社会的実践力が身につくことです。文化に価値を見出す想像力、プロジェクトの企画や実施を通じて鍛えられるチームワーク力やプロデュース力は、どんな職種でも役立ちます。さらに観光関連の資格や博物館学芸員資格の取得を目指す人、それらを活かした進路を目指す人は、指導実績を持つ専門分野の教員が強力にバックアップします!

  • 商社、金融、保険、製造、百貨店、印刷、IT関連
  • 旅行会社、鉄道・航空会社、通訳ガイド
  • 博物館・美術館学芸員、公務員(文化行政官)、イベントプロデューサー
  • 国家・地方公務員
  • 大学院進学(研究者、大学教員)など

Q&A

学科共通

文化構想学科で取得できる資格はありますか?

所定の科目を履修することで、博物館学芸員資格を取得することができます。詳しくはこちらのページをご覧ください。

学科共通

文化構想学科の3コースの関係はどうなっていますか?

「表現文化」「アジア文化」「文化資源」の3コースは、それぞれ独立したコアカリキュラムを提供していますが、緊密に連携して教育を行うことでより効果的な学びを実現します。具体的には、コース間の垣根を低くすることで、学生一人ひとりがみずからの関心に応じて他コースの授業を履修できるように設計されています。たとえば、アジア文化コースに所属してタイやインドネシアの映画について卒論を書く場合、アジア文化コースの科目に加えて、表現文化コースで提供される映画の授業を履修することで、映画表現の分析方法を学ぶことができます。また文化構想学科では、1・2回生を対象とした学科共通科目も開講します。

表現文化コース

表現文化コースでは実技(制作)を学べますか?

表現文化コースには実技(制作)を学ぶ科目はありません。したがって、音楽や美術の教員免許を取得することもできません。ただ何らかの仕方で創作活動に関わっている学生は多数在籍しています。

表現文化コース

旧「表現文化コース」との違いはありますか?

表現文化コースは1999年に言語文化学科の新コースとして誕生し、それ以来、文学部の人気コースのひとつとして多くの卒業生を輩出してきました。この度、新たに設置される「文化構想学科」の1コースとして位置づけ直すにあたって、これまでの教育理念や基本コンセプトは継承しつつ、科目構成を見直し、スタッフを一部入れ替え、新たなスタイルの授業を導入するなど、より魅力的なコースにするためのカリキュラムの改訂を行いました。

アジア文化コース

アジアのどこの地域を研究したいか、特に決めていないのですが?

大丈夫です。アジアを相対的に専門的に学ぶなかから、テーマをきめていけば良いのです。例えば、興味があるもの(食べ物、アニメ、映画など)があれば、そこからアジア地域の諸事情と重ね合わせて、研究の対象にしてみてはどうでしょう。

アジア文化コース

旅行が好きなだけなのですが?

旅行が好き、素晴らしいと思います。アジア文化コースで専門性を高めることによって、その「好き」を活かしましょう。あるいは、旅行が嫌いで関西圏から出たことがないという人であっても大丈夫です。日本(大阪)のあなた自身のポジションをアジアのなかから相対的に見つめなおしましょう。

アジア文化コース

他学科のコースの文学や歴史の研究方法と、どのように違うのですか?

アジア文化コースでは、既存の研究方法や学問的枠組を越えて、クリエイティブな学問方法を模索するところに特徴があると思ってください。アジア文化からの「まなざし」を意識してまなび、文化や社会の知識を自らの視点で再構築できることが最終的な目標となります。

文化資源コース

コース名の「文化資源」とは何ですか?

文化とは、言語や宗教など、ある集団の個性を特徴付けているものから、テレビや映画、文学、音楽、料理など、人々の教養や趣味の世界に至るまで幅広く想定されます。また資源とは、鉱物資源や水産資源のように、人々の活動にとって活用できるものを指します。つまり文化資源とは、人々がより豊かな時間を過ごしたり、直面する問題を解決したりするために積極的に活用しうる文化のことです。

文化資源コース

他大学の文化資源・文化財系の学科・コースとの違いは何ですか?

第一に、他大学の文化資源関連の学科では、文化財や伝統文化など歴史的な資産の活用や継承について学ぶところが多いですが、本学では過去の文化だけではなく、モダンドラマやスマホゲーム、即興音楽などの現代の文化、さらには新たな文化の構想に関しても学びます。第二に、文化資源コースに所属しても、関連する他コース(文学や歴史学、社会学、表現文化など)の授業を受講することで、多様な視点から文化への理解を深めることができます。

教員紹介

野末紀之 教授

専門分野

  • 19世紀末文化論
  • 身体と芸術

Message

文章やイメージを読み解くことはたいへんな作業です。表現や論理への細心の注意、歴史的文脈を浮上させる力、閃き。でも、発見をすれば静かな興奮がおとずれ、発見を他人と共有できれば生きる希望が生まれます。そのために、ともに地道な研鑽を積み、数々の「発見」の勘違いを重ねましょう。

高島葉子 教授

専門分野

  • 民間説話
  • 民間伝承
  • 再話と再創造
  • 比較文化論

Message

昔話や民話、神話など古くから伝承されてきた物語を研究することは、決して過去にのみ目を向けることではありません。古い物語は、口伝から書承へ、そして視覚メディアと、現代に至るまで、様々なメディアによって繰り返し語り直されてきました。それゆえ、社会や文化の変化の痕跡をとどめると同時に、常に新たなコンセプトを獲得してきました。今しか語れない、今こそ語るべき物語とはどのようなものでしょう。

増田聡 教授

専門分野

  • 音楽学
  • メディア論
  • 大衆文化論

Message

「理解すること」と「正解を知ること」は別のことです。あなたはこれまでたくさんの「正解」を学んできました。その「正解」の中には、あなたが「何か違う」と感じるものもあったことでしょう。では、なぜあなたは「違う」と感じてしまうのでしょうか。それを理解するための手伝いをするのが大学です。

海老根剛 准教授

専門分野

  • 表象文化論
  • ドイツ文化研究

Message

私たちはいま、映像文化の大きな歴史的転換点を生きています。静止画と動画、写真とイラスト、実写映画とアニメーションといった、過去150年以上にわたって自明であった映像の区分が消え去っていき、私たちと映像との関わりも大きく変化しています。日常生活からアートまで、私たちを取り巻く映像の未知のふるまいを共に考えていきましょう。

松浦恆雄 教授

専門分野

  • 20世紀中国演劇

Message

中国演劇を見たことも聴いたこともなくても大丈夫です。感動は、真剣なまなざしから自ずからに生まれます。あとは、粘り強さと語学力です。留学もおススメ。頭の柔軟なうちに異文化に囲まれて暮らす体験は、一生の財産です。それに、演劇は、現地の劇場でしか学べないことがたくさんあります。

多和田裕司 教授

専門分野

  • 文化人類学
  • アジア地域研究

Message

いまアジアは大きく変化しています。人々は最先端のライフスタイルを楽しみ、モバイル端末を片手に近未来的な景観の街を闊歩しています。世界の中の日本という観点から見れば、アジアの人々との交流は、さまざまな分野で今後ますます重要になっていくでしょう。アジア文化の現代的様相をともに学んでいきたいと思います。

堀まどか 准教授

専門分野

  • 比較文化学
  • 国際日本学

Message

あなたが無意識に考えている「常識」、それは国際的・歴史的にみても普遍的な考えでしょうか? 「大阪」「日本」「アジア」といった地域について学び考え、視野と教養を広げましょう。さまざまな背景をもつ仲間と協働して、答えのないものをじっくり考えることが、大学生活の面白さだと思います。持参していただきたいのは、好奇心だけです。

小田中章浩 教授

専門分野

  • フランス演劇
  • 比較演劇
  • 表象文化論

Message

日本社会は成熟した時を迎え、日本文化は世界の人々を惹きつけています。わが国はヨーロッパで言えばフランスやイタリアのように、これからは文化が産業の大きな柱になります。さらに文化は社会の多様性を支える心の豊かさの源です。文化について学ぶことは、日本の最先端の産業について学ぶことなのです。

菅原真弓 教授

専門分野

  • 美術史
  • 文化資源学
  • 博物館学

Message

私たちがそれに目を向け、それに意義をみとめて守ろうとする時、たとえ路傍の石でもそれは文化資源になります。今、ここにあるさまざまな視覚表象を大切に次世代に向けて守り生かしていくための学び、それが文化資源学だと私は思っています。共に学びましょう。

天野景太 准教授

専門分野

  • 観光学
  • 都市社会文化論
  • メディア創作

Message

現代は国境を越えた人々や情報の流動が盛んになったことで、様々な文化が交わり、ときには摩擦が引き起こされていますが、こうした現象の最も先端的かつ具体的な現場が「観光」なのです。その現場に身を置きながら、新たな文化交流の仕掛けを創り出していくことの魅力を、皆さんと共に分かちあいたいと思います。

沼田里衣 准教授

専門分野

  • 臨床芸術学
  • 音楽療法
  • 即興音楽

Message

私たちは美しいものに出会った時、とても感動したり、心地よく感じたりします。けれども、その価値観は日々移ろいゆくもので、一人一人異なるし、地域によってとても異なります。そうした多様な人々が共生する現代社会において、どのように文化を構想できるのか、音楽を中心に考えていきたいと思います。

文学部長
小林 直樹 教授

学部長メッセージ

人間にとって文化とはどのようなものでしょう?
文化を創造することの意味を考え、文化はいかに市民に提供されるべきか、文化を活かすことで人が共生できる方法は何かを探る。そうした人材を育成します。

文化は、人間が豊かな人生を送るためには、欠かせない大事な資源です。多くの人は、さまざまな文化の中から自分の好きなものを選んで楽しむ、つまり文化を享受するだけで満足しています。もちろん、一般にはそれでいいのですが、人間が文化を活かした社会生活を送るにはどうすればよいのか。人間としてのよりよい暮らしとは何か。文化の本質はなにかを研究することも大事でしょう。私たちが考える「文化構想学」とはそういう学問です。

文化構想学科では、テーマや問題設定にあわせて、既存の学問体系の手法や理論を領域横断的に使用し、あるいは新しい方法を模索することになります。文化そのものを創造する人材を育成するというより、文化の本質を追求したい人を歓迎したいと思います。文化の歴史、未来、かたちを学び、現実社会のなかでどう活かしてゆくか考えることが、文化構想学科での学びになるでしょう。

本学科の卒業生が、自治体の文化行政の舞台で活躍したり、さまざまな業界での文化発信において構想を提供できる人材となることを期待しています。