もともと近代大阪の形成過程に関心を持っていたこともあり、市内の大阪湾岸部には注目していた。当初は研究室の大学院生・学部生との私的な巡検であり、桜島渡船や川口旧居留地、野田の路地といったポイントをつなぐ昼食解散地であった九条が、地元出身で市民団体「大阪・九条下町ツアー」を主宰する谷口靖弘氏(大阪芸術大学短期大学部教授)と知り合う中で、いつの間にか市内で最もなじみの深い場所となった。
私がかつて担当していた「大阪の地理」(全学共通科目)や大阪市立大学地理学教室同窓会、大阪府高校社会科教育研究会、ボーフム大学(ドイツ)やアムステルダム大学(オランダ)との共同巡検など、様々な機会を通じて「大阪・九条下町ツアー」の皆さんと一緒に町歩き(実は「食べ歩き」の要素も大きい)を行ってきた。
臨海工業地帯に部品を提供するバックヤードとして、また住商工の機能が混在する典型的な下町として発展してきた九条を歩く中で、ハンブルクの下町St. Pauliとの比較研究を行うというアイデアが徐々に醸成され、現在の都市問題研究プロジェクトにつながってきたような気がする。
010年 8月にも、ハンブルクより来日した共同研究メンバーとともに九条を歩いた。巡検ルートは下記の通りである。
地元の市民グループ「安治川を愛する会」が、河村瑞賢紀功碑周辺など、この地域一帯の美化活動を行っている(大阪アドプト・リバー・プログラムに認定)。