ここでは、大阪市立大学文学部地理学教室が提供する選択必修科目「地理学野外調査実習Ⅰ・Ⅱ」において、3ヶ年(2007~2009年度)にわたって実施した伊勢市河崎地区(三重県)の野外調査報告をとりあげます。この授業の受講者は地理学コースに進んで間もない2回生が中心で、現地調査の企画・実施、調査結果のとりまとめという一連の作業を通じて、本格的なフィールドワークを初めて経験することとなりました。
伊勢神宮(外宮)にほど近い勢田川畔に位置する河崎地区は、「伊勢の台所」として江戸時代から近代にかけて賑わった商家町です。現在では商業中心地としての役割は低下したものの、本通り沿いには堂々としたつくりの妻入り町家が建ち並んでいます。かつての酒問屋を保存・活用した「伊勢河崎商人館」のオープン(2002年)を機に、地元ではまちづくりの取組みが進み、近年では観光客も増加しています。
4~5月に河崎のDVDや新旧地形図を参照しながら調査地の概要を知るところから始まり、数班に分かれてテーマの決定と調査項目の選定、現地調査スケジュールの作成、8月上旬の現地調査、10月以降の調査結果の整理、12月の研究成果の中間発表を経て、2月中旬の最終レポート提出に至る一連のプロセスを通じて、受講生は地理学研究にとって必要不可欠な手法を習得していきました。
なお、現地調査にあたっては、インタビューなどを通じて地元河崎の多くの方々にお世話になりました。なかでも、私たちを快く受け入れ、多大なご協力をいただいた「NPO法人・伊勢河崎まちづくり衆」の皆さんには心より御礼申し上げます。この野外調査の成果については、毎年報告書としてまとめるとともに、一部は地元で開催される「伊勢河崎まちづくりフォーラム・新蔵くら談義」(2008年3月)にて、「大阪市立大学河崎調査について」と題する報告をいたしました。