ますます激化している都市間競争を背景として、経済競争力を維持しながら、環境保全にも配慮し、様々な属性を持った人々の共生を目指すサスティナブルな都市社会の構築が今日求められています。あわせて先進工業諸国では、産業構造のリストラクチャリングや居住・生産機能の郊外化にともなって、老朽化した施設・インフラを抱え、住民の高齢化が進んだ中心市街地の衰退や荒廃が大きな社会・経済問題となっています。
既に欧米では、郊外の無秩序な開発を抑制するとともに、既成市街地の魅力を高めていくための総合的な施策の推進が、都市政策の主要課題として認知されています。たとえば、遊休化した産業用地(ブラウンフィールド)の再利用、歴史的建造物の保全と再活用など、「内部充填型の開発」(写真参照)により高密な集落構造の実現を図るとともに、住宅やオフィス・スペースの需要を満たし、地区への人口還流と新規起業を促し、既成市街地を「生産・居住の場」として再び活性化する取り組みが行われています。あわせて、旧市街地周辺部の衰退地区や郊外集合団地においても、既存のストックを活かしながら、社会問題の克服をも視野に入れた多様な都市再生事業が各地で展開されています。
本研究プロジェクトでは、これまで携わってきたドイツでの豊富な調査研究やフィールドワークの経験を活かして、国内各地での都市再生プロジェクトに対しても、積極的に提言していきたいと考えています。