2020年度の教室巡検を行いました。

2020(令和2)年11月26日(土)に地理学教室恒例の巡検を行いました。例年6月に実施していたところを新型コロナウイルスの影響を受け延期していましたが、懇親会の中止など一部規模を縮小する形で実施する運びとなりました。今年度新たに教室に迎えた2回生13名を歓迎するため、「北部コース」「大阪市内コース」「南部コース」に分かれ、地理学野外調査実習Ⅱを履修する3回生14名が中心となり企画を進めました。当日は教員やOB、院生、4回生を含めた総勢37名が参加し、ソーシャル・ディスタンスを確保しつつ、親睦を深めることができました。

「北部コース」では、始点の阪神尼崎駅から大阪国際空港近くまで、大阪を越えた幅広い地域を巡りました。尼崎では、尼崎城やその周辺の寺町の整備、JR尼崎駅周辺のキリンビール工場跡の新開発、阪急塚口駅前「さんさんタウン」の再開発と商業施設について、実際の現場を観察し、“工業のまち”というイメージとはまた異なる尼崎の一面を探りました。大阪国際空港では、不法占拠地区という異なる二つの正義がぶつかり合った特殊な地域について解説を行い、解説の途中では、その地区の人々が接してきたであろう飛行機の騒音を実際に体感することができました。

「大阪市内コース」では、まず生野区にあるコリアンタウンを見学し、その後は空堀商店街と難波宮跡公園を散策しました。空堀商店街から難波宮跡公園までは起伏の激しい道を徒歩で移動し、上町台地を体感することができました。空堀商店街では、戦前から残る長屋のリノベーションを、また難波宮跡公園では、奈良時代の難波宮遺跡の復元、古墳時代の高床倉庫などを見学し、都会にいながら歴史を肌で感じつつ発表を行いました。その後は中崎町に移動し、長屋をリノベーションした店舗を見学し、空堀商店街で見学した長屋のリノベーションとの違いに注目しながら発表を行いました。最後は大阪くらしの今昔館に移動し、ガイドさんに江戸時代当時の町家を案内してもらい、当時の暮らしを感じることができました。また江戸時代~近代までの町並みのレプリカなどもあり、巡検で巡った箇所が江戸時代から現代にいたるまでどのように変化してきたかを確認することもできました。

「南部コース」では、大阪府堺市と和泉市を散策し、住宅地や再開発地域、史跡や遺跡などを巡りました。午前の部では、浜寺の高級住宅街と湊の再開発地域を訪れ、また環濠都市としての堺の成り立ちについて学びました。時代を感じる様々な街並みを見学し、堺の街並みや土地利用の変容を辿りました。午後の部では、百舌古墳群と池上曽根遺跡を散策しました。地形環境から当時の風景を想像し、現代の景観に重ね合わせるかたちで歴史を読み取りました。

今年度は新型コロナウイルス感染防止の観点から、親睦会は実施しませんでした。地理学教室一同で顔を合わせることは叶いませんでしたが、各コースで街歩きをする中で学年を越えて打ち解けることができました。晩秋ということもあり当日は気温が低く、例年通りとはいかないところもありましたが、たいへん有意義な1日となりました。

(文責 3回生 伊藤・河出・雜賀・西山)