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表現文化コース(学部) 授業案内


2009年度 後期 表現文化コース提供科目 (○は特任教授、*は非常勤講師)

表現文化基礎演習2 海老根剛

●科目の主題と目標
表現文化コースが考察対象とする文化現象は多岐にわたり、当然そこには必ずしも「作者」によって作られた「作品」とは呼べないようなものも多く含まれる。しかし、書かれる卒業論文のテーマを見ると、依然として作品分析が重要な位置を占めるものも少なくない。そこでこの授業ではひとつの「作品」という形態をとって現れる表現に対象を絞り、それを表現論的視点から分析するレッスンを行う。

●授業内容・授業計画
作品分析の対象として扱われる作品のジャンルとしては、小説、エッセイ、漫画、写真、演劇、映画などを予定している。毎回、こちらから作品を指定し、受講者はそれについての短いレポートを執筆し、事前に提出する。授業では提出されたレポートを素材に作品の考察を共同で進める。レポートの執筆と添削を通して、論理的な文章の書き方を学んでもらう。
また学期末にはソフトウェアを用いたプレゼンテーション作成(画像編集を含む)を学び、全員にプレゼンテーションによる発表を行ってもらう。

●評価方法
評価は上記のレポートとプレゼンテーションによる。期末レポートは課さない。

●受講生へのコメント
作品に触れて感じたことから出発して論理的思考を組み立てるスキルを学んでください。
この授業は表現文化コースの学生を対象とする授業です。他コースの学生は原則として受講できません。

●教材・参考文献
その都度、文献等を配布する。

文化理論 荒木映子

●科目の主題と目標
表現文化コースの学生が興味を持つことの多いポピュラー・カルチャーをどのように、文化理論が研究してきたかを学ぶ。それによって、さまざまな文化理論の主張するところと、ポピュラー・カルチャーを分析する視点を知ることを目標とする。

●授業内容・授業計画
ポピュラー・カルチャーとは何かに始まり、フランクフルト学派、構造主義、記号論、マルクス主義、フェミニズム、ポスト構造主義等々20世紀の理論を学び、最後にポストモダニズムについて考える。教科書を読むだけではなく、教科書で取り上げられている理論家の書いた論文、著書をできる限り読む。

●評価方法
毎回の出席を前提とし、発表、レポート、試験により評価。

●受講生へのコメント
とにかくたくさん読むこと。20世紀の理論を勉強しておかないとどうしようもありません。

●教材・参考文献
ドミニク・ストリナチ『ポピュラー文化論を学ぶ人のために』(世界思想社)
または、原著Dominic Strinati, An Introduction to Theories of Popular Culture(
Routledge, 1995)
その他多数授業中に指示。

比較表現論2 三上雅子

●科目の主題と目標
1.科目の主題:様々な芸術ジャンルや文化現象における「表象されたものとしての恐怖」を考察する。
2.到達目標 :芸術ジャンルや時代状況・文化圏・言語圏が異なりながら、同一主題を持つ作品群を比較研究する手続きを学ぶ。

●授業内容・授業計画
「恐怖」は人間における最も原始的な感情の一つである。しかし、人間は自己の内に潜む「恐怖」を、対象化し・昇華し、「虚構としての恐怖」を構築、それらを芸術や娯楽作品の素材とした。今日私たちは、小説・映画・演劇・ゲーム・マンガなど、様々な「表象としての恐怖」に慣れ親しんでいる。そこには、いわゆるホラーだけではなく、ミステリーなども含まれる。本授業では、「人間は何を怖がるのか」「時代や文化圏における恐怖の対象の違い」「恐怖の物語の普遍的構造」などを講じ、「恐怖」を扱う作品群を比較考察していく。

 1 恐怖とは何か
 2 恐怖の対象(1)
 3 恐怖の対象(2)
 4 虚構としての恐怖(1)―欧米の恐怖小説
 5 虚構としての恐怖(2)―日本の恐怖小説
 6 虚構としての恐怖(3)―演劇における恐怖表現
 7 虚構としての恐怖(4)―欧米恐怖映画@
 8 虚構としての恐怖(5)―欧米恐怖映画A
 9 虚構としての恐怖(6)―日本の恐怖映画@
 10 虚構としての恐怖(7)―日本の恐怖映画A
 11 虚構としての恐怖(8)―マンガ・ゲームにおける恐怖の表象
 12 恐怖の物語の構造(1)
 13 恐怖の物語の構造(2)
 14 現代における恐怖
 15 まとめ 

●評価方法
授業中の発表及び期末レポート

●受講生へのコメント
授業中の発表も成績評価において重要なポイントになります。積極的に授業に参加することが必要です。

●教材・参考文献
プリント配布。また、授業時に参考文献を指示する。

表現文化演習2 海老根剛

●科目の主題と目標
「ドキュメンタリー」について考察する。
「ドキュメンタリー」は通常、「フィクションではないもの」と理解されている。したがって、「ドキュメンタリーとは何か」を考えることは、「フィクションとは何か」を考えることと切り離せない。この授業ではこの二重の問いに、「ドキュメンタリー」に分類される作品の考察を通して接近を試みる。

●授業内容・授業計画
ドキュメンタリー映画の歴史は古く、またジャンルの境界も決して明確ではない。この授業ではなるべく多様な表現を取り扱うことを目指すが、主題的には二つの主題に関する映画(映像)作品を中心に考察する。ひとつは「水俣」であり、もうひとつは「9・11」(アメリカ同時多発テロ)である。また作品を考察するだけでなく、映画作家の書き記した手記や対象についての背景知識を提供する文章も参照する。ドキュメンタリーとフィクションの境界が問題になるので、フィクション作品の考察も行うだろう。さらに余裕があれば、「9・11」 に関して YouTube 時代のドキュメンタリー映像についても考えてみたい。

●評価方法
発表内容にもとづいて評価する。原則、期末レポートを課さないので、綿密な準備にもとづく発表が要求される。

●受講生へのコメント
普段なかなか見ることのできないドキュメンタリー表現の可能性の大きさに触れてください。作品上映と発表を交互に行うが、作品によっては上映時間が授業時間を大幅に越えることもある。また場合によっては上映のために別の日時を設定することもあり得る。この点を了解のうえで受講すること。また本演習は前期開講の「表象文化論2」の受講(作品分析の基礎的スキルの習得)を前提している。映画分析の基礎を学んでいない者は、必ず前期の授業を受講しておくこと。

●教材・参考文献
適宜、プリントを配布する。

表現文化演習3 野末紀之

●科目の主題と目標
大正・昭和期の日本文学において、都市の感受性を表現したり、都市が大きな役割を演じている作品を取上げ、文学作品と都市表象との関係について考える。

●授業内容・授業計画
前半は都市文学論を読み、その基本的な特徴をとらえる。後半では、谷崎・芥川(東京)、織田作(大阪)、梶井(京都)などの短篇を演習形式で分析する。余裕があれば、現代の作品も取上げる。また、受講生による発表を適宜行う。

●評価方法
出席、発表、レポートを総合的に判断する。

●受講生へのコメント
レポートは、各自の関心から選んだ作品について論じてもらう。

●教材・参考文献
教材はプリントを配布する。参考文献は適宜指示する。

表現文化演習5 花村周寛*

●科目の主題と目標
我々が送る日常を取り巻く環境に対して、クリエイティブに関わりながら新たな風景を発見するレッスンをワークショップを通じて実践的に行う。主に大学のキャンパスの中をフィールドワークしながら、いつもとは違った大学の風景を発見することを目標とする。

●授業内容・授業計画
2コマ連続のワークショップ形式で行う。
受講の必須条件としてデジカメを毎回持参する事。

01+02 発見される風景について講義
03+04 0センチから捉える環境:視点場を変えてみるワークショップ
05+06 トマソンとレインボーハンティング:色を探すワークショップ
07+08 星座作用:イメージを変換するワークショップ
09+10 ツギラマとフォトモの制作:平面から立体を捉えるワークショップ
11+12 ガリバースコープ:環境のスケールを変えてみるワークショップ
13+14 ロードムービーの撮影:映像として環境を切り取るワークショップ
15   ふりかえり

●評価方法
毎回のワークショップに参加することが必須条件。ワークショップでは必ず成果が毎回出るので、それの状況と毎回のレポートでワークショップの理解度を判断する。

●受講生へのコメント
デジカメを持っている事が受講条件になります。教室を出て屋外でフィールドワークする事が多くなるので、遅刻はしないようにしてください。またこの授業はワークショップ形式で行うため、受講人数は最大15名までとします。

●教材・参考文献
「マゾヒスティック・ランドスケープ」(学芸出版社)
「メイド・イン・トーキョー」(鹿島出版会)
その他講義の中で適宜伝える。

表現文化演習6 小田中章浩

●科目の主題と目標
本講は表現文化学コースにおいて卒業論文を書くために、テーマの設定、問題の論理的な構築、ならびに分析の方法について予備的な指導を行い、さらにそれらのプレゼンテーション、および文章での表現力を高めることを目的とする。

●授業内容・授業計画
基本的に全ての受講者は、自らが選んだテーマに応じてリサーチを行う。次に、その結果に基づいて問題を設定し、それをどのように解決するかについて順次発表する。それぞれの発表について、他の受講者を交えたディスカッションを行い、受講者が自らの問題を、より深く理解することを目指す。

●評価方法
授業おける発表およびディスカッションへの貢献度50%、期末の小論文50%。

●受講生へのコメント
発表は基本的にPowerPointを用いて行う。PowerPointの使い方については、必要に応じて授業中に説明する。また小論文の書き方(論理的な思考法)についても解説する。

●教材・参考文献
必要に応じて授業中にプリントを配布する。

表現文化購読2 小田中章浩

●科目の主題と目標
本講は、初級のフランス語の基礎を学んだ受講者に対して、表現文化に関連したフランス語の教材を用いることによって、中級レベルのフランス語の読解力を習得してもらうことを目的とする。

●授業内容・授業計画
前年度に引き続き、Ai Yazawa , Nana, T2-3(矢沢あい『NANA』二巻〜三巻)を読む。ただし受講者の希望により、他のマンガ、あるいはファッション等の雑誌の記事、映画など、中級レベルのフランス語の習得に役立つ他の表現文化関連の題材を扱うこともある。

●評価方法
学期末に定期試験を行う。

●受講生へのコメント
上に述べたように、受講生は初級レベルのフランス語力を身につけていることが求められる。

●教材・参考文献
授業において随時プリントとして配布する。

ロシア文化論 浅岡宣彦○

●科目の主題と目標
主題:ロシア文化史におけるペテルブルグ
目標:大阪市と姉妹都市であるペテルブルグは21世紀の初頭に県都300年を迎えた比較的新しい町である。しかしペテルブルグの建設がロシア文化の発展に与えた影響は大きく。ペテルブルグを主題とした作品は文学、音楽、演劇、絵画など幅広いジャンルに見られる。特に、19世紀のロシア文学の作品に多く取り上げられ、それを素材として映画、演劇、オペラなど多くの芸術作品が産み出された。ペテルブルグの建設がロシア文化の発展に与えた影響、意義を考察していく。

●授業内容・授業計画
授業内容:プーシキン、ゴーゴリ、ドストエフスキイなどの描いたペテルブルグの形象を歴史的に展望し、ペテルブルグとモスクワとの関係、ヨーロッパとロシアとの関係に果たしたペテルブルグの役割を紹介する。また、チャイコフスキイやショスタコーヴィチなどの音楽も取り上げる。
授業計画:ソロモン・ヴォルコフ著『サンクト・ペテルブルグの文化史』(2001)や、モイセイ・カガン著『ロシア文化史のピョートルの町』(1996)などを参考に、主に文学作品から適当な個所を抜粋してペテルブルグの伝説、神話を紹介し、可能な限り、オペラや劇映画など、映像の資料を活用して、文字だけでなく映像や音を通して幻想の町ペテルブルグの過去と現在を理解してもらう。

●評価方法
出席とコミュニケーション・カードの感想などを考慮し、具体的にペテルブルグを描いた文学作品を複数読んでもらい、レポートないしはテストでその作品について論じてもらう。

●受講生へのコメント
授業中にペテルブルグを取り上げた文学作品や音楽作品の一覧表を紹介する。その中から複数の作品を読んで、或いは鑑賞して、ペテルブルグと、日本の都市、例えば、大阪と比較してほしい。

●教材・参考文献
適宜、プリントを配布する。
参考文献:適宜、授業中に指示する。

表現文化特論1 増田聡 

●科目の主題と目標
学術的なポピュラー音楽研究の視点と方法論について論じる。音楽美学、音楽記号学、文化社会学、メディア論、文化研究などの諸理論を参照しつつ、ロックやクラブ・ミュージックなど複製技術時代の音楽文化を考える上での基礎的な論点を提示し、現代の都市音楽文化にアプローチするための適切な視点と方法を身につけることを目標とする。

●授業内容・授業計画
1.イントロダクション
2.ポピュラー音楽とは何か(定義の概観)
3.研究史と理論―生産/テクスト/オーディエンス図式
4.生産(1)音楽産業の歴史と構造、その研究史
5.生産(2)音楽著作権の基礎構造
6.生産(3)音楽著作権ビジネスの実際と問題
7.テクスト(1)録音メディアと音楽制作テクノロジーの現在
8.テクスト(2)作曲―演奏―録音―流通と記号学的三分法
9.受容(1)音楽解釈の諸問題―ビデオクリップの図像学
10.受容(2)間テクスト性の諸相―パクリとリミックス
11.受容(3)ジャンルの理論
12.デジタル技術と音楽文化―J・アタリの音楽経済学
13.データベース消費と音楽文化のポストモダン―初音ミクとPerfumeの差異
14.まとめ

受講生の関心に応じて授業内容は適宜変更されたり、順序が変更される可能性がある。

●評価方法
期末試験またはレポートによる評価

●受講生へのコメント
楽典の知識は必要としないが、文化一般について広く関心を持つ学生の履修を期待する。

●教材・参考文献
参考文献として下記をあげる。音楽分野について卒論執筆を考えている受講生は一読しておくこと。
増田聡『その音楽の〈作者〉とは誰か―リミックス・産業・著作権』(みすず書房)
増田聡・谷口文和『音楽未来形―デジタル時代の音楽文化のゆくえ』(洋泉社)

表現文化特論2 石田美紀* 

●科目の主題と目標
今日、「やおい」または「ボーイズラブ」と呼ばれる「女性がつくり楽しむ男性同士の性愛物語」は、読書界・市場において広く認知されています。さらには「腐女子」と呼ばれるこれらの表象の愛好家にも、高い関心が寄せられています。
さて、この「女性がつくり楽しむ男性同士の性愛物語」は、いつ、誰が、どのようにして作り上げたのでしょうか。
本講義は、「やおい・ボーイズラブ」に至る系譜が誕生した70年代にさかのぼり、近・現代日本の大衆文化における「女性がつくり楽しむ男性同士の性愛物語」の意義を明らかにします。
そして、この表象の歴史的・文化的背景を踏まえ、70年代の誕生から現代に至るまで女性たちが行ってきた作品受容と創作のありかたを分析しながら、生きることと書く(描く)こととの相関関係を考察します

●授業内容・授業計画
授業は以下の3つを軸とします。
1・教養の変遷―明治以降の日本における「教養」を巡る抗争  
2・女性による男性身体の表象と表現―小説・マンガ・映画
3・読者から創作者への変化ー雑誌『JUNE』と同人誌文化
 
取り上げる題材およびキーワードは以下です。
「24年組」/「少年愛」/竹宮惠子/ヘルマン・ヘッセ/稲垣足穂/三島由紀夫/澁澤龍彦/雑誌『血と薔薇』/栗本薫・中島梓/私小説/ミステリ小説/マンガ対文学/雑誌『JUNE』/コミックマーケット/同人誌/二次創作/パロディ

●評価方法
授業参加(30%)およびレポート(70%)。

●受講生へのコメント
参加者とのディスカッションを積極的にもちたいと思います。
「腐」の人もそうでない人も、あるいは「腐」を認めない人も、意見を求める機会にはぜひ発言してください。

●教材・参考文献
教材 石田美紀『密やかな教育―〈やおい・ボーイズラブ〉前史』洛北出版、2008年。

参考文献 『ユリイカ 総特集・腐女子マンガ大系』2007年6月臨時増刊号、青土社。
     『ユリイカ 総特集・BLスタディーズ』2007年12月臨時増刊号、青土社。
     永久保陽子『やおい小説論―女性のためのエロス表現』専修大学出版局、2005年。
     佐藤健二編著『文化の社会学』有斐閣、2007年。


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