本科、研究生院

表現文化課程

本コースの研究内容・特色

表現文化コースは、現代社会の文化現象を「表現」という切り口から考察・研究するコースです。表現文化コースが提供するプログラムの特色は、現代社会の多様な文化現象における「表現」あるいは「表現する行為」に注目し、それを「表現の歴史」、「表現が生み出される場としての社会」、そして「表現に形を与えるメディア」の三つの観点から多面的に考察する点にあります。

「表現」に関わる文化現象は多様です。人間が考えたり感じたりしたことの「表現」、そして、人間のものの見方や感じ方の「表現」の代表例は、文学、美術、演劇、写真、映画などの芸術でしょう。しかし、「表現」に含まれるのはそれだけではありません。個人や社会の感受性や価値観を表現するファッションや化粧、ポピュラー音楽やマンガ、広告やメディアイベント、さらには、現在多くの人々によって楽しまれている多彩な創作活動(二次創作や同人活動)もまた、そこには含まれます。表現文化コースが対象とする「表現文化」とは、こうした多様な現象を指しています。

表現文化コースでは、そうした「表現文化」を、「歴史」、「社会」、「メディア」という三つの観点から多面的に考察します。
まず「歴史」ですが、あらゆる表現は、突然、無から生まれるわけではありません。すべての表現には、その形式やジャンルの歴史があります。たとえば、あらゆる物語には祖型があり、最新の小説やマンガの物語もまた、しばしば長い歴史的伝統からその力を得ているのです。そして、現代の演劇作品もまた、日本・西洋の長い伝統と無関係ではありません。したがって、表現文化コースでは、同時代の表現だけでなく、その歴史にも注意を払います。
第二に「社会」ですが、あらゆる表現は、純粋に個人的なものではありません。それはその表現が生み出され受容される社会の構造と関係しています。ある映画が大ヒットするとき、それは個人的な好みの集積ではなく、ある特定の社会状況のもとで人々の好みが構造化されていることを意味します。表現文化コースではしたがって、表現を、それを生み出し、それが受容される社会と関係づけて考察します。
第三に「メディア」ですが、私たちが出会う表現はすべてある特定のメディアによって形を与えられています。そのさい、メディアは無色透明な容れ物ではなく、それ自体の可能性と限界を持っています。たとえば、動く映像を映画館で見るのか、居間のテレビで見るのか、インターネット上のコメント機能付き動画共有サイトで見るのかによって、私たちと映像との関係は大きく異なったものになるのです。表現文化コースは、こうした表現とメディアの関係にも注目します。

最後にもう一つコースの特色を付け加えるとすれば、上記のような考察・研究を行っていくうえで、コンピュータを始めとする情報・メディア機器を積極的に活用していくことが挙げられます。視聴覚メディアやソフトウェアを用いたプレゼンテーションは、表現文化コースで習得できる基本的スキルのひとつです。

ここまでの説明でもすでにお分かりのとおり、表現文化コースではきわめて多様な対象やテーマが授業で扱われます。したがって、本コースを志望する学生には、次の二つ事柄がとりわけ要求されます。ひとつは、未知の文化現象への幅広い旺盛な好奇心であり、もうひとつは、多様な文化現象の中から自分が取り組みたい対象とテーマを主体的に探り当てていく積極性と自主性です。

本コースでは、教員スタッフがカバーしていない対象領域については、非常勤の先生を招くことで多彩なテーマに取り組めるよう配慮していますが、文化圏やテーマに関して本コースで研究が続けられるかどうか不安な人は、遠慮なくスタッフに相談してください。

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コースからのおしらせ

スタッフ

増田聡 教授 ポピュラー音楽研究、大衆文化研究、文化所有論(著作権、作者論など)
野末紀之 教授 19世紀末文化論、身体・セクシュアリティと芸術表現
高島葉子 教授 比較文学・比較文化、民間説話・民間伝承(特に妖精伝承)の比較文化的研究。
海老根剛 准教授 文化理論、映像論、ドイツ研究、表象文化論。

表現文化コースの授業 

本コース独自の授業は、選択必修科目とされている科目群で提供され、2回生から4回生のあいだに履修します。その中で「表現・表象文化論基礎演習」は、表現文化コースに進学した二回生のための少人数のゼミ形式の授業です。この科目では、マンガ、写真、小説といった様々なジャンルの作品について、グループにわかれて共同で作品を分析し、自らの考察を文章にまとめるレッスンを行います。また、文献の読み方や資料の扱い方、ディスカッションや発表の仕方など、学問的なコミュニケーション・スキルの習得もこの科目の目的のひとつです。

 本コースの大きな五本の柱となっているのが、「文化理論」「表象文化論」「ポピュラー文化論」「比較表現論」「テクスト文化論」で、それぞれ講義科目として提供されています。

 さらに上記五つの講義に対応する演習の授業として、「表象文化論演習」、「ポピュラー文化論演習」、「比較表現論演習」「テクスト文化論演習」「文化理論演習」が用意されています。3、4回生に提供される「表現文化特殊演習Ⅰ・Ⅱ」では、特定のテーマについて発表とディスカッションを行いますが、専門の異なる教員が共同で授業を行うコーチ―ティングの方法を導入することにより、多様な視点から問題を把握、議論することを通して新たな答えを導き出す能力を養います。表現文化コースの学生は、これらの演習から複数を履修し、自分の関心のあるテーマについて知識と考察方法を学んでいきます。また自由選択科目の「表現文化特論」「表象文化特論」では、演劇やアニメーションなど特定のテーマに関する講義を行います。

4回生では、「卒業論文」を書くことにもっとも集中することになります。実際にどのようなテーマで卒論が書かれているかを知りたい方は、雑誌『表現文化』各号にリストが掲載されていますので、そちらをご覧ください。雑誌『表現文化』は、学術情報センターの機関リポジトリに登録されていますので、オンラインで読むことができます。

コース決定にあたっての心構え

芸術・文化現象に対して強い関心を持つとともに、理論的な問題意識が要求されます。つまり、さまざまな作品(文学・音楽・美術・映画…)やサブカルチャー的な現象にたくさんふれ、関心を持つことはもちろん必要ですが、単にそれを「おもしろい」と享受している段階にとどまっているのでは研究になりません。そのためには、理論的視点から対象に問いかける訓練が必要になります。

外国語の能力もきわめて重要です。英語はもちろんのこと、少なくとももう一つの言語に習熟することを念頭におき、1回生のうちに新修外国語の基礎を十分に習得してください。

海外語学研修や留学生との交流も、視野を広げるチャンスです。表現文化では、毎年、留学生もともに学んでいます。

大学院

現代社会の幅広い文化現象を多面的な視点から対象化し分析することのできる、柔軟な思考力を持った意欲的な研究者の育成を目指しています。

卒業後の進路

さまざまな芸術分野・文化現象の考察・研究に取り組んだことを評価され、多種多様な分野へ進出しています。就職先は一般企業が多いですが、業種は、美術館、広告、映像制作、映画プロダクション、商社、金融、保険、製造、百貨店、旅行業、印刷、IT関連など幅広い分野に及んでいます。また最近では、教員志望の学生も多く、毎年多くの学生が英語や国語の教員免許を取得しています。公務員になる人も毎年数名います。また、さらに研究を深めるため、大学院に進学する人も少なくありません。

表現文化コースを志望するみなさんへのメッセージ

表現文化コースでは自分の「好きなこと」を研究できるように思えるかもしれません。確かに研究することはできますが、「好きなこと」を研究することほど難しいことはありません。そのためには、自分を厳しく相対化する視点の獲得が不可欠だからです。表現文化コースでは、「文化」とその「表現」に関わる問題に、旺盛な好奇心と主体性をもって取り組む意欲のある学生を歓迎します。そのような人にとって、表現文化コースは、知的刺激に満ちた3年間を過ごせる場所となることでしょう。1回生の間に何度かガイダンスがありますが、それ以外にも進路のことなどで相談があれば、いつでも表現文化学共同研究室(法学部棟5階508室)までおいでください。またメールでの相談も随時受け付けています。

刊行物

表現文化 表現文化学専修・表現文化コースでは、教員や大学院生からなる表現文化学研究成果を発表する学術誌として査読誌『表現文化』を刊行しています。『表現文化』は機関リポジトリで公開されています。

施設紹介

院生室のコピー
院生研究室
博士課程・修士課程の大学院生の研究活動をサポートする環境作りの一環として、表現文化学教室では「院生室」を用意しています。ここにはインターネットはもちろんのこと、個人作業用の机とパソコン、プリンタ、書棚、ロッカーが用意され、院生は自分の使う書籍などを保管し、論文やレポートの執筆を行うことができます。
学生室
学生指導室
学生の自習・談話の場である「学生指導室」には、表現文化コースに関わる多数の書籍や辞典類(例えば、映画、写真、演劇、音楽、都市論、カルチュラル・スタディーズ、メディア論、童話論、コッミック論、現代思想など)が置かれています。また、インターネットと接続したパソコンも設置されており、自由に用いることができます。
実験室のコピー
視聴覚実験室
表現文化学教室は、言語応用学教室との共有施設として、パソコンや視聴覚設備を備えた「視聴覚実験室」を備えています。この実験室は授業でしばしば用いられるとともに、授業のない時間には学生が自習のためにも自由に使うことができます。