表現文化学専修

表現文化学専修は、従来の人文学研究の枠組みを拡張し、新たな観点から文化の研究を推進することを目指して1999年に設置されました。文化構想学専攻の一専修としてリスタートするにあっては、これまでの研究と教育の蓄積を継承しつつ、表現文化についての専門的知見を文化創造に繋げることにも注力します。表現文化学専修における文化研究の特徴としては、(1)特定の言語圏や地域に限定されないトランスナショナルな文化のダイナミズムに注目すること、(2)言語に限定されない様々な表象の形式、すなわち映像、音響、身体表現といった多様なメディウムに依拠する文化現象を対象とすること、(3)ポピュラーな文化現象(サブカルチャー、テクノロジー文化、モード、広告など)を研究対象とするとともに、それにふさわしい方法論を探究すること、(4)過去の文化現象をも現代におけるアクチュアリティに結びつけて考察する現代的視点を重視することを挙げることができます。

教員紹介

野末紀之 教授

専門分野 19世紀末文化論、身体と芸術


専門は19世紀後半のイギリス文学および文化。近年はおもに唯美主義に属する作品を、文体、ジェンダー、セクシュアリティにおける文化闘争という観点から研究しています。授業では、主に19世紀後半から20世紀前半までのイギリス文学における同性愛の擁護や表現を、さまざまな社会的文化的文脈をおさえたうえで読み解き、その戦略や意義を考察します。比較対象のために、現代日本のポピュラー・カルチャーにおける同様の表現を取り上げることもあります。大学院では、テキストにたいし細心の注意を払いつつ、批判的な姿勢を忘れないことが大事です。それはまた、みずからの研究に熱中するとともに、その意義をたえず問い直すことにもつながります。


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高島葉子 教授

専門分野 民間説話、民間伝承、再話と再創造、比較文化論


比較文化的視点から、日本とヨーロッパおよび東アジアの民間説話・民間伝承を研究しています。文学や思想などの高級文化ではなく、一般民衆に伝わる説話や伝承を比較することで、異文化理解に貢献することをめざしています。また、民間説話の語り直し、メディアとの関係、口頭で物語を語ることの現代的意義についても研究を進めています。授業では、民間伝承における妖精や妖怪の比較文化的な考察や、これらの伝承が現代の物語にどのように表出し、そこにはどのような意味があるのか考える授業を行っています。知的好奇心旺盛なだけでなく、研究を通して社会にどのように貢献できるか、問い続ける人を歓迎します。


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増田聡 教授

専門分野 音楽学、メディア論、大衆文化論


これまで行ってきたポピュラー音楽の美学的研究をベースに、現在は主に二つの研究主題に取り組んでいます。音楽をはじめとした文化表現の盗作や剽窃をめぐる諸問題と、日本のポピュラー音楽におけるナショナリズム的表象の系譜学です。授業ではポピュラー音楽をはじめとする大衆文化研究の理論と手法を文献購読や討論により学び、現代ポピュラー文化の諸事象へのアプローチを身につけていきます。ですが大学院は「教員が院生に教える場」というよりも、むしろ「院生が教員に教える場」だと考えてください。大衆文化研究においては独自のテーマに取り組む院生ひとりひとりが「専門家」です。私が知らない事象の知をぜひ教えてください。これまで学知が見てこなかった新たな事象について「それは何なのか」を共に考えていきましょう。


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海老根剛 准教授

専門分野 表象文化論、ドイツ文化研究


私は現在、主に次の三つの研究課題に取り組んでいます。(1)映画とポスト映画メディウムにおける身体と声の関係に注目した映像文化研究、(2)20世紀前半のドイツ語圏における群集表象の文化史的研究、(3)近代以降の人形浄瑠璃における観客史です。表現文化学専修の授業では、主に映画や映画以後の映像メディアを対象とする映像文化研究のトピックを取り上げて、文献購読と作品分析を交えた考察を院生と共同で行っています。現在、私たちの周りの映像・音響環境は大きな転換期を迎えています。歴史への理解と同時代の表現に対する批評的感受性、そして理論的な視点の横断性を養いながら、日々変化しつつある映像・音響と私たちの結びつきを考えてみませんか。


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科目名一覧

後期博士課程

  • 表現文化学論文指導
  • 表現文化学特殊研究A(文芸表象論)
  • 表現文化学特殊研究B(文化戦略としての説話)
  • 表現文化学特殊研究C(ポピュラー文化)
  • 博士論文指導

修士課程

  • 文化構想学研究A(表現文化)
  • テクスト文化論研究
  • テクスト文化論研究演習
  • 比較表現論研究
  • 比較表現論研究演習
  • ポピュラー文化論研究
  • ポピュラー文化論研究演習
  • 表象文化構造論研究
  • 表象文化構造論研究演習
  • 表現文化学特別講義A
  • 表現文化学特別講義B
  • 表現文化学総合研究1
  • 表現文化学総合研究2
  • 表現文化学研究指導1
  • 表現文化学研究指導2

修了後の進路

  • 一般企業(IT関連、出版、映像制作、イベント興業会社など)
  • 文化制作関連(地方自治体の芸術文化振興拠点事業など)
  • 教員(高等学校)
  • 研究者、大学教員

修論・博論のテーマ(例)

  • 「物語テクストの再生成の力学: 「やおい」の物語分析を中心として」(博士論文)
  • 「映画『ハッピーアワー』における演出と演技」(修士論文)
  • 「大江健三郎の小説における読書行為—テクストを解釈する登場人物—」(修士論文)
  • 「アイドル声優の夜明け〜八〇・九〇年代アニメ雑誌調査を中心に〜」(修士論文)