Undergraduate Faculty / Graduate School

Cultural Resources

 文化資源コースは、2019年度から始まった新しいコースで、コース名となっている「文化資源学」という領域自体も、21世紀に入ってから本格的に注目がなされるようになった新しい学問です。「資源」というと、皆さんは石油や鉄鉱石や森林(天然資源)、あるいは古新聞やペットボトル(資源ゴミ)などを連想するかもしれません。すなわち資源とは、人々の生活や社会活動をより豊かにするために有効に活用することができるものを指します。この意味で、「文化資源」とはあらゆる文化的な所産に「価値」を見出し、文化を社会の中で積極的に活用するための理論や実践について学びます。
 文化の活用というと、国宝や文化財、文化遺産の保存や継承がイメージされがちで、実際に他大学の類似の名称の学科やコースでは、そうした分野について学ぶことが多いですが、本コースでは、歴史的な文化はもちろん、現代の文化や、現在進行形で生み出されていく最新の文化に至るまで、さらに絵画や建物・街並みといった「モノ」としての文化のみならず、演劇の上演や、イベント、観光ガイドツアー、アートワークショップなどの「コト」としての文化にも着目します。
 主要な専門科目においては、アート(芸術、特に美術・音楽・演劇)とツーリズム(観光)に関連する文化資源のあり方を捉えること、及び文化の活用のための企画や実践について扱います。アートといっても、いわゆるファインアート(著名な芸術家の創作した絵画や彫刻、音楽)だけではなく、ガムの包み紙から、即興的にその場で紡ぎ出される音楽に至るまで、あらゆる文化的所産についてその活用の可能性を追求します。

コースからのおしらせ

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スタッフ

小田中章浩 教授 表象文化論、特にフランス演劇・西洋演劇に関する比較演劇史的な研究、演劇的な表現の特色に関する考察を中心に研究を行なっています。「舞台芸術文化論」「舞台文化資源論演習」などの科目を担当します。
菅原真弓 教授  日本美術史、特に近世・近代の浮世絵版画の研究、文化資源論、博物館学を中心に研究を行なっています。大学の教員になる前は、学芸員として美術館に勤めていました。「文化資源基礎論」「視覚文化資源論演習」などの科目を担当します。
天野景太 准教授  観光学、特に都市における観光、新しい観光スタイル、メディアと観光行動の関係などを、社会学・文化論的な視点から解読する研究を中心に行なっています。「観光文化論」「地域文化資源論演習」などの科目を担当します。
沼田里衣 准教授  臨床音楽学、特に音楽療法や即興音楽の可能性について研究を行なっています。神戸を中心に「おとあそび工房」など、音楽を題材としたワークショップを企画・実践中です。「文化デザイン論」「音楽文化資源論演習」などの科目を担当します。

文化資源コースの授業

 「文化資源基礎論」では、文化資源とは何か、その歴史的な展開と現在について、関連分野である美術史や歴史学、文化財学等の知見を踏まえながら学びます。「観光文化論」では、具体的に活用される現場としての観光のあり方について、食文化探求の旅やエコツアー、アニメの聖地巡礼など新たな文化体験のあり方を中心に学びます。「文化デザイン論」では、文化を生み出す場と文化を用いて個人や社会に影響を与える場を、いかに創りだすことができるのかについて学びます。「視覚芸術文化論」では絵画や彫刻、漫画、グラフィックアート、アニメーションなどの視覚芸術の展開を学び、「舞台芸術文化論」では、西洋と日本における演劇の歴史と表現上の特色について学びます。「文化資源特論Ⅰ」では、隔年で開講される観光メディアと国際観光に関する事象をそれぞれ学びます。「文化資源特論Ⅱ」では、芸術祭の企画・運営の実績を持つ講師をお招きし、実務的な観点からアートマネジメントの手法や課題について学びます。「文化資源特論Ⅲ」では、地域活性化や国際文化交流の実績を持つ講師をお招きし、実務的な観点から文化資源による地域再生の手法や課題について学びます。「文化資源特別演習」では、複数の教員が参加し、発表と討論を通じて文化資源を複眼的な視点から捉えるセンスを磨きます。

 文化資源コースの大きな特徴は、座学による学びだけでなく、アートイベントの企画や観光メディアの制作、まちづくりや地域再生に関する現地フィールドワーク、音楽ワークショップの企画・参画、美術館などへのインターンシップ的な視察などの実践的な取り組みに関わることを通じて、文化資源の力=文化力を引き出すためのセンス(感性)とメチエ(技能)を体験的に養うことが出来ることです。たとえば、観光に関連する実践活動として、ツアーやまちづくりの企画をたて、学生コンクールに出展したり、地域づくりの現場に赴き、現地調査を行なった上で、地域への提言を行なったります。また、美術や音楽・演劇に関する実践活動として、アートプロジェクトを企画・立案したり、小規模な劇を制作・上演したりします。4年次には、これまでの学びの集大成として、自らテーマを選定した上で、卒業論文の執筆を行ないます。

コース決定にあたっての心構え

 第一に、さまざまな文化・社会現象に対する好奇心を持って欲しいということです。文化資源を研究するためには、その対象である文化が創出されるプロセスについて深く関心を抱いてください。そのため、文学・歴史学・地理学・社会学・表現文化・アジア文化など文学部の他のコースの科目や、他学部の関連科目も積極的に履修することが望まれます。
 第二に、受け身の姿勢ではなく、積極的にプロジェクト等に参画し、社会において何かを成し遂げ、そして自らも成長を果たそうとすることへの意欲と行動力を持ってください。

大学院

 文化資源に関連する理論と実践について、さらに深く研究しようという人は、大学院への進学をおすすめします。修士論文・さらには博士論文の執筆を通じて、より理論的・体系的に文化資源学(関連する芸術学、観光学などを含む)を追求できます。また、専修分野の性格上、留学生や社会人の大学院生が多く在学することでしょう。こうした文化資源に関する実務家を含む多様な人々との交流のなかで、自己鍛錬することができます。

卒業後の進路

 本コースの学びが直接的に関連する職種は、博物館・美術館の学芸員、イベンター・メディアプロデューサー・出版社や放送局といったメディア業界、旅行会社や鉄道・航空会社・通訳案内士といった旅行業界などが想定されます。実際に、スタッフが過去に指導した卒業生には、そうした進路に進んだ人も多いです。しかし、文化資源コースでの学びを通じて得られる力は、社会における実践力に直結しています。文化に価値を見出す想像力、プロジェクトの企画や実施を通じて鍛えられるチームワーク力やプロデュース力は、どんな職種でも求められる力です。そのため、商社や金融、製造などの一般企業、国家・地方公務員から、教員、大学院進学に至るまで、幅広い進路への夢をサポートします。

文化資源コースを志望するみなさんへ

 第一に、文化資源コースが対象とする「文化」は、非常に幅広いです。スタッフが過去に指導した卒業論文のテーマも、演劇論や美術史、観光に関連するテーマのみならず、クラブイベント、プロスポーツチーム、音楽フェス、食文化の国際比較、ゆるキャラ、恋愛論、幸福論、ビデオゲームの作品分析、現代ギャルファッション、お笑いコントに至るまで、多種多様です。また教員の出身も、芸術学、歴史研究(美術史)、社会学、教育学(人間表現論)と多岐にわたりますので、多様な視点からの指導が可能です。自らが打ち込むと決めたテーマについて、真剣に「ガクモン」することへの意欲を持った皆さんを歓迎しています。
 第二に、文化資源学という領域、および文化資源コースは、まだまだ未開拓な新しいフロンティアです。そこに降り立ち、教員とともに切磋琢磨しながらパイオニアたろうとするチャレンジングな精神をもった皆さんが、本コースを選択されることを期待しています。