人文学(旧人間行動学)基礎演習I(2部)
プレゼンテーション&写真観察法*で語る大阪
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タワービルという広告塔―消費と金融の交差点―
山崎孝史
大阪市立大学大学院文学研究科教員
ここは、心斎橋筋と長堀通りの交差点である。交差点の南西角に「心斎橋タワービル」という飲食店複合ビルが建っている。この交差点周辺は地上の心斎橋筋商店街と地下のクリスタ長堀が交錯し、大阪随一の商業地区を形成する。 このタワービルの壁面にひときわ目立つのが消費者金融の広告である。このビルができた1980年代の初めより、景気の上昇とともに、消費者金融業も隆盛し、今や主要な商業地区には無担保で容易にお金を借りられる無人店舗が集積する。
しかし、「金を借りてまで買う」という時代が過ぎると、1998年から99年にかけて大阪市の一人当たりの市民所得が政令指定都市で最大の下げ幅(-5%)を記録し、最近では武富士やプロミスといった業界大手は経常収益を悪化させ、店舗展開を手控えている。
広告に目をとめ、商店街に立ち入る前に、このビルをかけ上るような人は、これからどれだけ増えるというのだろうか。
(2002年10月30日正午 心斎橋タワービル)
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*日本大学文理学部社会学科後藤範章先生が提唱された「集合的写真観察法」に示唆を得て、地理学用にアレンジしてみました。後藤ゼミの活動成果についてはこちら(「東京人」観察学会)をご覧下さい。 |