2016年度前期 地理学概論I

政治・空間・場所
ー「政治の地理学」にむけてー

General Geography I
Space, Place, and Politics: Towards a Geography of Politics


沖縄県名護市辺野古(2008年3月15日撮影)

担当
山崎孝史(やまざきたかし)

連絡先: yamataka[at]lit.osaka-cu.ac.jp
担当者ホームページ: http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/user/yamataka/home.htm
講義ホームページ: http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/user/yamataka/gairon.html

教室と時間
1号館124号室、毎週火曜日、午前10時40から12時10分

I 担当教員のプロフィール

1961年京都市生まれ。2004年コロラド大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。専門は政治地理学、特に地域社会軍事化、地政学、社会運動、アイデンティティ・ポリティクス。調査フィールドは沖縄。沖縄の基地所在市町村の変容、日米安全保障関係の変化と社会運動や投票行動との関わりを研究中。特技は合気道(四段)。


II 科目の主題

本講義は、現代社会を地理学的に理解する一つの手段として、政治という側面について考えます。政治地理学の入門編として、政治地理学の理論と分析方法について講述したあと、事例研究を紹介し、政治を地理学的に研究する有効性について解説します。本講義によって、政治的事象が空間や場所といかに密接に結びついているかを理解できるようになるでしょう。


III 達成目標

1.近代政治地理学の展開を批判的に振り返りながら、国際社会の変動を理解する視座として政治地理学の有効性を理解します。 2.マルチ・スケールの観点から、空間・場所・領域に関する政治地理学的理論を理解します。 3.コンテクスト・スケール・言説という概念を用い、グローバル/ローカルな政治事象の分析方法を把握します。 4.以上の理論的・概念的理解をもとに、政治地理学的な事例研究へのアプローチを習得します。


IV 授業内容・授業計画

本講義は4部14回からなります。第1部は、近代における政治地理学の展開、つまり戦前の地政学から現代の政治地理学までの流れを、英米と日本においてあとづけ、「新しい地政学」および「場所の政治」研究の視角を示します。第2部は、空間や場所と権力との関係を明らかにしつつ、その関係を反映する領域の性質を理論的に解説した上で、グローバル化とナショナリズムについて政治地理学的に考えます。第3部は、「コンテクスト」、「スケール」、そして「言説」という政治地理学にとって鍵となる概念について説明し、それらを実証研究のなかでどのように活用しうるかを検討します。第4部は、第3部までの理論的・概念的な議論が、具体的な事例研究としてどのように展開できるかを解説しています。つまり本講義では、政治地理学の学史・理論・概念・実証というテーマが断続せず、前後のテーマと重なりあいながら展開する構成になっている。受講生がこれら4部からなる本講義を受講することによって、政治地理学の理論的視角のみならず、日常的に見られる政治的な出来事に対する感性と理解が深まることを期待します。

各Chapterのリンクをクリックすれば講義スライド(PDFファイル)をダウンロードすることができます。

第1週(4月12日) イントロダクション:講義の構成

第1部 政治地理学がたどってきた道


第2週(4月19日) Chapter 1 政治地理学の起源と地政学の盛衰
第3週(4月26日) Chapter 3 政治地理学の展開と課題(課題は第3章ですのでお間違えなく

第2部 空間・場所・領域

第4週(5月10日) Chapter 4 空間分析批判
第5週(5月17日)
 Chapter 5 場所の政治的意味
第6週(5月24日) Chapter 6 人間の領域性
第7週(5月31日) Chapter 7 グローバル化とナショナリズム

第3部 コンテクスト/スケール/言説の政治

第8週(6月7日) Chapter 8 コンテクストの政治
第9週(6月14日) Chapter 9 スケールの政治
第10週(6月21日) Chapter 10 言説の政治

 6月28日休講

第4部 理論に根差した事例研究へ

第11週(7月5日) Chapter 11 大都市圏行政と公共選択論
第12週(7月12日) Chapter 12 政党の編成と投票行動
第13週(7月19日) Chapter 13 領域と社会運動
ご注意 7月18日に掲示板のサーバーが不安定化して、アクセスできない状況にありますので、まだ課題を作成していない方は次の問題を考えて来て下さい。
@国外の事例で構いませんので、特定の国の一部地域が自治や独立を要求して政治運動化している例を探して来て下さい(ネットなどで探して下さって結構です)。その例についてその発生・展開の歴史的経緯について説明して下さい。
Aそうした運動の展開について地方政府や運動組織の具体的主張を探して来て下さい。
Bもし運動の盛衰や展開に変化が見られるのであれば、その変化をその地域をめぐる国際関係と比較して考えてみて下さい。沖縄の例を参考にして下さって構いません。


掲示板は7月18日午後8時現在復旧しておりますので、そちらをご参照ください。もし再度アクセスが不安定化するようでしたら、上の設問でご解答下さい。

第14週(7月26日、補講 123号室 Chapter 14 安全と安心のまちづくり

第15週(8月2日) 期末レポート提出(レポート執筆要領


V 評価方法

(1) 出席:毎週の講義には必ず出席して下さい。出席数が2/3(10回)以上の受講生を評価対象とします。欠席の場合はその他の評価得点から減点する措置をとりますが、病欠などの場合は診断書のコピー等の提出があれば減点しません。

(2) 週リーディングレポート:予習として毎週講義前に教科書の指定章を読み、講義掲示板(VI参照)で示された課題を考察し、その回答(あるいは討論時に発言したい内容)を当該講義時に持参し、講義後に提出してください。書式はA4判を縦に用い、横書きで1頁以内(800字程度、少ない場合は減点します)。左上に以下のように記入してください。講義中に作成せず、原則としてワープロで印刷したものを提出してください。尚、出席票の代わりとしますので、実際の発言内容、意見、質問などを講義中に書き加えられるよう、用紙の下部1/4程度には余白を設け、記入・署名してから提出してください(Wordによる雛形はこちら)(評価配分50%)

   週番号:
   学籍番号:            氏名:
   
 
各週の課題設問は下に示す「政治地理な掲示板」にポストしていきます。それをに沿って週レポートを作成して下さい。

(3) 期末レポート:執筆要領に従って、テキストの特定の章(複数でも構いません)について論評し、そこで言及された理論的視角を用いて、その章で「言及されていない」事例で理論の妥当性を考察してください。締切は8月2日です。提出場所・受付時間はサポートセンターで確認して下さい。(評価配分50%) 過去の優秀レポートはこちら

(4) 講義ノート:講義はパワーポイントを用いて行い、板書は行いません。基本的にテキストに沿って進め、多数の画像を用いますので、必要な事項のみノートに書き取ってください。なお、テキストにない事例にも言及することがあります。

(5) 評価:大学の規定に基づき評点が全体の60%以上の受講生を合格とします。

(6) 不正行為:課題等の不正提出や不正作成(盗作)、そのほjか不正行為が認められた場合は、その時点で厳正な処置を行い、所属学部に報告します。遅刻・早退・講義中の私語など、講義妨害についても同様の処置を行います。



VI 教材・参考文献

本講義のテキストは山崎孝史(2013)『政治・空間・場所―「政治の地理学」にむけて[改訂版]』(ナカニシヤ出版)です(旧版ではありませんのでご注意ください)。生協書籍部で販売されていますので、必ず購入してください。


VII コミュニケーション

山崎のホームページには研究科のサーバーから独立した講義掲示板「政治地理な掲示版」があります。URLは以下です。各週課題の設問、講義中に伝え切れなかった事項、あるいはレポートに関わる情報を掲示しますので、こまめに確認しておいて下さい。また、掲示板には講義に関する意見や質問なども書き込んでください。速やかに回答して論点や疑問点を受講生間で共有できるようにします。さらに、掲示板は大学や研究科のサーバーダウンやその他緊急時の連絡用に使用しますので、ホームページへのアクセスがうまくいかなかった場合は掲示板を参照するか、そこに状況を書き込んでください。尚、電子メールによる個別の質問・相談も受け付けます。

 政治地理な掲示板 http://www.rinku.zaq.ne.jp/bkfui203/polgeog_bbs.htm


VIII その他

講義の課題について相談したいことがある場合は、遠慮なく山崎までご連絡ください。

山崎研究室
文学部新築棟358号室