【現行の指針】

「ベルモント原理」(The Belmont Principles)
被験者保護全米委員会(1974-1978)の『ベルモント・リポート』(1979)
(The Belmont Report: Ethical Principles and Guidelines for the protection of human subjects of research)
 原文 http://ohsr.od.nih.gov/guidelines/belmont.html
 和訳 http://homepage3.nifty.com/cont/28-3/p559-68.html
1.人格の尊重 respect of persons
  具体例:インフォームド・コンセント
2.恩恵(仁恵、善行)beneficence
  具体例:危険性対利益の評価 assessment of risks and benefits
3.正義 justice
  具体例:被験者の選択 selection of subjects[の公平を図ること]

ビーチャム&チルドレスの4原理(1979〜、最新版は2008)
『生命医学倫理』(Principles of Biomedical Ethics)
 原書(最新版=第6版)http://www.amazon.co.jp/Principles-Biomedical-Ethics-Beauchamp/dp/0195335708
 第4版の和訳 http://www.amazon.co.jp/%E7%94%9F%E5%91%BD%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E5%80%AB%E7%90%86-%E3%83%88%E3%83%A0%E3%83%BBL-%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%A0/dp/4892055808
 ※研究だけでなく診療の倫理的原理でもある
1.自律尊重 respect for autonomy:患者・被験者の自律(自己決定)を尊重せよ
2.無危害 nonmaleficence:重大な障害や死を引き起こすな
3.恩恵(仁恵、善行)beneficence:患者・被験者に利益をもたらせ(利益が危険性を上回るべし)
4.正義 justice:患者・被験者を公平に扱え

厚生労働省「臨床研究に関する倫理指針」(2003〜、最新版は2008)
 http://www.mhlw.go.jp/general/seido/kousei/i-kenkyu/index.html#4
研究者等(研究責任者、機関の長等、研究に携わる者)の責務
(1)「被験者の生命、健康、プライバシー及び尊厳を守る」
(2)「一般的に受け入れられた科学的原則に従い、科学的文献その他科学に関連する情報源及び十分な実験に基づ」く
(3)指針に従い「インフォームド・コンセントを受け」る
(4)医薬品や医療機器を用いる介入研究の際には「あらかじめ、当該臨床研究の実施に伴い被験者に生じた健康被害の補償のために、保険その他の必要な措置を講じ」ておく
(5)環境に影響する場合、動物を使用する場合「十分な配慮」をする
(6)事前に「臨床研究に関する倫理その他臨床研究の実施に必要な知識についての講習その他必要な教育」を受ける

世界医師会「ヘルシンキ宣言」(1964〜、最新版は2008)
 原文および日本語訳 http://www.med.or.jp/wma/helsinki08_j.html

国際医学団体協議会(CIOMS)/世界保健機構(WHO)「人を対象とする生物医学研究の国際倫理指針」
International Ethical Guidelines for Biomedical Research Involving Human Subjects
Prepared by the Council for International Organizations of Medical Sciences (CIOMS) in collaboration with the World Health Organization (WHO)
 原文 http://www.cioms.ch/publications/guidelines/frame_guidelines.htm
 日本語訳 http://homepage3.nifty.com/cont/34_1/p7-74.pdf
倫理的原理としてはベルモント3原理を取り上げている
*CIOMS:「1949年にWHO(世界保健機構)とユネスコとの協賛により設立されその本部はジュネーブ(スイス)にある。各国の医学関連団体、研究グループ、行政機関がメンバーとなり、国際間にまたがるような医学関連事項の研究推進を行い、国際的な医療関連業務の円滑な促進を図ることを目的としている」(http://www.shinyaku-kaihatsu.com/06/0603cioms/ による)


【歴史的指針】

ニュルンベルク・コード(1947)
1. 被験者の自発的な同意は絶対に欠かせない。
 これは被験者が、同意を与える法的な能力を持っていること、力や詐欺や欺瞞や拘束や出し抜きなどのいかなる要素の介入も、その他隠れた形の束縛や強制も受けることなく、自由に選択する力を行使できる状況にあるということ、および、理解した上で啓発された選択を行うために、被験者に行われることについての十分な知識と理解をもつこと、を意味している。最後の事柄は、被験者の実験に同意する決断を受け入れる前に、実験の本質と持続時間と目的、実験の方法と用いられる手段、合理的に予想されるあらゆる不便と危険性、そして実験に参加することで被験者の健康と人格に生じる可能性がある影響、が、被験者に知らされているべきであるということを要求する。
 同意の質を確認する義務と責任は、実験を開始する者、指揮する者、ないし実験に関与する者すべてに負わされる。これは他人に委ねて罰を免れることはできない個人的な義務及び責任である。
2. 実験は、社会の善のために、他の研究方法や研究手段では得られない実りある成果をもたらすものであるべきであり、本質的に試行錯誤的であったり不必要なものであるべきではない。
3. 実験は、予見された結果が実験の実行を正当化するべく、動物実験の結果と、疾病や研究中の問題の自然の経過に関する知識に基づいて計画されているべきである。
4. 実験はあらゆる不要な身体的・心理的苦痛や傷害を避けるように行われるべきである。
5. いかなる実験も、死や障害が生じると思われるアプリオリな理由がある場合には行われるべきでない。ただし、おそらく、実験を行う医師もまた被験者となる実験を除く。
6. 実験の危険性の程度は、実験によって解決されるはずの問題の人道的重要性に応じた程度をけっして越えてはならない。
7. たとえ遠い可能性にすぎないとしても、傷害・障害ないし死から、被験者を護るべく、適切な準備と設備が整えられるべきである。
8. 実験は科学的に資格のある人物によって行われるべきである。実験を行う者ないし関与する者は、実験のすべての段階において、最高度の熟練とケアが要求されなければならない。
9. 実験の過程において被験者には、実験の続行が彼自身不可能に思われる身体的ないし心理的状態に達した場合、実験を終わらせる自由があるべきである。
10. 実験の過程において科学者は、彼に要求される確固たる信念と高度な技術と注意深い判断力のもと、実験の続行が被験者に傷害や障害や死を招くと思われる理由がある場合には、どんな段階でも実験を終わらせる準備がなければなければならない。
(Trials of War Criminals Before the Nuremberg Military Tribunals Under Control Council Law 10, US Government Printing Office, 1950; Military Tribunal Case 1, United States v. Karl Brandt et al., October 1946-April 1949. George J. Annas & Michael A. Grodin (eds.), The Nazi Doctors and the Nuremberg Code: Human Rights in Human Experimentation, Oxford University Press, 1992, pp.102-103.)

ドイツ保健評議会「新治療法および人間に対する科学的実験の実施に関する指針の最終案」(1931、抜粋)
(1) 医学が停滞すべきでないなら、医学は、まだ十分にその効果が確かめられていない新しい治療法を導入するのがふさわしい場合に、その導入をやめてはならない。また医学は、人間に対する科学的実験を全くしないでいるわけにもいかない。もしそんなことをすれば、診断や治療や病気の予防における進歩が阻害されたり、完全に不可能になったりするだろう。
 この指針によって医師に認められる特別の権利には、新治療法を受けたり実験がなされたりする人たちの生命と健康に対する重大な責任を自覚する特別の義務が伴う。
(2) この指針にいう「新治療法」とは、これまで得られた知見によってはその作用や効果がまだ十分に見極められないにもかかわらず、治療に役立つ、すなわち個々の特定の症例における病気ないし苦痛の解明・治癒・予防、ないしは身体的欠陥の除去のために行われる、人間への侵襲及び処置を意味する。
(3) この指針にいう「科学的実験」とは、個々の症例において治療としては役立たず、研究を目的として行われ、しかもその作用と効果がこれまで得られた知見によってはまだ十分に見極められない、人体への侵襲及び処置を意味する。
(4) すべての新治療法は、その発案と実施において、医師の倫理の基本原則及び医療技術・医学の諸規則に合致していなければならない。
 場合によっては生じるかもしれない危害が、期待される利益に見合ったものであるかどうかが、絶えず綿密に調べられ比較衡量されなければならない。
 新治療法は、あらかじめ可能な限り動物実験によって試されている場合にのみ、行うことが許される。
(5) 新治療法は、治療を受ける個人もしくはその法律上の代理人が、事前の適切な説明に基づき、明確な仕方でその実施に同意する旨を表明した後にのみ、行うことが許される。
 同意がない場合、新治療法の導入は、生命維持のための、あるいは重度の健康障害を防ぐための一刻を争う処置が問題となっており、しかも前もって同意を得ることができない状況にあったときにのみ認められる。
(6) 子供もしくは18歳未満の若者が対象である場合、新治療法を用いるかどうかは、とくに入念に検討されなければならない。
(7) 医師の倫理は、新治療法を実施するために[患者の]社会的困窮状態を利用するいかなる行為も、これを弾劾する。
(8) 生きた微生物、とくに生きた病原体を用いた新治療法に際しては、一段と慎重さが求められる。こうした新治療法は、当の処置が比較的無害であると予想され、またその状況下で他の方法によっては同等の利益が得られると期待できない場合にのみ、許容できるものと判断される。
(9) 診療所、外来診療所、病院、その他の治療・看護施設において、新治療法は、主任医師自身によって行われる場合のみ、あるいはその他の医師によって行われるときはそれが主任医師の明確な委任によるものであり主任医師がその全責任を負う場合にのみ、許可される。
(10) あらゆる新治療法に関して、その処置の目的、それが必要な理由、およびその実施方法を明記した記録が作成されなければならない。またとりわけ、治療を受ける人、あるいは必要な場合はその法律上の代理人が、事前に適切な説明を受け、同意を与えたということに関する覚書がなければならない。
 第5条第2項に定めた条件に基づいて同意なく新治療法が行われた場合、この覚書はその条件を詳細に書き記していなければならない。
(11) 新治療法の結果を公表する際には、患者と人道的原則に対して払うべき敬意をあらゆる面で考慮した様式が採られなければならない。
(12) この指針の第4条から第11条は、科学的「実験」(第3条)についても、しかるべく妥当する。その他に、こうした実験については以下のことが妥当する:
 (a) 同意がない場合、実験の実施は、いかなる事情の下でも許容されない。
 (b) 動物実験によって代替されうる人体実験は、すべて弾劾される。人体実験は、その実験を明確で安全なものにするために、実験室での実験および動物実験という、医学的にも利用可能な生物学的方法によって獲得できるすべての証拠が事前に揃えられて、はじめてその実施が許可される。この前提条件により、無根拠ないし無計画な人体実験は、当然すべて不可能になる。
 (c) 子供もしくは18歳未満の若者に対する実験は、たとえそれが子供もしくは若者に対して非常に小さな危害しか与えない場合でも、許容されない。
 (d) 瀕死者に対する実験は、医師の倫理の基本原則と一致するものではなく、それゆえ許容されない。
(13) この指針によって、医師たち、とりわけ重い責任を負う病院長たちが、彼らに身を委ねている患者に対する強い責任感に基づいて行動すると期待できるようになれば、従来知られていた方法を医師としての確信に従って放棄せざるをえない場合、新しい方法によって患者の苦痛を和らげ、病状を改善し、病気を予防または治療する責任を進んで負うこともまた、彼らに大いに期待できるようになるだろう。
(14) 新治療法または科学的実験の実施、ならびにその結果の公表に際して医師に課せられる特別の義務については、必ず大学教育において、あらゆる適切な機会を通じて、指導がなされるべきである。
(Hans-Martin Sass, "Reichsrundschreiben 1931: Pre-Nuremberg German Regulations Concerning New Therapy and Human Experimentation." Journal of Medicine and Philosophy 8 [1983], pp.107-109. 市野川容孝「ニュルンベルク・コード再考」加藤尚武・飯田亘之編『応用倫理学研究II』千葉大学教養部倫理学教室、1993年、pp.308-323 による訳文を改変した)

プロイセン宗教・教育・医療大臣「病院・外来診療所その他の医療施設長に対する命令」(1900年12月29日)
I. 病院clinics・外来診療所polyclinicその他の医療施設の長に対し、たとえ他の全ての法的・倫理的要件が満たされていたとしても、以下の条件に当てはまる場合、診断・治療および予防接種immunization以外の目的で医療的介入を行うことを絶対的に禁止する。
 1. 患者が未成年者であるか、その他の理由で完全な能力を有してはいない場合
 2. 患者がその介入に同意することを明白に表明してはいない場合
 3. 患者の同意表明が、その介入がもたらすかもしれない悪影響についての適切な説明に基づいてなされてはいない場合
II. 加えて、以下のことを命ずる。
 1. こうした介入が施設長自身によってなされるか、あるいは施設長の特別な許可によってなされること
 2. こうしたあらゆる介入の際に、第I条第1項から第3項および第II条第1項の要件が満たされていること、および症例の詳細な記述を、病歴帳に記載しなければならないこと
III. この命令は、診断・治療ないし予防接種を目的とする医療的介入には適用されない。
(Centralblatt der gesamten Unterrichtsverwaltung in Preussen, 1901, S.188-189. George J. Annas & Michael A. Grodin (eds.), The Nazi Doctors and the Nuremberg Code: Human Rights in Human Experimentation, Oxford University Press, 1992, p.127における英語訳による)


【目次へ戻る】

【HOME】