第18回人間行動分析研究会講演要旨

ハトとヒトの相対優位性

渡辺創太(大阪教育大学・日本学術振興会)




 私達は物体の大きさを判断する際、その物理的大きさに着目する(絶対判断と呼ぶ)ことも周囲刺激との大きさの比率に着目する(相対判断と呼ぶ)ことも出来る。近年、多くのヒトを対象とした認知研究が、ヒトの相対判断優位性を示した。しかし、対象刺激の大きさのみに着目することで可能となる絶対判断に比べ、相対判断は対象刺激のみならず周囲刺激の大きさにも着目する必要があり、認知コストはより高いと考えられる。ヒトに見られるこのような相対優位性は、他の動物には見られるのだろうか。本研究は、ヒトと同じく多くの認知研究の知見を持ち、多くのヒトと異なる認知特性を示すハトを対象に、単純図形の大きさに対する判断の優位性を調べた。実験1でハトに目標線分を呈示した際にその大きさに感受性を示すのかを調べたところ、ハトは目標線分に感受性を示し、また目標線分の周囲に呈示した正方形枠の大きさに対しても感受性を示した(相対判断)。実験2ではハトを2群に分け、群間で同じ刺激を用いながらもそれぞれの群に相対判断ないし絶対判断のみを十分に訓練した後、これらの判断精度を群間比較したところ、相対判断群の判断精度は絶対判断群よりも高かった(相対判断優位性)。考察では、これらの結果についてヒトにおける研究知見と関連付けて議論する。