社会学コース
1 本コースの研究内容、特色
 〔社会学とは何か〕 学問は、すべて対象と方法によって特徴づけられます。これを社会学について述べますと、社会学の研究対象はあらゆる社会現象にわたり、文字どおり古今東西におよびます。アト・ランダムに例示すれば、(1)アフリカ難民の集団形成、(2)孔子教団の構造と機能、(3)ナチズムの統治機構、(4)核家族と産業、(5)天皇制と大衆文化、(6)選挙制度の国際比較、(7)階層の史的分析、(8)新宗教の社会的背景、(9)近代化と共同体……一見したところ無原則・雑多と思われるような集積ができあがります。このように、対象選択に関するかぎり、社会学ほど自由な学問は、まずないでしょう。この「自由さ」に惹かれて、昔も今も、多くの学生が社会学を志望して来ます。
 たとえば政治学なら、上の(3)(6)ぐらいしか対象にならないでしょう。自由度がより小さい。これはもちろん価値判断ではありません。政治学は社会学とちがって、はじめから対象がよりはっきりしており、きびしく限定されているのです。その点、社会学はゆるやかであり、だらしないともいえる。学問には、主に固有の対象によって定義される「対象学」と、その点であいまいなものとがあるわけです。
 社会学はあいまいなほうに属するのですが、それでは学問としての固有性・独自性はいったいどこにあるのかといえば、社会学では、あらゆる社会現象を選択の対象とすることができるかわりに、選択の仕方そのものに一定の原則・約束・方法があり、それにもとづいて選択・抽出がなされます。対象と方法との関連がより密接不可分で、視点や方法によって対象性が規定されてくる。その意味で社会学は、対象学というよりは「方法学」としての性格が強いといえます。
 では、社会学の固有の視点とは何か。それは、社会現象をつねに人間・社会関係・集団のあり方や行為として解釈していくところにあります。あらゆる社会現象は、共通に「人と人」、「我と汝」、「個人と社会」の相互関係=集団の現象にほかならない。この側面に焦点をおいてあらゆる社会現象にアプローチするのが、社会学の固有性です。
 たとえば犯罪という現象をどうみるか。常識なら犯罪者の行動ですが、それは法律と裁判制度の枠のなかで判定されます。また、多くの防犯と警察との制度や組織や運動がある。また、正義と道徳をめぐる価値意識・世論、公序良俗などがある。それらを民衆が支えている。そういう構造枠組のなかで犯罪行為が定義されてくるわけです。だから、A社会が犯罪と定義する行動も、B社会では正義であったりするのも当然です。
 〔教育方針とカリキュラム〕 「社会学コース」の教育方針が、この学問の固有性から導き出されていることはいうまでもありません。それは、人間と社会を分析する社会学的認識方法の実践を通して社会に貢献できる有用な人材を育成し、世に送り出すことです。
 この目的を達成するために、カリキュラムを理論系と調査系の2本柱で総合的に構成しています。「理論なき調査は盲目であり、調査なき理論は死んでいる」という有名な言葉がありますが、理論と調査は互いに他を前提としあう車の両輪のような関係にあり、どちらも大切なことはいうまでもありません。
 理論系には、「人間行動学概論」「人間行動学基礎演習」(1年―標準履修年次。以下第1部の場合)、「社会学概論」「社会学史」(2年)、「社会学演習」(2〜3年を通し段階的に高度化)などがあります。聴講と読書と討論によって知識を増やし、問題意識を高めることができます。一方の調査系には「人間行動学データ解析法」(1〜2年)、「社会学研究法」(2年)、「社会学実習」(3年)などがあります。社会調査の方法を学び、街に出て実際にフィールドワークをします。
 以上は主として学科必修科目またはコース選択必修科目ですが、ほかに自由選択科目として、専任スタッフと非常勤講師によるさまざまな講読演習や特論・特講などがあります(多くは2〜4年の間に随時選択履修)。次項で紹介するように専任スタッフの研究領域はかなり多彩といえますが、それでも多様に専門分化している現代社会学の全領域をカバーすることは到底不可能です。そこで皆さんに社会学の豊饒な世界を少しでも多く知ってもらうために、他大学からも非常勤講師を招き、専門の講義をしていただきます。
 以上のコースをへて社会学的方法を身につける一方、自分の研究対象を選択・決定した上で、最終学年で「卒業論文」を作成します。
2 スタッフ
(理論社会学)
進藤 雄三教 授
(しんどう・ゆうぞう)
倫理社会学・医療社会学・家族社会学を専攻。現在の主な研究テーマは、ポストモダン論、医療専門職論、近代家族論研究。
石田佐恵子 助教授
(いした・さえこ)
文化社会学・現代文化研究・知識社会学を専攻。現在の主な研究テーマは、現代社会における文化領域の成立とその変容の研究。
(経験社会学)
谷  富夫 教 授
(たに・とみお)
都市社会学・民族関係論・宗教社会学を専攻。現在の主な研究テーマは、大都市圏の民族関係に関する地域研究・生活史研究。
土屋 礼子 助教授
(つちや・れいこ)
メディア論・歴史社会学を専攻。現在の主な研究テーマは、日本における大衆紙、大衆メディアおよび広告に関する研究。
(応用社会学)
木村 好美 講 師
(きむら・よしみ)
高齢者論・計量社会学を専攻。現在の主な研究テーマは、高齢者の意識・行動と社会階層の関係に関する研究。
3 コース決定に当たっての心構え
 1年次に受講できる社会学関連の科目は、共通教育・専門教育あわせてかなりの数があります。共通教育では、「現代文化の社会学」「組織と人間」「都市的世界の社会学」「現代社会学入門」「現代の社会問題」「家族と社会」「文化とコミュニケーション」(ただし、第1部・第2部で毎年の実際の開講科目は異なるので要注意)。これらを可能な限りすべて履修しておくことが望ましい。また、心理学・教育学・地理学、および政治学・経済学など隣接科学からの提供科目も、幅広く学んでおいてください。
 一方、専門教育では、先述の「人間行動学概論」「人間行動学基礎演習」などの学科必修科目があります。それから外国語については、英語はもちろん、大学院進学を考えている人はドイツ語かフランス語は必ず履修しておくこと。また、卒業後にどの分野に進むにせよ、アジア諸国の言語やロシア語は、将来きっと役に立つはずです。
 つぎに日頃の心構えとして、こんなことを試してみてはいかがでしょうか。現代社会を解読するキーワードとして、少なくとも「高齢化」「情報化」「国際化」「環境悪化」「個性化」の5つをあげることに異論はないでしょう。これらは、われわれの生活を根本から規定している不可抗・不可避の社会変動といえます。だから、社会学コースを志望する人は、これらのキーワードをいつも頭から離さないでおいてください。新聞で報道される日々の出来事はどれも、これらのキーワードと直接・間接にどこかで関連しているにちがいない。そこの関連づけを考えながら新聞を読む、いわば思考の自主トレが、いざ社会学を本格的に勉強する段になって必ず役立ちます。社会学の「分析方法」は進学したら教えますから、その対象である「社会現象」への関心を十分に高めて来てもらいたい。
 社会学コースの志望者は多く、文学部では毎年トップクラスです。多くの人が社会学を学んでくれることは、迎える側として無上の喜びではありますが、あまり多いと演習や実習の教育効果が上がらず、皆さんにとってもプラスになりません。上で示唆したような日々の勉学・思考を通して、本当に社会に興味をもった人が来てほしいと願っています。
 それに、冒頭で社会学が対象選択のきわめて自由な学問であることを述べましたが、これがかえってアダになる場合もあります。最終学年になっても何を卒論のテーマに選べばよいのかワカラナイという迷子状態です。このコースにさほど興味もないのに「まあ、とりあえず」といった調子でくると、〈自由ほど不自由なものはない〉という逆説の陥穽にはまってしまい、這い出すのに苦労します。
4 大学院
 卒業後も続けて社会学を研究したい人のために、大学院前期博士課程(修士課程)と後期博士課程に進む道が開かれています。現在の院生は、社会学史、社会学理論、家族研究、ジェンダー研究、社会問題、エスニシティ研究など、それぞれ自由にテーマを選んで研鑽に励んでいます。また近年の就職先としては、大学の教育・研究職に就いています。
5 卒業後の進出分野
 製造業、サービス業、公務員、教員、マスコミ関係、進学など、多種多様ですが、会社・官庁などに就職した場合、比較的多く担当する分野は、人事・労務・市場調査・広報公聴・企画開発といった部門が考えられます。これには社会学の方法、具体的には社会調査の知識と技術が関連しています。最近の卒業生の進路は、大学院進学、三井ホーム、毎日新聞、FM東京、リコー、読売旅行、西鉄エージェンシーなどでした。
6 最後にひとこと
 自分が社会学向きかどうかを知りたい人のために、ひとこと添えておきましょう。読書が好きな人、または好きになろうと努力している人、人間に対する興味・関心が旺盛な人、市民運動・ボランティア活動などに参加している人、または参加してみたいと思っている人―このうちどれか1つでもあてはまれば、あなたは社会学に向いています。

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