哲学・哲学史コース
1 本コースの研究内容、特色
 遠く古代ギリシアに起源を有する哲学は、人間の英知の集約として、西欧文化の根底を培ってきました。哲学は広く世界と人間に関わる一切の問題について、自由な理性的探究を行う学問です。知識や存在の根本的探究、自然や歴史についての原理的考察などがその営みを構成します。このような西洋哲学の達成を広く深く学びつつ、同時に現在の状況が生みだしている重要な哲学的諸問題にどのように応答すべきかを考えていくことが哲学に課せられた使命です。
 「哲学・哲学史コース」は、古代ギリシアより現代に至る西洋哲学の伝統を継承・発展させながら、哲学部門の基本的分野を学びます。それは、学問的な思考にとって不可欠な推論の原理について論じる論理学や、われわれが生きるこの世界とそこで人間存在が占める位置について論じる存在論、さらには世界についてのわれわれの知識の成り立ちと根拠について論じる認識論などです。
 それだけではなく、科学哲学・心の哲学・言語哲学・美学思想などの最先端の分野を学びつつ、今日の思想的状況に批判的に対応するための基礎を身につけます。科学哲学とは、科学の理論や説明とは何か、といった問題を通じて、科学的知識とは何であるかについて論じる分野です。心の哲学は、心の存在と認識について論じる分野ですが、心身問題や自己認識の問題がその中心です。言語哲学は、言語の意味や指示について論じながら、思考とは何か、真理とは何かについて考えます。そして、美学は、美的体験などの分析を通じて、芸術とは何か、美とは何かについて考える分野です。学生諸君は、これらの分野にふれることによって、各人の問題意識を深めることができるでしょう。
 本コースは、論理分析や言語分析を基礎とする現代英米の分析哲学を専門とするスタッフをそろえていることが他大学には見られない特色です。西洋哲学に関しては現有スタッフで大部分の領域をカバーしていますが、中世哲学やイスラムの哲学については現在は専門のスタッフがいません。しかし、どの時代、どの地域であれ、哲学の基本的なテーマについては十分な指導を行うことができますので、詳細はスタッフに相談してください。現代思想については、現有スタッフでカバーできない部分を毎年非常勤の先生を招いて補っています。
 本コースでの履修方法ですが、まず「人間文化基礎論」で文献の読み方やレポートの書き方などの基本的なことを学び、「人間文化概論」で歴史を含む思想・文化について広く学びます。「哲学概論」や「哲学史通論」をできるだけ早く受講することが大切です。「哲学概論」では、哲学の基本的な概念や基本的な問題について、知識、世界、心という三つの主題を通して学びます。「哲学史通論」では、古代より近世に至る西洋哲学思想の流れが概観されます。「哲学史通論I・II」はプラトンやアリストテレスなどの古代ギリシア哲学が中心で、「哲学史通論III・IV」はデカルトからヒュームを経てカントに至る近世ヨーロッパの哲学が中心です。「哲学史通論」はできるだけ重複履修して、さまざまな時代の思想にふれることが必要です。
 2回生では語学力を身につけることはもちろんですが、余裕があれば、「演習」科目をとるのがよいでしょう。「演習」では、哲学の基本的なテーマについて、比較的理解しやすいテキストを選び、哲学的な考え方やその筋道について学びます。
 3回生ではさらに「講読」をとり、哲学の原典の読解能力を身につけるように努めます。用いられる言語は主として英語ですが、受講生の能力に応じて、ドイツ語、フランス語も用いられます。
 こうして、4回生の初めまでには、自分自身の問題意識を身につけておくことが大切です。4回生では、自分の関心領域に近い「演習」「講読」や「特講」などの自由選択科目を選び、「卒業論文演習」を受けながら、「卒業論文」の作成に集中できるようにしたいものです。「卒業論文」の指導は、「倫理・宗教コース」のスタッフも共同して行われます。
 「卒業論文」は四年間の学習の総決算ですから、4回生の夏休みにはだいたいの構成ができあがっていなければなりません。夏休み明けにはそれぞれのテーマを専門とする教員の指導を受けて、細かな点を仕あげていくように心がけましょう。「卒業論文」のテーマとして標準的なものは、特定の哲学者(プラトン、デカルト、ヒューム、カントなど)の思想の研究か、あるいは特定のテーマ(認識論や心身問題など)を取りあげた研究です。
 「哲学・哲学史コース」では、「倫理・宗教コース」と共同で、学生相互や学生と教員との間の交流のための行事(学年はじめの新入生歓迎会や学年末の卒業生・修了生の予餞会など)を適宜行っています。また、大阪市立大学哲学懇話会を定期的に開催して、他大学とも研究交流を活発に行っています。
2 スタッフ
 スタッフは以下の5名ですが、「倫理・宗教コース」のスタッフも「哲学・哲学史コース」の一部の科目を担当しています。

(哲学・論理学)
中才 敏郎 教 授
(なかさい・としろう)
論理学を基本とする分析哲学の認識論、心身問題や人格の同一性などの心の哲学。「哲学概論」「哲学講読」などを担当。
(西洋哲学史)
塩出  彰 教 授
(しおで・あきら)
ソクラテス、プラトン、アリストテレスを中心とする古代ギリシア哲学および、古代ギリシア倫理思想。「哲学史通論」「哲学史講読」などを担当。
藪木 栄夫 教 授
(やぶき・ひでお)
形而上学批判、カント哲学の体系的研究、理性と自由。「哲学史通論」「現代思想講読」などを担当。
(美学)
高梨 友宏 助教授
(たかなし・ともひろ)
ドイツ美学、西田哲学の芸術論。「美学概論」「現代思想演習」などを担当。
3 コース決定に当たっての心構え
 哲学の諸問題は相互に深く関連し合い、したがって教員の研究領域も諸所で交錯し、問題の捉え方もさまざまです。したがって、履修科目をあまり小さく絞り込むことは好ましくありません。できるだけ幅広い教養を身につけておくことが、哲学研究にとって大切なことです。
 各人がそれぞれの問題意識をはぐくむことは不可欠ですが、できるだけ「倫理学概論」などの倫理・宗教コース提供の科目も受講し、思考の裾野を広げる必要があります。自分の問題意識が大きな枠組みのなかでどのように位置づけられるかを理解することによって、問題へのアプローチが容易になるだけではなく、自分の将来の課題を見極めることも可能になるからです。
 特定の哲学者について研究するにしても、問題中心に研究するにしても、先人の業績から多くを学ばなければなりません。そのために原典を読むことが不可欠ですから、英・独・仏のうち2カ国語を学習しておくことが望まれます。また、哲学をより深く学ぶにはギリシア語・ラテン語の学習が有益です。とくに、古代ギリシアの哲学について学びたいと思う諸君はギリシア語をできるだけ早い時期に学習しておく必要がありますし、近世初期の哲学者にはラテン語の著作が多いので、この時代の哲学を学ぼうとする諸君もラテン語を学んでおくことが有益です。
 哲学はこれまで多くの学問を生み、育ててきましたし、今も生み出している創造的な学問です。哲学に関係のない学問はほとんどないと言ってよいでしょう。それだけに哲学のアプローチの仕方も多種多様です。基礎をしっかりと身につけた上で自分の問題意識を深めることが何よりも肝要です。
4 大学院
 哲学歴史学専攻に哲学専門分野(専修)として、前期博士課程、後期博士課程が置かれています。前期博士課程では二年間の間に多くの科目をとり、修士論文を書かねばならないので、たいへん忙しいのですが、明確な問題意識さえあれば、充実した研究生活を送ることができるでしょう。後期博士課程では、修士論文の成果をふまえながら、さらに研究を積み重ねたあとで博士論文を書くことが求められます。また、欧米の大学院に留学して学位を取得することも選択肢の一つです。
5 卒業後の進出分野
 先輩の多くは、教員、公務員に進出していますが、一般会社へ就職する人も少なくありません。哲学を一生の仕事とすることは決して容易ではありませんが、本人の努力次第では大学院へと進学し、研究者として自立する道も開かれています。さまざまな大学で活躍している先輩がたくさんいます。
6 メッセージなど
 「なぜ」という疑問を持つことが学問の、とりわけ哲学の第一歩です。疑問を直接ぶつける積極的な姿勢で授業に臨んでほしいと思います。また、各スタッフがオフィス・アワーを設けていますから、それを積極的に活用して、気軽に研究室をノックしてください。哲学は幅も奥も深い学問ですから、万巻の書を読み、千里の道を行く気概がなくてはなりません。読書が好きで、ものを考えるのが好きな人、世界と自分について多くの疑問を持っている人、こういう人々を「哲学・哲学史コース」は歓迎します。

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