地理学コース
1 本コースの研究内容、特色
 地理学は人間の生活する地表面の「空間」や「景観」のなりたちとしくみを研究する学問です。地表面に立地する家、道路、耕地、工場、その他の人間活動の諸施設などからなる「空間」や「景観」は、人間が生きるために長い年月かかって形成してきた構築物であり、その形成過程において、経済・社会・文化・政治あるいは自然などの状況と深いつながりをもっています。また、できあがった「空間」や「景観」は、人間の行動に際して「環境」として影響を及ぼします。それゆえ、人間の空間知覚や景観イメージも地理学の研究対象領域です。
 大阪およびその周辺における自然・人文各分野にわたるさまざまな事象に対する研究の蓄積は本コースの伝統であり、『アジアと大阪』(古今書院刊)の出版をはじめ、雑誌『空間・社会・地理思想』の定期刊行など、これまで数々の成果をあげています。また、海外研究についてもアジア、ヨーロッパ、アメリカ、などで現地調査に携わった経験を持つ専任スタッフを擁し、国際的な広がりを持った授業が展開されています。
 しかしながら、地理学は非常に広範にわたる事象を研究対象としていますので、専任スタッフのみですべての分野をカバーすることは困難です。それゆえ毎年数人の非常勤の先生方に出講をお願いし、専任スタッフの専門分野以外の諸分野をカバーし、在学中に地理学研究の懐の深さを理解できるようにつとめています。さらに、卒業論文などで必要な場合には、国内・海外の研究者を適宜紹介しています。
 広範な地理学の諸分野を見通すために、「経済・都市」「景観・文化・社会」「地理情報」の3つの専門領域を学習の基本軸として設定し、さらに経済・社会・文化・政治・自然など、人間の生活と行動に関わるさまざまの要素を幅広く知るためのカリキュラムが用意されています。
 1回生の「人間行動学概論」「人間行動学基礎演習」は、人間行動学科の学問に対する基本的な考え方と各コースの学問の基礎的手法を身につけることを目的としています。
 2回生(2部は2、3回生)では、「地理学概論I・II」「地誌学I・II」で地理学・地域研究の特質を学ぶとともに、「地理学講読演習」で外国語論文の読み方と専門用語についての知見を深め、「地理学総合実験演習I・II」「地理学野外調査実習」を通じてインドア・ワーク(室内での地形図・空中写真などの読図と計測、コンピュータを用いた情報処理技術)とフィールド・ワーク(数日間にわたる野外での計測・資料収集・インタビューなど)の訓練を受けます。また、「地図学」では地図の発達史や測量技術の基礎を、「自然地理学」では地形・気候・植生・陸水などに関する研究の課題と方法とを学びます。
 3回生(2部は3、4回生)では、「地理学演習」によって地理学界の最先端の研究動向と研究方法とを国内・海外の文献を通じてまなぶとともに、各自が関心を持っている研究テーマに即して報告を行い、その内容を全員で議論します。また、「地理情報論」「経済地理論」「社会地理論」「文化地理論」および「特講」については毎年数科目が提供されますが、非常勤の先生方による講義も少なくないので、2回生以上の方は学年を問わず積極的に受講してください。
 4回生は「卒業論文」の作成が中心となりますが、本コースでは専門領域別にみっちりときめ細かな「卒業論文演習」を実施しています。
 さらに、授業以外でも「巡検」を実施しています。「巡検」は、コースに所属する教員・大学院生・学部学生がキャンパスを離れて実際に「地域」や「景観」を観察し、現地でディスカッションを行うもので、地形図の読図力や野外観察の眼を養うことを目的としています。巡検の際には、3回生(2部は3、4回生)があらかじめ見学予定地に関する資料集を作成し、現地での情報収集や観察が効率よく行えるよう準備しています。
 とくに野外調査による観察とデータ収集の重視は、本学「地理学コース」の創設期以来の伝統的特色といえます。近年発達のめざましい情報処理技術についても、最新のデジタル・マッピング、地理情報システム(GIS)設備、地図室などを擁しています。地理学コースには、情報処理室、製図室、情報資料室など、教材・測定設備・コンピュータを備えた実習室と大学院・学部学生の指導室(各1室)があります。
 また、常に学界の最新の研究動向と研究技術を教育の中にとり入れるよう心がけ、少人数クラスによる演習、実習でみっちりと実力を養うことを目ざしています。
2 スタッフ
(経済・都市)
富田 和昭 教 授
(とみた・かずあき)
東京圏や京阪神圏など大都市地域を対象とした都市経済地理学、情報サービス業などの第3次産業の経済地理学。
大場 茂明 助教授
(おおば・しげあき)
土地・住宅政策、都市開発・再開発事業を中心とする日本・ドイツにおける都市政策の比較研究(各地域における居住形態の比較、町並み保存事業の展開等を含む)。
(景観・文化)
山野 正彦 教 授
(やまの・まさひこ)
景観論を中心とした地理学史・地理学方法論の研究、モンスーンアジアの伝統文化、現代都市文化の景観論的考察。
(社会・政治)
水内 俊雄 教 授
(みずうち・としお)
都市の社会問題・住宅問題の現状や歴史的経緯についての政治・社会地理学的研究。
山崎 孝史 助教授
(やまざき・たかし)
グローバルな政治経済的変動とローカルな社会運動に関する政治・社会地理学的研究。
3 コース決定に当たっての心構え
 野外観察の眼の養成やデータの計量処理・地図化の技術をはじめ、すぐれた外国語能力、総合的な思考力など、地理学を学ぶために必要とされる能力は多岐にわたっています。それゆえ外部の世界に目を見張って、物事を具体的に考え、広範なトレーニングに意欲的に取り組むことのできる好奇心を持った活力の旺盛な人に向いているといえましょう。地道な学習を積み重ねれば、卒業時には国際化・情報化時代にふさわしい能力を獲得することが期待できます。
 1回生では学科共通科目を受講して人間行動学の基礎を学ぶとともに、なるべく幅広く全学共通科目を受講するように心がけてください。そうした授業を通じて身につけた知識は、間口の広い地理学を学ぶ際に必ず役に立ちます。
 また、外国語は少なくとも英語の能力を磨くことが必要です。なぜなら、学界の最新の研究動向を知るには情報発信量の圧倒的に多い英語文献の読解力が前提となるからです。この他、特定の地域や文化を研究したいと考えている人は、その地域の言語になるべく早く親しむことが望まれます。本コースの卒業生の中には、留学の機会に現地でのフィールドワークを行い、卒業論文を作成した人もいます。なお2部のみなさんは、コース提供の専門科目が2年に1度しか提供されませんので、あらかじめ履修計画をたてて受講するように心がけてください(「地理学概論I・II」「地誌学I・II」は毎年提供されます)。
4 大学院
 研究目標を次第に集約しつつある、意欲的な人の入学を期待しています。地理学専門分野(専修)では、前期博士課程については、9月と2月の年2回入学試験を実施しています。前期博士課程修了後、行政官庁、高校教員や地域計画コンサルタントへ就職したケースもあり、引き続き後期博士課程に進学する者も数多くいます。後期博士課程の修了者のうち、すでに30名以上が大学等の研究職につき、学界で広く活躍して実績をあげています。
5 卒業後の進出分野
 かつては卒業生の多くが高校などの教員となっていましたが、近年は官庁や会社の実務の分野などに進出し活躍する者が多くなっています。なかには、地理学の専門知識や地図作成技術あるいはコンピュータ処理能力などを買われて、旅行業、地図・写真測量会社、都市計画・地域計画コンサルタント、気象調査会社、外国商社などに就職する者もいます。
6 メッセージなど
 本コース専攻を希望している人、考慮している人は、学部学生・大学院生・教員が常時詰めている地理学情報資料室 (文学部増築棟3階)に気軽に来室して、見学したりいろいろな相談をもちかけてください。

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