フランス言語文化コース
1 本コースの研究内容、特色
【「いかに生きるか」がキーワード】
「アール・ド・ヴィーヴル(生きる術)」という言葉ほど、フランス人の関心のありようを端的に言い表したものはありません。二度とない人生をよりよく生きること、そのための技をみがき、洗練された知性と感覚を身につけること。自己と他者との関係を明哲なまなざしをもって眺め、己の情熱や欲望などにからむ、心理の動きを鋭く追及し分析すること。これらが、フランス言語文化学の主要なテーマです。しかも、それらが、世界でもっとも明晰な言語であるとされる、フランス語によって表現されているがゆえに、普遍性を持っている点に、大きな特徴があると言えましょう。
【西洋的な「愛」の源はフランスにあり】
「いかに生きるか」という問題は、とうぜん、「いかに愛するか」ということにもつながってくるでしょう。たとえば、「愛」という概念ひとつとっても、十二世紀の南フランスで生まれ、それが北方へとひろがってゆき、長く西洋の伝統の中で育まれ継承されてきたものです。わが国でも近代以降、国際化の流れの中で大いなる関心の的になっています。
【人間ウォッチングのバイブル=フランス文学】
以上のような例から見ても、フランス的な思考の特徴は、人間とその営みへの強い好奇心に支えられていることが分かります。そうした人間についての観察は、人々が生きる社会や時代背景への考察にもつながってゆきます。とりわけ、フランス言語文化の代表的なジャンルであるフランス文学が、ひろく哲学・思想をはじめとして、社会学・心理学・精神医学や歴史学などの分野をも、いちはやく自らの範疇に取り込んできたことは、よく知られています。
【文化大国フランス】
人間の営みが最も端的な形で現れるのは、文学とならんで、文化というレヴェルにおいてではないでしょうか。演劇・映画・美術をはじめとし、モードや都市問題といったテーマにいたるまで、フランスが世界の文化をリードしてきたことは疑う余地がありません。確かに、フランスでは政府自体が、アメリカ・日本などの追従を許さないほど莫大な予算を、文化関係につぎ込み熱意を見せているのは、うらやましい限りです。しかも、料理は言うに及ばず、香水やコスメティックにいたるまでもが、重要な文的要素として認識され、研究の対象になるような国は他にはないと思われます。したがって、フランス言語文化コースでは、こうした分野も講義・演習の対象とされます。極端な言い方をすれば、ここではサブ・カルチャーなどという概念は存在しないのです。それほど、あらゆる文化的要素が対等に論じられるということです。
【ユニヴァーサルなフランス語学】
古くルネッサンスの時代以来、いかにフランス語を豊かで洗練されたものにするかという問題に、フランス人達は心血を注いできました。やがてフランス語は、ヨーロッパ各国の王室において必須の教養語であるばかりでなく、欧州全体の共通語にもなったわけですが、その理由のひとつはもちろんそこにあります。ですから、古代ローマの言語・ラテン語の娘であり、イタリア語、スペイン語などの姉妹であるフランス語を研究することは、ヨーロッパの歴史をたどりなおすと同時に、言語の普遍的特徴や、人間の心理・社会を追及することにもなるのです。とりわけ「人間」と「普遍」の関心の深さは、近代言語学の祖・ソシュールや、現代ホットなフォーコニエのメンタルスペース理論やスペルベルの関連性理論を産み出す土壌となりました。
2 スタッフ
 本コースのスタッフは、幅広い時代と分野にまたがって、いかなるテーマにも対応できる体制を整えています。フランス人の専任教授もいますから、語学的な疑問も容易に解決することができます。
(フランス言語学)
福島 祥行 助教授
(ふくしま・よしゆき)
認識機能からみた言語とコミュニケーションの研究、およびマルチメディア機器を用いた仏語教育法の研究が専門ですが、他方でパソコンの権威、役者にして劇作家という一面もあります。
(フランス文学)
小西 嘉幸 教 授
(こにし・よしゆき)
ジャン・ジャック・ルソーを中心とした18世紀の文学・思想・芸術理論の研究が専門ですが、現代の文学批評や映画にも関心が強く、最近はパソコン学を極めつつあります。
津川 廣行 教 授
(つがわ・ひろゆき)
ジイド、ヴァレリー、プルースト、クローデルを中心とした20世紀 の小説および思想の研究が専門ですが、最近は趣味が高じてフランス音楽史の研究にも取り組んでいます。
中島 廣子 教 授
(なかじま・ひろこ)
19世紀から20世紀初頭にいたる転換期の幻想文学・文化の研究が専門ですが、モードからSF小説まで、想像力の産物を文化史的に幅広く捉えようとしています。
(フランス言語文化)
ピエール・ラヴェル 教 授
ガスコン生まれといえば生粋のフランス人の異名ですが、そのガスコン魂をもちながら日本の近代史を研究している、エスプリある異色のフランス人です。
日仏比較文化論・南仏言語文化論を担当。
3 コース決定に当たっての心構え
 皆さんが、よく質問される事柄について、あらかじめお答えしておきましょう。
Q:一回生のフランス語の成績が優秀でないと、フランス言語文化コースでは、ついてゆけませんか?
A:いいえ、そんなことはありません。二回生になると、専門コースの授業があり、共通教育の場以外でも、フランス語に接する時間が圧倒的に多くなってきます。語学力習得は学習時間に比例するといわれますが、じっさい、積極的に授業に参加していれば、いつのまにか身についてくるようになり、四年間でかなりの語学力が養われることになります。
Q:語学検定の資格をとりたいのですが・・・
A:フランス語には、英検に当たるような、フランス語検定試験(仏検)という制度があります。げんに、この試験にチャレンジする学生も多いですね。なんといっても、英語以外にもうひとつ外国語が出来ることが、グローバル化の時代には、重要な武器になりますから。
Q:フランスに留学したいのですが・・・
A:フランス関係の公的機関がサポートする語学留学の制度が複数にあり、長期休暇を利用し、研修を受けるケースも、年々、多くなっています。語学の上達のみならず、大人の文化を大切にする風土に身を置くことで、自分の生き方について真剣に考える機会を得、自立精神も芽生えるようです。
4 大学院
 前期(2年)、後期(3年)の博士課程が設けられていて、修了者の多くは研究・教育職に就いています。
5 卒業後の進出分野
 これまで、マスコミ、教職、商社、デパート、銀行、アパレル、料理関係、コスメティック関係、官公庁、IT関連企業、一般企業など、多方面に渡っています。英語のほかにフランス語を知っているメリットを生かして、独自の活路を開くことも可能でしょう。
6 メッセージなど
 本コースの卒業生からのメッセージに、ぜひ耳を傾けていただきましょう。
 「リヨン郊外にある、辻調グループ・フランス校での勤務をへて、現在、私は辻静雄料理教育研究所で、料理の本を作ったり、料理やワインの本を翻訳する仕事に携わっています。芸術や文学に対すると同じ情熱を傾けて、料理を、ワインを語る、それがフランス人です。ワインを愛でる言葉の多彩さには圧倒されるばかりです。大学の教室でおずおずとアベセから始め、なんとかマイペースで続けてきたフランス語、こんなに豊かな言葉の世界との出会いをもたらしてくれたフランス語に感謝しています。」
   (辻調理師専門学校・辻静雄料理教育研究所    主任研究員 八木尚子)
 「私が学生だったころ、海外旅行や留学が今ほどポピュラーではなく、言葉を学ぶことによって、異国の文化の香りにいくらかでも触れたいという強い欲求があり、そのあとは自分の想像力でまだ見ぬ世界に思いを馳せていたという感じです。その後、仏文でいろいろなフランスの作家のテクストにアプローチする方法も学びましたが、結局、文学というのは人間の研究なので、教室の外でもどれだけ本を読み、どれだけ豊かな経験を生きられるかということなのだと思いました。卒業後、流通業界に就職し、その会社がパリに支店を持っていたので、一年間、派遣していただきました。その後、退職して、ボルドー大学に留学し、今はルイ・ヴィトンのお店に勤務しています。外国暮らしはいろいろと苦労も多いですが、好奇心を捨てない限り、宝の山にいるのと同じだともいえます。学生時代、想像しかできなかったものに、じかに触れられる、自分のものにできる、それについて語り合える・・・私にとって、学生時代のあの自由な仏文の日々が、今の精神生活の豊かさの基礎を作ってくれたような気がします。
 皆さんも好奇心を持ち続けて、いろいろチャレンジしてみてください。そして、真に豊かな人生をおくられますように。」
   (仏検1級、パリ商工会議所商業フランス語認定証、     ボルドー大学 フランス語教授法認定証、等取得。              ボルドー在住、ブシャール・竹鼻葉子)

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