大阪市立大学大学院文学研究科日本史研究室

教員について

経歴

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岸本 直文(きしもと なおふみ)

1964年3月22日生

大阪市立大学大学院文学研究科 准教授

  • 1990年3月 京都大学大学院文学研究科修士課程修了
  • 1991年3月 京都大学大学院文学研究科博士課程退学
  • 1991年4月 奈良国立文化財研究所文部技官
  • 1996年4月 文化庁文化財保護部記念物課文部技官
  • 1999年7月 文化庁文化財保護部記念物課文化財調査官
  • 2000年4月 大阪市立大学文学部助教授
  • 2001年4月 大阪市立大学文学研究科助教授

研究

主な研究テーマ

古墳時代の研究。現在は、畿内と各地の古墳群について、前方後円墳の形態分析を通じて、古墳時代における政治的な動向を探ることを目指している。

学会・研究会活動

  • 考古学研究会(常任委員:平成元年度~平成7年度)
  • 大阪歴史学会(企画委員長:04年06月~)
  • 条里制・古代都市研究会(評議員)

主要業績

  • 編著
    • 『玉手山7号墳の研究』〈大阪市立大学考古学研究報告〉第1冊(共編、大阪市立大学日本史研究室、2004年3月)
    • 『桜井茶臼山古墳の研究』〈大阪市立大学考古学研究報告〉第2冊(共編、大阪市立大学日本史研究室、2005年3月)
    • 『メスリ山古墳の研究』〈大阪市立大学考古学研究報告〉第3冊(共編、大阪市立大学日本史研究室、2008年7月)
    • 『大阪府柏原市 玉手山3号墳の発掘調査概報』(編著、大阪市立大学日本史研究室、2010年6月)
    • 『史跡で読む日本の歴史2 古墳の時代』(編著、吉川弘文館、2010年7月)
  • 主要論文
    • 「丁瓢塚古墳測量調査報告」(『史林』71巻6号、史学研究会、1988年11月)
    • 「三角縁神獣鏡製作の工人群」(『史林』72巻5号、史学研究会、1989年9月)
    • 「三角縁神獣鏡の製作技術についての一試論」(『権現山51号墳』、『権現山51号墳』刊行会、1991年3月)
    • 「前方後円墳築造規格の系列」(『考古学研究』第39巻第2号、考古学研究会、1992年9月)
    • 「7世紀北山城岩倉の瓦生産」(『岩倉古窯跡群』、京都大学考古学研究会、1992年9月)
    • 「三角縁神獣鏡研究の現状」(『季刊考古学』第43号、雄山閣出版、1993年5月)
    • 「三角縁神獣鏡の編年と前期古墳の新古」(『展望考古学』〈考古学研究会40周年記念論集〉、考古学研究会、1995年6月)
    • 「市庭古墳の復元」(『文化財論叢Ⅱ』〈奈良国立文化財研究所創立40周年記念論文集〉、奈良国立文化財研究所、1995年9月)
    • 「「陵墓」古墳研究の現状」(日本史研究会・京都民科歴史部会編『「陵墓」からみた日本史』青木書店、1995年11月)
    • 「雪野山古墳出土鏡群の諸問題」(『雪野山古墳の研究 考察編』八日市市教育委員会、1996年3月)
    • 「前方後円墳の築造規格」(『考古学による日本歴史5政治』雄山閣出版、1996年11月)
    • 「畿内大型前方後円墳の築造規格の再検討」(『大阪市立大学文学部紀要 人文研究』第52巻第2分冊、大阪市立大学、2000年12月)
    • 「前方後円墳研究の課題」(『市大日本史』第5号、大阪市立大学日本史学会、2002年5月)
    • 「前方後円墳の墳丘規模」(『大阪市立大学大学院文学研究科紀要 人文研究』第55巻、大阪市立大学大学院文学研究科、2004年3月)
    • 「行燈山型の前方後円墳」(『玉手山7号墳の研究』〈大阪市立大学考古学研究報告〉第1冊、大阪市立大学日本史研究室、2004年3月)
    • 「西求女塚出土の三角縁神獣鏡とその意義」(『西求女塚古墳発掘調査報告書』神戸市教育委員会、2004年3月)
    • 「桜井茶臼山古墳の歴史的意義」(『桜井茶臼山古墳の研究』〈大阪市立大学考古学研究報告〉第2冊、大阪市立大学日本史研究室、2005年3月)
    • 「玉手山古墳群の消長と政権交替」(『玉手山古墳群の研究Ⅴ―総括編―』柏原市教育委員会、2005年3月)
    • 「古墳時代における都市形成」(栄原永遠男編『大阪および日本の都市の歴史的発展』大阪市立大学都市文化研究センター、2006年2月)
    • 「前方後円墳の二系列と王権構造」(『ヒストリア』第208号、大阪歴史学会、2008年1月)
    • 「メスリ山古墳と政祭分権王制」(『メスリ山古墳の研究』〈大阪市立大学考古学研究報告〉第3冊、大阪市立大学日本史研究室、2008年7月)
    • 「倭における国家形成と伽耶」(『釜山大学考古学科創設20周年記念論文集』2010年2月)
    • 「横穴式石室の型式は被葬者の活躍期を示す」(『考古学研究』第58巻第1号、1   1年6月)
    • 「河内大塚山古墳の基礎的検討」(『ヒストリア』第228号、大阪歴史学会、11   年10月)
    • 「古墳編年と時期区分」(『古墳時代の考古学1古墳時代史の枠組み』同成社、   11年12月)
  • その他
    • 『椿井大塚山古墳と三角縁神獣鏡』〈京都大学文学部博物館図録〉(共編)(京都大学文学部、1989年4月)
    • 『岩倉古窯跡群』(共編)(京都大学考古学研究会、1992年9月)
    • 「平城宮東院地区出土の埴輪窯」(『平城宮跡発掘調査部発掘調査概報 1993年度』奈良国立文化財研究所、1994年5月)
    • 「中国における秦漢代の瓦調査」(『奈良国立文化財研究所年報1994』、奈良国立文化財研究所、1994年10月
    • 「瓦磚類」(『平城京左京二条二坊・三条二坊発掘調査報告』〈奈良国立文化財研究所学報〉第54冊、奈良国立文化財研究所、1995年3月)
    • 『平城宮跡資料館図録』(単編)(奈良国立文化財研究所、1995年5月)『平城京・藤原京出土軒瓦型式一覧』(単編)(奈良国立文化財研究所、1996年3月)
    • 「埋蔵文化財関係統計資料(平成十年度版)の解説と分析」(『月刊文化財』427号、第一法規出版、1999年4月)
    • 『シンポジウム三角縁神獣鏡』(学生社、2003年5月)
    • 『前方後円墳の築造規格からみた古墳時代の政治的変動の研究』〈平成13-16年度科学研究費補助金(基盤研究B)研究成果報告書〉(単編)(大阪市立大学大学院文学研究科、2005年5月)
    • 「大阪市立大学の難波宮「出土第一号」瓦」(『市大日本史』第14号、11年5月)
    • 「日本史研究室だより」/「編集後記」(『市大日本史』第14号、前掲)
    • 「宮内庁書陵部との懇談会2011」(『ヒストリア』第227号、大阪歴史学会、11年8月)
    • 『津堂城山古墳のレーザー測量』〈住考研リーフレット〉№3、11年8月
    • 「根来寺旧境内遺跡はこのままでいいのか」(『考古学研究』第58巻第2号、11年9月)
    • 「根来寺旧境内遺跡の保存要望その後」(『ヒストリア』第228号、11年10月)
    • 『神明山古墳の測量調査』〈住考研リーフレット〉№4、12年1月
    • 「根来寺遺跡の保存再要望書の提出」(『ヒストリア』第230号、大阪歴史学会、12年2月)
    • 「郡山新木山古墳発掘調査の見学会ほか」(『ヒストリア』第230号、共著、前掲)
    • 「丹後の大型古墳―4世紀後半の半島派兵をめぐって―」(丹後建国1300年事業・網野銚子山古墳追加指定記念シンポジウム《丹後2大古墳と古代タニワ》京丹後市教育委員会、12年3月)
  • 研究報告
    1992.04.26 前方後円墳築造規格の系列 考古学研究会 第38回大会
    1994.08.07 三角縁神獣鏡と古墳の新古 第36回埋蔵文化財研究集会
    1994.12.10 考古学からみた「陵墓」研究の現状 シンポジウム陵墓からみた日本史
    1995.08.19 前期巨大前方後円墳の築造規格 第38回埋蔵文化財研究集会
    2000.12.16-17 シンポジウム三角縁神獣鏡
    2001.03.17 玉手山7号墳の測量調査 第11回玉手山古墳群研究会
    2001.05.19 前方後円墳研究の課題 大阪市立大学日本史学会第4回大会
    2001.11.04 玉手山7号墳の発掘調査 第〓回玉手山古墳群研究会
    2002.09.28 玉手山7号墳の発掘調査2002 玉手山古墳群研究会
    2002.12.15 三角縁神獣鏡とヤマト政権 シンポジウム前期古墳を考える~長柄・桜山の地から~(逗子市教育委員会・葉山町教育委員会主催)
    2003.04.02 和泉郡の考古学に関する基礎的検討 古代和泉郡プロジェクト研究会
    2003.06.07 前方後円墳研究の課題と紫金山古墳 第3回紫金山古墳研究会
    2004.01.31 前方後円墳の墳丘規模 第126回考古学研究会関西例会
    2004.11.〓 釜山における歴史遺産の保護と活用 大阪市立大学文学研究科COE-A第2回ミニシンポジウム《歴史遺産と都市文化創造II》
    2006 古墳時代における都市形成 大阪市立大学文学研究科COEプログラム・重点研究・大阪LAプロジェクト共催シンポジウム《大阪および日本の都市の歴史的発展》
    2006.09.13 築造規格の複数系列が意味するもの 科学研究費補助金基盤研究B[前方後円墳ネットワークの情報処理的導出](研究代表者:大阪電気通信大学小沢一雅)研究ミーティング
    2006.09.15 3世紀の初期古墳と鏡 香芝市二上山博物館ふたかみ邪馬台国シンポジウム6《邪馬台国時代の阿波・讃岐・播磨と大和》
    2007.06.24 前方後円墳の2系列と王権構造 大阪歴史学会考古部会大会報告
    2007.12.08 考古学からみた集落の変遷と土地 大阪歴史科学協議会例会
    2010.12.22 五社神型の前方後円墳 考古学研究会岡山例会
    2011.1.22 百舌鳥・古市古墳群の世界的意義を考える 堺市第2回世界遺産講演会
    2011.3.20 倭王権の成立と桜井茶臼山古墳の被葬者像 よみうり天満橋文化センター特別考古学シンポジウム≪ヤマト政権はいかに邪馬台国を引き継いだか≫
    2011.4.17 「河内大塚山古墳の概要」 大阪歴史学会現地見学検討会《河内大塚山古墳と辛亥の変》
    2011.11.26 「五色塚古墳と半島派兵」 《発掘された明石の歴史展 明石の古墳》講演会
    2011.12.4 「池田谷の開発史―槇尾川の水利と谷山池築造―」 いずみの国歴史館《池田谷の歴史と開発》展 記念講演会
    2011.12.11 「丹後の大型古墳―4世紀後半の半島派兵をめぐって―」 丹後建国1300年事業・網野銚子山古墳追加指定記念シンポジウム《丹後2大古墳と古代タニワ》京丹後市教育委員会)
    2012.2.26 「古市・百舌鳥古墳群の終焉と継体擁立」 古代史フォーラム2012《百舌鳥・古市古墳群》

社会活動

地方自治体関係の委員

  • 小野市史編纂専門委員(92年~終了)
  • 新井三嶋谷墳丘墓委員会委員(00年05月~01年03月)
  • 椿井大塚山古墳保存活用計画策定委員会委員(00年07月~01年03月)
  • 持田古墳群整備委員会(01年01月~終了)
  • 落地飯坂遺跡調査委員会委員(02年10月~終了)
  • 闘鶏山古墳調査検討委員会(02年11月~終了)
  • 網野銚子山古墳整備委員会委員(02年11月~終了)
  • 武蔵府中熊野神社古墳調査検討委員会委員(02年11月~終了)
  • 播州葡萄園跡整備計画検討委員会(04年09月~終了)
  • 国宝高松塚恒久保存対策検討会作業部会委員(04年12月~08年03月)
  • 京丹後市史跡整備検討委員会委員(05年1月~06年9月)
  • 武蔵府中熊野神社古墳保存活用検討委員会委員(05年4月~)
  • 城陽市史跡整備委員会委員(06年12月~08年12月)
  • 岸和田市文化財保護審議会委員(06年12月)
  • 高槻市史跡整備指導検討会委員
  • 網野銚子山古墳調査委員会委員(07年)
  • 人間文化研究機構国立歴史民俗博物館共同研究員
  • 百舌烏古墳群調査検討会議メンバー
  • 史跡造山古墳第5古墳保存整備委員会委員
  • 国史跡惠解山古墳保存・斐備委員会専門部会委員

教育

担当講義(2011年度)

【大学院】

考古学研究
  • 主題と目標

     修士論文の研究課題を決めていくことを意識し、各自の研究テーマに即して関連ある考古学的課題を設定し、先行研究についての理解を深める。

  • 内容・計画

     各自の研究テーマとしている時代や地域あるいは分野についての考古学研究について、先行研究の成果を学習し、どういった研究があるのか、どのよう な資料があるのか、研究上の課題は何かといった点を整理してもらう。その内容について参加者で討論し、そのなかから次回の発表について考えていく。

  • 受講生へのコメント

     修士論文を意識し、発表機会を生かして自分の研究を深めていくよう、意欲的に取り組んでほしい。

  • 参考文献・教材

     特になし。適宜、参考文献を示す。

考古学研究演習
  • 主題と目標

     考古学研究を承けて、各自の研究テーマに即して関連ある考古学的課題を設定し、研究発表を通じて、考古学的肉付けをすることを目標とする。

  • 内容・計画

     設定した考古学的課題について、関連する考古資料を取り上げ、関係する遺跡や遺物の先行研究に学びつつ、発掘調査報告書などを用いて独自に吟味し、研究発表を行う。その内容について参加者で討論し、そのなかから次回の発表について考えていく。3回の発表を予定している。

  • 受講生へのコメント

     修士論文を意識し、発表機会を生かして自分の研究を深めていくよう、意欲的に取り組んでほしい。

  • 参考文献・教材

     特になし。適宜、参考文献を示す。

日本史学総合研究Ⅰ
  • 主題と目標

     日本史学研究法の基礎を学び、考古学から古代・中世・近世・近現代にわたる日本史の総合的な研究遂行能力を養成することをめざす。

  • 内容・計画

     受講生各自が研究テーマの設定と研究計画を立案する基礎能力を獲得するため、担当教員が分担して考古学から古代・中世・近世・近現代にわたる各時 代・分野の研究状況について講ずる。その上で、受講生の関心にしたがっていくつかの研究テーマを設定し、それに関する専門書や学術論文の体系的かつ批判的 検討を行なう。

  • 受講生へのコメント

     具体的な履修方法については指導教員の指示に従うこと。

  • 参考文献・教材

     必要な資料はコピー等で配付する。参考文献は授業時間に指示する。

日本史学総合研究II
  • 主題と目標

     日本史学研究法を史料の点から論じ、考古学から古代・中世・近世・近現代にわたる日本史の基礎的な史料分析能力を養成することをめざす。

  • 内容・計画

     受講生が日本史の研究能力の基盤をなす史料分析能力を広く身につけるため、担当教員が分担して考古学から古代・中世・近世・近現代にわたる各時 代・分野の史資料の特徴について講ずる。その上で、受講生の関心を考慮して対象史料を選定し、具体例を通じて各時代・分野の歴史史料の調査・読解・分析の 基礎能力の高度化をはかる。

  • 受講生へのコメント

     日本史学総合研究Ⅰを履修していることが望ましい。

  • 参考文献・教材

     必要な資料はコピー等で配付する。参考文献は授業時間に指示する。

【学部】

[第1部]

人間文化基礎論Ib
  • 主題と目標

     大学で歴史学を学ぼうと考えている学生諸君を対象に、歴史にかかわる好きなテーマを選び、自ら既存文献を調べ、内容を把握し、他者に伝えるため資料を作成し、口頭発表してもらう。

  • 内容・計画

     テーマを自ら選ぶことがまず課題である。自分のいま抱いている関心を大切にすること。そして既存の文献を読んでみる。学術情報センターに所蔵され ている図書を検索し、多くの本に目を通し、重要なものにたどりついてほしい。自分の関心に答える書物をひもとき、調べ知ることの面白さを経験し、理解し認 識を深めるプロセスが大事である。そして、それを自分の言葉でまとめ表現してみよう。  自分の発表のみでなく、他者の発表への質疑も重視する。最終的には、発表に対する質問を考慮し、さらに調べた上で、レポートを提出する。第1回目に、何 を調べてみるかの意志表示をしてもらう。

  • 受講生へのコメント

     大学では自主的・自発的な学びが大切である。それに答える図書や情報源は、みなさんが求めれば必ずあるものです。文学部で専門に何を勉強したいの か、漠然とした関心からスタートして、それを探り突き詰めてみるきっかけとし、歴史を知ることの面白さを感じるとともに、歴史への興味関心がさらに深まる ことを期待する。

  • 参考文献・教材

     とくになし

考古学通論
  • 主題と目標

     古墳時代の考古学(続)
     前年度の古墳時代のはじまりから前半期(3・4世紀)までの展開に引き続き、今年度は古墳時代後半期である5・6世紀を取り上げ、古墳からうかがえる政治構造の変化とともに、外来文化を摂取し生活様式の上でも大きく変化を遂げる時代であることを示す。

  • 内容・計画

    1.古墳時代のはじまり
    2.古市・百舌鳥古墳群の時代
    3・4・5.5世紀の生活様式の変化と手工業生産(農具・須恵器・鉄)
    6・7.豪族居館と集落
    8.親族構造
    9.地域権力の従属(5世紀後半)
    10.横穴式石室
    11.今城塚の登場
    12.群集墳の成立
    13.中央集権化の進展と前方後円墳の終焉

  • 受講生へのコメント

     古墳と古墳群、集落跡や生産遺跡、そこから出土する遺物を通じて、古墳時代の社会がどのようなものであったのか、さまざまな材料から考えてみたい。

  • 参考文献・教材

     プリント配布。

考古学演習・考古学専門演習(第2部)
  • 主題と目標

     考古学を専攻しようとする者であるかないかを問わず、受講者の関心のある歴史のテーマに即して、考古学的な課題を設定し、先行研究から考古学の成果を学び、基本的知識を身につける。

  • 内容・計画

     第1回目において、各自の興味関心にもとづきテーマ設定と文献紹介を行う。2回目以降は、先行研究を調べ主要な論文を読み、咀嚼し整理・発表す る。その内容について参加者で討論し、そのなかから次回の発表について考えていく。これを重ねることで、テーマについての理解を深めるとともに、研究の現 状を把握し、自分なりの論点を見いだす。参加人数にもよるが、2~3回程度の発表を予定している。

  • 受講生へのコメント

     各自のテーマについては、相談の上決めていくが、日本・世界を問わないし、時代も自由である。また、設定が難しい場合は、論文をこちらが指定して論評をしてもらうことにする。考古学への関心の程度を問わず、多くの参加を望んでいる。

  • 参考文献・教材

     各自に対して事前に、次回の発表内容に対して参考文献を紹介する。

考古学実習
  • 主題と目標

     考古学の基本技術として、遺物実測の基本を習得する。

  • 内容・計画

     大学が保管する実物の石器・土器等の考古資料を観察・整理しながら触れるとともに、石器や土器の基本的な実測技術の訓練をおこなう。1)観察・ス ケッチ、2)磨製石器・打製石器、3)土器の破片実測、4)完形土器の実測、この順で2~3回ずつを予定している。また、発掘で出土した遺物の水洗いや注 記作業を経験してもらう。

  • 受講生へのコメント

     作業空間や道具類の数量、また実習という性格から、10名程度しか受け入れられない。また、進捗状況をそろえる必要があり、毎回の課題について、区切りのつくまで延長して仕上げてもらう。

  • 参考文献・教材

     必要なものは、適宜、プリントを配布。

考古学とは何でしょうか

考古学は教科書的な定義でいえば、昔の人々が残したいろいろなモノや活動のアトによって、歴史を明らかにする学問だ、ということです。

ですから、人類が登場し石器をつくりはじめた200万年前から、現在に近い過去までを扱います。日本の考古学で言えば、時代の新しいところでは、江戸時代の研究はかなり行われるようになっており、また明治以降の近代の考古学的な研究も始まっています。

人間の歴史を研究するわけですが、扱う資料が昔の人々が残したいろいろなモノや活動のアトであるということです。歴史を明らかにする歴史学、その代 表は文字資料(古文書)による研究(文献史学)ですが、考古学はそれとは異なる資料にもとづき過去を追究する歴史学の一分野ということです。

考古学が資料とする、過去の人々が生きてきたなかで形作ってきたもの、そのほとんどは地面のなかに埋もれてしまった状態にあるものです。もちろん、 法隆寺を筆頭に今でも現存する建築物もあるし、お寺に伝えられて現存する工芸品などもあり、それらも昔の人々の作り上げてきたものではありますが、考古学 の主たる資料は、遺跡とよばれる形で地面の中あるものとなります。

縦穴住居やら墓やら、それが、そこで使われた残された土器や石器、金属器・木製品その他とともに地中に眠っている遺跡、これを研究の素材として歴史を明らかにする学問、これが考古学です。

考古学の可能性

遺跡から歴史を復元する考古学、これは石器や住居跡が残されるようになって以後の、実にさまざまな人々の生活痕跡を扱います。

文字を書き残すようになるのは、世界の各地でも時代はかなり下ってからになるし、世界には、文字資料を残さなかった人々が広く存在していました。文字資料のない時代、民族あるいは地域、それは考古学でなければ明らかにできないのです。

また文字資料を残すようになった地域、たとえば日本でも、古いほど文字資料は少ないし、また支配者側の記録であって、書き記された地域や内容は、おのずから限られた範囲になります。文字資料が森羅万象、なんでも書いてあるというわけではないのです。

考古学は、人々の暮らしがあったところならどこでも、同じように扱えるのです。時代による資料の偏りや、地域による資料の偏り、人々の身分の違いに よる資料の偏り、といったものが、あまりないわけです。3万年前から、2000年前から、奈良時代から、鎌倉時代から、あるいは、メソポタミアでもアフリ カでも、シベリアでも南米でも、あるいは貴族でない普通のムラの暮らしぶりまでも、人間が生まれて生活し死んでいった暮らしのあったところ、どこでも扱い うるのです。 

考古学がオールマイティといっているのでは、もちろんありません。考古学の限界もまたあるわけです。実名のわかっている人物の家屋敷を調査すると いった場合をのぞいて、個人名が登場することはあまりありません、主として名もない集団を扱うことになります。また、考古学の資料は地中に眠っており、そ こから情報を引き出して語らせようとしても、文献資料のようには、なかなか具体的なできごとはわかりません。そうした難しさのある考古学、しかし、遺跡を 調査し、それによって考古学だからこそ明らかにできる歴史があるわけです。

考古学、それは歴史を明らかにする上で、古い部分を担当するというものではないことがわかっていただけたでしょうか。考古学は時代を問わず、文字史 料とは異なるモノや活動のアト、それらが残されている遺跡というものを扱い、それによって、こうした資料の特質から明らかにできる歴史を示すことができる わけです。

今日では、日本でいえば、奈良時代でも、平安時代でも、鎌倉でも、江戸でも、時代を問わず、総合的に歴史をとらえようとしています。文献史学、考古 学、歴史地理学、建築学、その他、その時代をトータルにとらえるには、それぞれの扱う資料からえられる成果を総合することで、より豊かな歴史像をとらえよ うということが目指されるようになってきています。