田中秀和
(第 1 部 4 回生)

リヨン日記



Le 10/06/2002
 今日は、夕食に困ったので、買い物がてら、Restaurant universitaire(要は学食。)に食べに行った。18時30分からオープンということだったので、ちょうどその時間にいった。しかし、人の気配がまったくない。どういうことかなと思ってのぞくと、中には従業員の人がいた。下で待っておけというジェスチャー。でも、もうとっくに時間はすぎているのだ。
 ああ、またフランスにやられた、とこのときは思った。それから19時近くまで待って、ようやく人が現れだした。みんな常連だから知っているのである。
 俺も19時からになってるんだなと予想できた。やっぱりそうだった。なんとか食事を済ますことが出来たが、ここでは情報を多く知っている人が勝つ。
 毎日きているというメキシコ人の友達にも会って聞いてみると、前は18時30分からちゃんと開いていたんだけど、今は19時からということだった。
 学食は、毎日メニューが違い、最初にトレーをとって、デザート、前菜(サラダ)、メイン、パンという順でとっていく。これでおなかは一杯になるけど、味はイマイチ。でもみんな2.40ユーロという値段で妥協しているようだ。それに、一人暮らしなどをしていると、どうしても野菜やくだもの、魚などの栄養が偏りがちだが、ここに定期的に通えばそれはいくらか解消される。とにかく、お金がなくて料理もきらいな学生にとってはありがたいところなのである。
 買い物にはバスを使って、Part - DieuにあるCentre comerciel(ショッピングセンター、でかい)にいった。いつもはメトロを使うのだが、それでは景色を見ることが出来ないので、これからはバスとトラムウェイ(路面電車)を極めることにしたのだ。トラムのほうは2つしか路線がなく、簡単だが、バスは、100近くの線があって、極めるのは相当大変である。今日も、反対方向の線に乗ってしまい、途中で気づいてあわてて引き返した。
 明日の朝はフランス戦。これは絶対に見なければ。もしフランスが決勝トーナメントにいけないなんていうことになると、フランスのワールドカップ熱は一気に冷めてしまう。日本が快進撃を演じてくれているのもいいのだが、ここはやっぱりフランスにも勝ってもらいたい。

Le 11/06/2002
 いやー、フランス。負けてしまいました。今日は朝から早起きして、フランス人たちと一緒に試合を見た。みんな文句を言いつつ、なんだかんだ言って結局はフランスの勝利を祈ってるという感じだった。試合が終わると、みんな「C'est fini. La coupe du monde…」と言って帰っていった。試合後のロジェ・ルメール監督のインタビューが印象的だった。まるでトルシエとは正反対(無理もないか。)。目はすこし潤み、かなり疲れた様子。そして、「私たちは、もっともっとこれから強くなるために育成をかさねていくつもりだ。」というようなことを語っていた。はやくも次のワールドカップに焦点をおいているのか、それとも、こうでも言っておかないともう収集がつかないのかはわからないが。
 フランス代表が決勝トーナメントに進むだろうということは、フランス国内はもちろん、世界中が予想したことである。しかし、実際には勝ち点1、得点に関しては0。そして最下位という結果に終わった。フランス国内では、さまざまな企業がスポンサーとして参加していた。テレビを見ても、代表の選手が出てくるCMがかなり多い。特にマルセル・デサイーとビシェンテ・リザラス。二人とも電話会社である。デサイーのほうは携帯電話。いつも携帯をもって常に最先端をいく、なんていうのがコンセプトで、デサイーが練習中も電話を片手にヘディングして監督に注意されているCM。今となってはしゃれにならないCMである。リザラスのほうは、これまたコメディーチックなもので、みんなが彼の家を訪ねるが、女の人の声のまねをして居留守を使うというもの。ワールドカップにでないといけないから友達と遊べないらしい。DFのル・ブフのCMはその名のとおり、牛肉の宣伝。ブフは牛という意味なのだ。あとは、アディダス。チーム全員が出ている。
 Carrefourという、ヨーロッパの大手のスーパーマーケットもフランス代表を全面的に押していたのだが、大誤算だったに違いない。俺もここで買い物をよくするのだが、ワールドカップ期間中だけ、限定のブルーズ袋が売られている。俺も買った。フランスでは、リサイクルが進んでいて、袋は家からカバンなんかを持ってくる人が多い。なので、袋を持ってきてないと、買わなければならないのだ。もちろん、もらえるところもあるけど、薄い。ここで言ってるブルーズ袋は結構丈夫なもの。いっぱい入れても破れない。でも、もうそれも誰も買わないだろうな。
 今日も練習があった。最近、練習でもよくボールが回ってくる。この前の大会で、もう完全に信頼は得たと言う感じがする。そうすると不思議なもので、今までの練習の成果が一気にボールタッチや判断力や運のよさになってあらわれてくるのである。あれ、俺、こんなプレーできたっけ?なんて思う瞬間もあるくらい。やっぱり、サッカーはメンタルなスポーツ。子供たちがのびのびとやっているのを見てもそう思う。ワールドカップを見ていても然り。
 なんかとてもプレッシャーがかかって、あんまり幸せそうな顔をしてないときって全然いいプレーができない。むしろ、笑顔でやったほうがスーパープレーが多く出るのが不思議なところだ。
 子供の話がでたが、フランスの子供は驚くほど上手くてしなやかだ。そして力強い。ドリブルがとても好きという印象。リフティングもいろんな技をもっている。大人顔負けのプレーをする子もたくさんいる。どこでもサッカーをやっている。道端でも、公園でも。ぼろぼろのボールで。もちろん、クラブチームでやっている子も多い。上手い子はたいていどこかのチームでやっている。俺のチームにも子供部門があるので、今度是非のぞいてみたいと思っている。

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