田中秀和
(第 1 部 4 回生)

リヨン日記



Le 11/05/2002
 一昨日と昨日のことについてまず書こう。最近、毎日サッカーをしている。Stade de Gerlendに毎日通っている。木曜は、背丈が180ほどで、俺よりも全然デカイ15才のキーパーに出会った。そして、延々シュート練習をやった(というかやらされた?)。「もっと強く、もっと強くいいシュートを撃て!!」と要求してくる。プロを目指してるだけあって、さすがにうまい。今はどこかのチームに入ってるそうだ。もちろん、フランスカップにも出場する。俺のシュートは、ペナルティエリアの外からだとはいえ、なかなか入らない。「Tu ne peut pas marquer !」なんて言ってくる。いいシュートが決まると、「今のはいいね! いつもそれを撃ってよ」。
 帰りながら、いろいろと話した。明日ももちろん来るんだろ?と言っていた。そうとうサッカーが好きな奴だった。チームに入るんだということも話した。だから、毎日練習するつもりだといことも。「僕も一緒だよ。」と言っていた。「サッカーをするには強くないとね。」帰ってから、筋トレだそうだ。
 金曜は、学校が終わってから、またスタジアムにいった。たまたま、試合をやっていたので、見た。オリンピック・リヨネ(Olympique de lyonnaise、フランスリーグ優勝)の15歳以下のチームと、もう一つ、どこかのクラブチームだった。リヨネのチームはかなり押されて、負けていた。でも、どちらもレベルがかなり高かった。そして、激しかった。この中に入っても、どれくらい出来るかわからんなあ、という感じだった。もちろん、みんな俺と同じくらいの大きさだった。そして、上手かった。
 ハーフタイムに、どこかでゲームをやってる人が、一緒にやらないかと誘ってきたので、参加した。日本では考えられないようなグランドが使い放題である。このときは、ちょうど、日本のテニスコートのような地面のサッカー場で。人工芝にちょっと砂が入っている。普通の靴だと滑るので、みんなスパイクだ。もちろん、ゴールもちゃんとある。
 ゲーム自体は、あまりレベルも高くなく、ただ、やっているという感じだった。僕には頑張ってやったらいけないのかなと思えるような雰囲気だった。こういうのが結構多い。やっぱり、本気でやらないとね。ああ、試合がしたいなあ。
 と、急にみんなが、終わりにしようと言い出した。あれ?と思ったら、向こうの方から赤い集団が。なんと、リヨネの選手たちだった。今度はちょっと体も出来ている人たちばかりが、フィールドを広く使ってボールを蹴りだした。トラップ、キックにほとんどミスがない。一体何が始まるのだろうと、ひとり残って見ていた。言うまでもなく、練習だった。おそらく、17歳以下のチームと、20歳くらいのチームが分かれて練習を開始した。それぞれにコーチ(監督)が一人。若い方のチームの監督は、トルシエにそっくりだった。しゃべり方も。練習内容は、どちらも日本のチームでもやるような内容だった。ただし、迫力が全然違う。もうほんとにプロの手前という感じ。とにかく、みんなミスがすくない。その中でもとりわけミスが少なく確実な選手が何人かいた。ああ、奴らがトップチームに上がっていくんだろうなあと思った。蹴れて、止めれるということは、当たり前のように全員が出来ることになっていた。さらに、どんな状況でもそれが確実に出来る奴がプロになる。試合形式に移ったとたんに、その差が出ていた。上手い奴は、スピードに乗っていても、うまく体をコントロールして、ボールを止めることが出来る。これは目に見える差であり、プロになる最低条件の1番目だろう。すべての種類のキックが正確で、しかもどんなボールでもコントロールできる。プレッシャーがない状況では、これは出来て当たり前の技術ということになってくる。それプラス、バランスを崩しているときでも同じ技術が発揮できる能力(練習量)が必要だ。
 この日、チームに入れるかどうか、スタジアムの事務所に聞きにいった。そしたら、ここはただグランドを提供するための場所で、登録は、Hotel de ville(市役所みたいなもの)に行けばできるという。
 そして、今日は、また、Gerlendに行ってサッカーをするつもり。宿題もあるんだけど・・・。今日はどんな奴がきてるかな。

Le 12/05/2002
 今日は、あいにくの雨である。今日からワードパットで書くことにしたが、ちゃんと読めるだろうか心配だ。さて、この週末は、天気が良くなかったので、サッカーは少しお休みにすることにした。とにかく、月曜に市役所に行ってみないと、話が始まらない。なんとしてもチームでプレーしたい。クラブチームでプレーするのは、初めてではあるが。どうなるかはやってみないとわからない。今、自分の中でかなり足りないと感じてるのは、キックの飛距離と、体の強さ・・・。 
 話は変わるが、リヨンのメトロ(地下鉄)は、パリとは違って、タダで乗ろうと思えば乗れる。一応自動改札機はあるにはあるのだが、日本のように、小さい扉のようなものもついてないし、人がみはっているわけでもない。だから、素通りすればいい。でも、たまにフランスの国鉄の社員(しかもかなり強そう)が20人くらいで車内に乗り込んでくることがあるのだ。そして、全員に対してチェックを開始する。それを目の当たりにした俺は、もう悪いことはやめようと思ったのだった。定期を買えば、学生は1ヶ月30ユーロほどで、バスもトラムウェイもメトロも乗り放題である。もし、チケットがないことがバレると、罰金300ユーロが課せられるらしい。俺が来た当初は、ストでメトロが止まっていた。バスもトラム(路面電車)も。タクシーしかなかったもの。

Le 16/05/2002
 今日は、チャンピオンリーグの決勝がテレビであった。サッカーの国フランスでは、日本では有料チャンネルでしか見れない試合も、民間のチャンネルで当たり前のように放送する。レアル・マドリッド(スペイン)対バイヤーレバークーゼン(ドイツ)。結果は2−1でレアル。ジダンがすごいゴールを決めていた。テレビが部屋にないので、テレビの部屋で見るのだが、いろんな人が見に来ている。サッカーがある日は必ずサッカーにチャンネルがあっている。他の番組が見たい人も、今日はサッカーかあ。しかたないな、とあきらめている。サッカーのチャンネルは変えることができないのだ。いくら、気が強いフランスの女の人でも、サッカーを変えようとはしない。最初は結構これに驚いた。俺にはとても好都合だけど。
 今日もチームに登録するために、市役所に行ってきた。でも、また、うまくいかなかった。明日に電話をしなければならない。予約をいれなければならないのだ。もしかして、グランドに直接行って交渉したほうが早いんじゃないかなと思えてきた。最近、グランドに行ってない。明日あたり行ってみて情報を集めないと。
 そうそう、ようやく、電話を部屋に引いた。もうすぐ自宅でのメール送信が可能になる。今までは学校のパソコンで送っていたので、日本語が打てなかった。インターネットの契約もしたので、その問題も解消される。ほんとにお待たせしました。
 ここでまた友達紹介。アレッサンドロというイタリア人とジョーというタイ人がまた新たに同じ語学学校に来た。彼らも同じ寮に住んでいる。アレッサンドロは、フランス語かイタリア語かわからないような独特のしゃべり方をする。というかそのしゃべり方しか出来ない。とっても早くしゃべる。そして常に巻き舌である。他の人はなかなか彼の言ってることがわからない。わかる自分がこわい。とにかく、とってもおもしろいやつだ。とにかくノリがいい。前にも書いたけど、やっぱりラテン系の人を侮ってはいけない。彼らの言語、例えば、フランス語やイタリア語やスペイン語はみんな兄弟で、とてもよく似ているのだ。単語や、文法にいたるまで、そっくりなのだそうだ。だから、変換するのはとても簡単。後は発音を直すだけ。
 僕らみたいに、まったく違う言葉を話す民族にとってはうらやましい限りだ。少々間違っていたって、なんとなく通じたりする。こっちからみたら、本当に不思議だ。日本人と中国人は全然通じ合えないのに。例え漢字が同じでも発音が全然違うんだから。本当に、日本人はアルファベットに弱い。
 ジョーは、タイの上流階級だ。考え方がすごくおおらかである。しゃべり方がこれまた面白い。英語とタイ語しか話せない。もう彼のものまねは完全にマスターした。おかげで、僕の英語力は確実に上がってきている(まわりの人曰く。)
 そんな感じで日々が過ぎていっています。ああ、全然、勉強できてない!

Retour
[表紙][文学研究科・文学部][大阪市立大学]