Undergraduate Faculty / Graduate School

Philosophy

https://www.lit.osaka-cu.ac.jp/phil/

遠く古代ギリシアに起源を有する哲学は、人間の英知の集約として、西欧文化の根底を培ってきました。哲学は広く世界と人間に関わる一切の問題について、自由な理性的探究を行う学問です。知識や存在についての根本的探究、倫理、宗教、芸術についての原理的考察などがその営みを構成します。このような西洋哲学の達成を広く深く学びつつ、同時に現在の状況が生みだしている重要な哲学的諸問題にどのように応答すべきかを考えていくことが哲学に課せられた使命です。

「哲学コース」では、古代ギリシアより現代に至る西洋哲学の歴史についての理解を基礎としつつ、まず哲学部門の基本的分野を学びます。それは、学問的な思考にとって不可欠な推論の原理について論じる論理学や、世界とそこで人間存在が占める位置について論じる存在論、さらには世界についてのわれわれの知識の成り立ちと根拠について論じる認識論などです。そのうえで、科学哲学・心の哲学・言語哲学など、哲学のなかの新しい分野についても学びます。

以上のような理論哲学的分野と並んで、「哲学コース」では、倫理学、宗教学、および美学という規範や価値に関わる実践哲学的分野についても学びます。倫理学は、正しい生き方とはどのようなものかという問題を中心に倫理(道徳)の本質や原理について考える理論的倫理学と、生命の技術的操作の是非など今日の具体的な倫理的問題について研究する応用倫理学から成ります。宗教学は、生と死の意味、神の存在といった宗教の根底を成すテーマについての哲学的研究とともに、世界の主要宗教の宗教思想などについても研究します。美学は、美的体験などの分析を通じて、芸術とは何か、美とは何かについて考える分野です。これら多様な分野の総合的学習を通して、今日の思想的状況に批判的に対応する基礎力が身につくことでしょう。

本コースは、西洋哲学に関して古代から現代哲学に至る主要な領域をカバーできるスタッフがそろっています。西洋哲学の基本的なテーマについては、どの時代、どの地域であれ、指導を行うことができますので、詳細はスタッフに相談してください。その他、現有スタッフでカバーできない領域、テーマについては、毎年非常勤の先生を招いて補っています。

本コースでの履修方法ですが、まず「人間文化基礎論」で文献の読み方やレポートの書き方などの基本的なことを学び、「人間文化概論」で歴史を含む思想・文化について広く学びます。「哲学概論」や「哲学史通論」をできるだけ早く受講することも大切です。

「哲学概論」では、哲学の基本的な概念や基本的な問題について、知識、世界、心という三つの主題を通して学びます。「哲学史通論」では、古代および近世の西洋哲学思想の流れを概観します。隔年で、プラトンやアリストテレスなどの古代ギリシア哲学を中心に講じる年と、デカルトからヒュームを経てカントに至る近世ヨーロッパの哲学を中心に講じる年とがあります。「哲学史通論」はできるだけ重複履修して、さまざまな時代の思想にふれることが望まれます。

2回生では「哲学概論」、「哲学史通論」をはじめとして「倫理学概論」、「宗教学概論」などの概論的科目を中心に履修するのがよいでしょう。3回生ではさらに哲学の原典の読解能力を身につけることができるように、できるだけ複数の「演習・講読」科目を履修することが望ましいことです。「演習・講読」では、哲学の基本的なテーマについて、比較的理解しやすいテキストを選び、哲学的な考え方やその筋道について学びます。用いられる言語は主として英語ですが、受講生の能力に応じて、ドイツ語、フランス語も用いられます。

こうして、4回生の初めまでには、自分自身の問題意識を身につけておくことが大切です。4回生では、自分の関心領域に近い「演習・講読」や「特講」などの自由選択科目を選び、「卒業論文演習」を受けながら、「卒業論文」の作成に集中できるようにしたいものです。

「卒業論文」は四年間の学習の総決算ですから、4回生の夏休みにはだいたいの構成ができあがっていなければなりません。夏休み明けにはそれぞれのテーマを専門とする教員の指導を受けて、細かな点を仕上げていくように心がけましょう。「卒業論文」のテーマとして標準的なものは、特定の哲学者について特定のテーマ(例えばプラトンの認識論やデカルトの心身問題など)を取り上げた研究です。

「哲学コース」では、学生相互や学生と教員との間の交流のための行事(学年始めの新入生歓迎会や学年末の卒業生・修了生の予餞会など)を適宜行っています。また、大阪市立大学哲学研究会を組織し、例会を定期的に開催して、他大学とも研究交流を活発に行っています。

スタッフ

仲原孝 教授 カントやニーチェ、ハイデガーなどの近現代ドイツ思想を中心とする哲学・宗教哲学の研究。「宗教学研究」などを担当。
高梨友宏 教授 カントを中心とするドイツ近代美学、現象学的美学、京都学派の芸術論等の研究。「美学研究」などを担当。
土屋貴志 准教授 倫理学、医療倫理学(現代医療に関する倫理的諸問題の研究)。「倫理学研究」などを担当。
佐金武 准教授 英語圏のいわゆる分析哲学の文脈において、現代時間論および関連する形而上学の諸問題を中心に研究。「哲学概論」などを担当。

コース決定にあたっての心構え

他の学問でもそうでしょうが、哲学を学ぶに際しても重要なことは、まず、哲学とはどのような問題をどのような仕方で研究する学問であるのかをできるだけ早く知ることです。そうして初めて、自分自身の問題関心が自分の選んだ(選ぼうとしている)学問領域の中でどのような位置を占めるのかが分かり、その結果、問題に正しくアプローチし、さらに自分の将来の課題を見極めることも可能になってくるものです。したがって、「哲学コース」を選ぶかどうかをこれから決めようとしている場合にも、またコース決定した後も、できるだけ幅広く本コースの提供科目を受講し、自分の知識と思考の裾野を広げる努力をすることが肝要です。自発的な読書によって視野を広げることも重要です。
哲学の専門的研究のためには、先人の業績を原典で読むことが不可欠です。ですから、英・独・仏のうち2か国語を予め学習しておくことが望まれます。また、より深い研究のためにはギリシア語・ラテン語の学習が有益です。

大学院

哲学歴史学専攻に哲学専門分野(専修)として、前期博士課程、後期博士課程が置かれています。前期博士課程では二年間の間に多くの科目をとり、修士論文を書かねばならないので、たいへん忙しいのですが、明確な問題意識さえあれば、充実した研究生活を送ることができるでしょう。後期博士課程では、修士論文の成果をふまえながら、さらに研究を積み重ねたあとで博士論文を書くことが求められます。また、欧米の大学院に留学することも選択肢の一つです。

卒業後の進出分野

先輩の多くは、教員、公務員に進出していますが、一般企業へ就職する人も少なくありません。哲学を一生の仕事とすることは決して容易ではありませんが、本人の努力次第では大学院へと進学し、研究者として自立する道も開かれています。さまざまな大学で活躍している先輩がたくさんいます。

メッセージ

「なぜ」という疑問を持つことが学問の、とりわけ哲学の第一歩です。疑問を直接ぶつける積極的な姿勢で授業に臨んでほしいと思います。哲学は幅も広く奥も深い学問ですから、万巻の書を読み、千里の道を行く気概がなくてはなりません。読書が好きで、ものを考えるのが好きな人、世界と自分について多くの疑問を持っている人、こういう人々を「哲学コース」は歓迎します。