学部・大学院

心理学コース

https://www.lit.osaka-cu.ac.jp/psy/

心理学は、多様で複雑な人間の営みを、心のはたらきという視点から解明することを目指す学問です。心のはたらきという目に見えない現象を、行動という客観的な指標を通して、科学的に明らかにしていくことを目的としています。

わたしたちの行動にかかわる心のはたらきは、多岐にわたっています。「心理学コース」では、生理、学習、認知、発達、社会、性格といった、心のはたらきのさまざまな側面について学びます。ただし、本コースでは、臨床心理学の分野で扱う問題(心の問題を抱えた人々に対する診断・治療など)については、研究・指導を行っていません(臨床心理学についての教育・研究は、生活科学部の発達臨床コースで行われています)が、将来、大学院あるいは社会において臨床心理にたずさわることを目指す人にとっても、本コースで心理学の基礎的な知識・方法を学ぶことは、とても有益であるといえましょう。

「心理学コース」の最も大きな特徴は、実験・調査・観察といった実証科学的な方法論に基づいて、心の法則を明らかにしていこうとする点にあります。そのため、研究方法に重点を置いたカリキュラムが組まれています。

「心理学コース」のカリキュラムの中心は実験演習です。本コースに進まれた皆さんは、まず2回生で、心理学の各分野の基本的課題について実験・調査を行う「心理学実験演習Ⅰ・Ⅱ」を履修します。引き続き3回生では、「心理学実験演習Ⅲ・Ⅳ」を履修し、皆さん自身の関心に基づいて研究テーマを選び、実験・調査を行ってレポートをまとめます。これらの集大成として、4回生で「卒業論文」を作成します。「卒業論文」の作成にあたって、指導教員によるきめこまかな指導に加えて、全教員・大学院生ならびに仲間たちからのアドバイスを受ける機会として「卒業論文指導会」を年3回開催しています。

実験演習と並行して、人間行動学科共通の科目として、2回生向けに「人間行動学データ解析法Ⅰ・Ⅱ」、34回生向けに「人間行動学データ解析法Ⅲ・Ⅳ」が開講されています。コンピュータを使った演習を通して、統計の基本を学び、種々のデータ解析手法を理解し習熟します。

また、上記「心理学実験演習Ⅲ・Ⅳ」では、授業の一環として、主として英語で書かれた心理学の論文を取りあげて、学術論文を正しく読みこなす力を養います。

講義科目としては、「心理学概論Ⅰ・Ⅱ」「心理学研究法Ⅰ・Ⅱ」を中心として、各種の「特論」「特講」が提供されています。「心理学概論Ⅰ・Ⅱ」は、心理学史および心理学の諸分野の概説を通して、心理学の全体像を理解してもらうための科目です。「心理学研究法Ⅰ・Ⅱ」では、心理事象の実証的研究に不可欠な方法論が解説されます。「特論」「特講」では、心理学の諸分野における特定の話題に焦点を当て、より深く掘り下げた内容の講義がなされます。

なお、通常のカリキュラムに加えて、それぞれの領域ごとに大学院生を交えた勉強会・研究会が随時開催されており、活発な議論が展開されています。

公認心理師資格については、ただ今、文部科学省と厚生労働省に申請中です。

スタッフ

山祐嗣 教授 認知心理学:思考と推論、認知と文化。
川邉光一 教授 生理心理学:心と身体(脳)・精神疾患、行動と薬物、学習・記憶を中心とした高次認知機能の脳内機構。
佐伯大輔 准教授 学習心理学:行動分析学、判断、意思決定、選択行動。
橋本博文 准教授 社会心理学:集団力学、集団内利他行動、心の文化差。

コース決定にあたっての心構え

「心理学コース」を専攻しようとする皆さんには、何よりもまず、心理現象に対する強い興味と関心が求められます。同時に、確実で客観的な知識を求めようとする熱意と、複雑な現象を実験・調査・観察に基づいて一歩一歩解明していくという地道な努力が求められます。また、心のはたらきは、人間のあらゆる営みと密接にかかわりあっています。その意味でも、心理学以外の分野にも関心・興味を広げ、広い視野をもつことは、心理学を学ぶ上でもおおいに役立ってくれることでしょう。
「心理学コース」では、前述したように、実験心理学を中心にしてカリキュラムが組まれていて、実証科学的な色彩が強い点に特色があります。本コースのカリキュラムをこなしていくためには、数学的思考を必要とし、実験・調査・観察(精密機械の操作を含めて)の技術習得と、統計処理や数値計算への習熟が不可欠です。さらに、大量の外国語(主として英語)の文献を短時間に読みこなすだけの語学力が要求されます。数学や英語を苦手とする人は、できるかぎり苦手意識を克服するよう、努力してください。
本学では全学共通教育科目として、「心理学への招待」をはじめ、5科目の心理学関係の科目が提供されています。「心理学への招待」では、心理学全般についての初学者向けの解説を行い、他の科目では心理学の各分野についての少し詳しい紹介を行っています。「心理学コース」を希望される皆さんは、ぜひこれらの授業を受講して、心理学とはいかなる学問かを理解してください。
これらの授業では、随時、質問紙調査や心理テストを行ったり、実験の参加者を募集したりします。積極的に参加されれば、心理学についての理解を深めるのに役立つと思います。また、人間行動学科共通の必修科目として、「人間行動学概論Ⅰ・Ⅱ」も開講されていますので、これらの科目も忘れずに受講してください。

卒業後の進出分野

卒業生の進路は、一般企業、教員、公務員など、多岐にわたっています。心理学に直接関係する職種として、国家公務員Ⅰ種には、技術系行政官として、試験区分人間科学(心理学)があります。法務省や厚生労働省に勤めることが多いようです。地方公務員(大学卒業程度)にも心理職があり、児童相談所・婦人相談所の判定員やケースワーカー、養護施設の指導員といった職種につきます。その他、家庭裁判所調査官補Ⅰ種、法務教官などがあります。また、大学院に進む人も少なくありません。なお、所定の単位を取得することによって、日本心理学会認定心理士の資格をとることができます。

メッセージ

近年、「心理学」という言葉やトピックスの面白さだけから本コースを希望してくる人の中には、授業内容が予想と違うとして他コースへ転じるケースも出ています。
世間ではいまだに、心理学を学べば(研究すれば)たちどころに人の心がわかるようになる、という類の誤解が強いようです。心のはたらきという複雑な現象は、一朝一夕に解明されるというものではありません。心のはたらきについての確実で客観的な知識体系を作りあげるために、実験・調査・観察を地道に積み重ねていくこと、それがわたしたちが行っている心理学研究にほかなりません。心理学という学問について正しく理解した上で、コースを決定されるよう希望します。質問・相談があれば、本コースの教員・大学院生・学部生のだれにでも、遠慮なく声をかけてください。