

大阪市立大学大学院文学研究科の重点研究プログラム「アジア海域世界における都市の文化力に関する学際的研究」は2008年6月に採択された。研究支援期間は平成2008年度〜2012年度。このプログラムは、文部科学省21世紀COEプログラム「都市文化創造のための人文科学的研究」(2002年〜2006年)、及び重点研究「都市文化創造のための比較史的研究」(2003年〜2007年)の研究成果を引き継ぎ、新たにアジア海域と都市の文化力をキーワードとしてグローバルな視点から、大阪を立脚点とする都市文化の歴史と再生を考察することを目指している。
本重点研究プログラムは都市の文化力を歴史的に考察するうえで、グローバル化を念頭に置いた次の3つの都市文化の歴史的段階を構想している。
第1に、都市文化の形成と変容の段階:16〜17世紀の大航海時代を中心として、アジア海域を緩やかに結ぶ朝貢秩序のもとで、倭寇や華人のネットワークの台頭にヨーロッパ勢力の進出も加わり、海域世界が流動化するなかで、アジア海域の諸都市で古代以来各地に形成され、培われてきた文化の伝統が変容した。
第2に、都市文化の成熟の段階:17〜19世紀半ばの時期、朝貢秩序が再構築される一方、日本、中国、朝鮮、東南アジアなど海域諸国の政治体制が固まる過程において、現在「伝統」とみなされている都市の文化構造が形作られ、成熟した。
第3に、グローバル化のなかでの都市文化の段階:朝貢秩序が動揺・崩壊する19世紀から現代に至る時期、グローバル化への文化的抵抗と新たな文化創造に向けた動きのなかで、都市を中心とする各地域で蓄積された文化的伝統が活用された。文化的抵抗の根源にはグローバル化がもたらしたさまざまなレベルにおける中心と周縁の格差の構造がある。さまざまなレベルにおける弱者の動向が文化的抵抗への原動力となっていることに留意したい。
この三つの歴史的段階の構図は仮説的に提示されたものである。したがって、本重点研究プロジェクトではこの歴史的構図の妥当性とそれぞれの歴史的段階の具体的内容を検証する必要がある。その検証のうえに、大阪を中心とするアジア海域の諸都市が培ってきた文化力とその長期持続性を見定め、グローバル化のなかでの都市の再生・発展に研究成果を生かすことを課題とすべきだと考えている。
(2008年6月採択の申請書より)