都市文化研究センター(UCRC)では、定例研究会「文学研究科・研究茶話会」を開催しています。第14回を下記の要領で行います。文学部・文学研究科の学生、院生、研究員、教員、また学外の方など、関心のある方ならば誰でも参加できます。UCRC研究員のみなさんの相互交流と人脈つくりの機会も兼ねておりますので、ふるってのご参加をお願いいたします。
今回は大阪大学大学院で博士号取得後、アメリカ・インディアナ大学大学院に留学中の川端美都子さんをゲストに迎え、日米双方の大学院での研究経験を踏まえながら、研究環境や制度の相違がディシプリンや若手研究者の研究キャリアにもたらす諸影響について、民族音楽学の事例を元にお話しいただきます。長期海外留学を考えている院生にも役立つ内容になろうかと存じます。

日時:5月31日(金)16:30〜18:00 終了後、懇親会を行う予定です(参加自由)
場所:文学部棟2F 情報編集室(旧サブセンター)
司会:増田聡(アジア都市文化学教員)

内容:
川端 美都子(インディアナ大学民族音楽学学科Ph.D候補/助教)
  アカデミック・ヴォケーションと大学院教育・制度:アメリカ合衆国における例を通して考える日本の民族音楽学の未来
要旨:
本発表では、発表者のアメリカ合衆国における留学経験――とりわけ、インディアナ大学大学院民族音楽学学科での4年間――をもとに、自身の研究内容についても触れながら、日本とアメリカの大学院教育・制度の違いについて以下の4点に焦点をあてて分析する:1)博士号取得までの過程とカリキュラム、2)図書館やアーカイヴなどのリソース利用に関するリサーチ環境、3)対人・対部局関係、ならびに4)アシスタントシップ、リサーチ・グラント、ジョブ・マーケットを中心とした大学院における経済的側面、のことである。
1955年、ヤップ・クンストJaap Kunstによって、「民族=音楽学ethno-musicology」の名称が考案されて以来、同学問分野の意味や定義は様々に変化してきた。とりわけ1950-60年代には、それ以前の研究・実験室における「非西洋音楽」や「エキゾチックな音楽」の「体系的比較研究」から、マントル・フッドMantl Hoodが民族音楽学を「いかなる音楽であれ、それに対する研究アプローチの1つ」(Hood 1969, 298)と定義しているように、音楽ジャンルが必ずしも学問分野を決定するものではなくなっていった。フッドは、その研究アプローチに必要不可欠であるとして「複音楽性bi-musicality」(Ibid 1960)という概念を打ち出し、カリフォルニア大学ロサンジェルス校(UCLA)において、学生たちが西洋音楽と非西洋音楽両者の訓練を受けられるように促した。それに対し、アラン・メリアムAlan P. Merriamはインディアナ大学において、音楽を社会や文化から切り離して考えるのではなく、「音楽は文化と同一のものであるmusic as culture」(Merriam ca. 1973 and 1977, 204)であるとしながら文化人類学的な路線を辿り、民族誌的研究を推奨する教育を進めた。
近年では、このアメリカ西海岸と中西部間の学派の対立は徐々に曖昧なものとなってきているが、その名残は各大学のカリキュラムに未だにみられる。通常、民族音楽学専攻は、多様化する音楽事象や世界音楽の授業のために、(歴史)音楽学や音楽理論・作曲専攻とともに、音楽学科(School of Music)の下に設置されている。現在、アメリカ合衆国において民族音楽学専攻を設置している大学・大学院は、民族音楽学学会(SEM)の公式ウェブサイトに列挙されているものだけでも約50校にのぼるが、その多くも上記の例外ではない。しかし、インディアナ大学大学院の民族音楽学学科は、1948年には文化人類学学科の中で誕生し、1980年以降は民俗学とともに、様々な地域研究学科とも提携を結んで学際的な性格を帯びながら、現在も学科として独立した位置を保っている。同大学における民族音楽学学科の自立性がもつ意味とそれが孕む矛盾についても、民族音楽学の学問史や大学院教育・制度と関連付けながら考察した後、将来の日本における民族音楽学の在り方、また大学・大学院教育や制度について考えたい。

References:
Hood, Mantle. 1960. “The Challenge of Bi-Musicality.” Ethnomusicology 4/2: 55-59.
.1969. “Ethnomusicology.” Harvard Dictionary of Music, 2nd ed. Ed. Will Apel, 298-300.
Cambridge: Harvard University Press.
Merriam, Alan P. ca.1973. “Ethnomusicology is the Study of Music as Culture.” Unpublished thoughts.
. 1977. “Definitions of ‘Comparative Musicology’ and ‘Ethnomusicology’: An Historical-
Theoretical Perspective.” Ethnomusicology 21/2 (May): 189-204.

※研究茶話会は平成25年度以降、不定期に開催いたします。発表希望などにつきましては担当の増田聡(アジア都市文化学教員、masuda◎lit.osaka-cu.ac.jp)までお問い合わせください。(メールをお送り頂く際には◎を@に変えて下さい。)